「・・・つまり、今度は何らかの理由で昨年の次元の浅井と結城がこっちの世界へ
来ちゃったって言うのか・・・・で、俺が見かけたのが・・・・」
「多分、そんなに似てたんだったら、向こうの世界の菜桜だと思うの。先生の
教え子の菜桜は足怪我しててそれにずっと私たちと一緒だったんだもの」
う~む。緑久保は腕を組んだ。
「ま、世界にゃ、信じられないこともたくさんあるしなあ。教育者だからそんな
ことあるもんか、なんて言わんよ。だけども、ホントにそっくりだなあ。ち
ょっとした双子より似てるような気がするぞ。・・・ってことは、向こうの
世界には俺に似たヤツも居るってことか?」
緑久保はちょっと興味津々という目で真宏に聞いた。
真宏はちょっと口ごもると
「ええ、居ます。俺たちの担任です。ただ・・・・『オカマの緑久保』って
あだ名がついてるんです」
また居間はハチの巣をつついたような笑いが響いた。
一人、緑久保だけが複雑な顔をしていた。
「よし。俺も微力ながら向こうの結城を見つける手伝いをしよう。と言っても
この近辺を探すことくらいしかできんけどもな」
「それでもいいです、ともかく早く美桜・・・いや、向こうの世界の菜桜を
見つけてあげないと。返すのはあとになったとしても、早く向こうの孝宏と
会わせてあげないと可哀想」
「わかった、じゃあ妻にも言っておこう」
緑久保はキッチンに居た楓を呼ぶと菜桜のことを話した。
「わかったわ。もし私がこのお嬢さんに似た子を平日見かけたら、ここに連れて
くるわ」
楓はにっこりとほほ笑んだ。