扉を閉めて外へ出る。何一つ解決はして居ないのだけども。

 

「とにかく、一刻も早く・・・・・ってあっ・・・・」

 

歩きかけていた一行が足を止める。

 

「なんだよ、杏子」

 

「だって私たちは勿論知ってる・・・・・緑久保にも伝えた。でももし、他の

 

菜桜を知ってる生徒が向こうの世界の菜桜を見かけたら・・・・?」

 

「そ・・・か・・・・声を掛けられて逃げ出しかねないし、そっけない態度を

 

取ればおかしいって思われるだろうし・・・・」

 

だけど、どう対処していいかなんてわからない。

 

「もう、そうなったらそうなるまでよ。一日くらい私、おかしくなったって

 

言っておけば」

 

極力軽く言ったつもりだけども、私の言葉に一同が黙ってしまう。

 

口火を切ったのはやはり、尚人兄さんだった。

 

「ま、自分の力でどうしようもないことを悩んでも解決しようがないよ。ここ

 

は、僕たちが美桜を見つけられることをまず祈ってもし、クラスメートが

 

見つけておかしな言動だったら・・・・そこは菜桜ちゃんの言う通り、

 

一日おかしくなってしまったことにしよう」

 

おかしくなってしまった・・・・ちょっと不本意だが仕方ない。

 

ま、それしかないよね。

 

「このあと・・・・どうする?」

 

スマホを取り出してみると時間は9時を回っていた。

 

「探したいけども明日も学校だよな。明日は午前中授業って緑久保が言って

 

たっけか。いや、確か・・・・」

 

孝宏がスマホをタップして時間割を出す。

 

「ああ、明日は4時間全部LHRだ。緑久保にいわせりゃHRも授業のうちだ

 

って言いそうだけども、実質教科書を使った授業は来週月曜からで、明日は

 

1、2時間目が体育祭委員選出して、各競技に出場するメンバー選出するって

 

んだろ。3、4時間目は各競技ごとにメンバーが集まって相談ってま、

 

寝不足で寝ちゃうような授業はないけども・・・・・」

 

「明日の午後また、集まった方がいいわね。一応尚人さんが居てもそろそろ

 

高校生が出歩いていい時間過ぎちゃうし」

 

この辺は高校生の門限は10時だった。

 

勿論大学生の尚人が居るのでその辺は心配がないけども、余計な面倒は避けた

 

方がいい。

 

残ったおにぎりは・・・・と言っても意外に数は残らなかった。どれだけ

 

食べるんだ、男子。杏子の弟妹へのお土産にする事にし、最後に一周、と

 

いうことで尚人の車で緑久保の駅の周辺や、隣の駅の周りを回った。

 

淡い期待を抱いたものの、そう簡単に見つかるわけはない。