居間では楓が入れてきた紅茶を置いているところだった。

 

「さあ、どうぞ」

 

そう言うと、一緒にクッキーの皿もだし、居間を出て行った。

 

「ホント、綺麗な奥さん。子供たちは奥さんに似たんだね」

 

「うるさいわ」

 

緑久保はそう言うと、

 

「まあな、実家に行くとよく『美女と野獣』って言われたもんだ、で・・・・」

 

紅茶を一口飲むと

 

「話を戻すぞ。浅井は双子だったのか?身上書で見たことないが・・・・」

 

と切り出した。

 

菜桜たちは顔を見合わせると、やはりここは年長者と自覚したのか、

 

「実は・・・」

 

と尚人が話しだした。

 

とは言っても尚人だって話のプロではないし、なんたって突拍子もない話だ。

 

去年の孝宏が居なくなった時から、時に話が行きつ戻りつ、それでもここに居る

 

誰よりも尚人が適任だっただろう。

 

尚人の話に初めは怪訝そうな顔しか見せて居なかった緑久保も

 

「・・・・ってことは・・・・ここに居るのが・・・・・その・・・・他の

 

次元から来たって言う・・・・浅井なのか」

 

「そうです」

 

緑久保は完全に理解した感じではなかったが、それでもそこまでは理解した

 

ようだった。

 

何しろ、緑久保は昨年のあの事件を知っているのだ。

 

「そういや、あの時急に浅井と浅井の兄と結城と新川が俺の机の上に現れた

 

んだよな。不思議なことがあるもんだと思ったけれども、そう言われりゃ

 

納得も出来るかもしれない・・・・」

 

緑久保はぶつぶつ言うと

 

「それに先生、ほらあの時、全校生徒お休みにして先生たち職員は出て来て、

 

急に現れたプレハブ小屋を解体したでしょう?あれは僕たちがこっちに帰る時に

 

一緒に来ちゃったんですよ」

 

尚人の言葉に緑久保は宙を仰ぎ

 

「そうだった!!そんなことがあったな。合宿用の毛布とか布団とか入れてある

 

プレハブ小屋がいきなり増えたんだ。正面玄関にな。移動した訳ではない、

 

増えたんだよな」

 

緑久保はなおもぶつぶつ言うと・・・・

 

「わかった・・・・信じよう。ちょっと俺のキャリアと大人としての意識が

 

邪魔したが、この際一切捨てる、信じよう。なんたって、あのプレハブは説明が

 

つかんし・・・・あの時急におまえたちが現れたことも、なんでだ、と言ったら

 

説明つかないし、何よりこれだけ似ている浅井が二人いるんだもんな」

 

ポンと膝を叩いた。

 

「・・・で?」

 

「・・・で・・・・いや、その話をしようとしたのは・・・・」

 

尚人は今度は始業式の話から始めた。