「・・・・って、あれ・・・6本?」

 

「そうよ、今、バッグに詰めるから、これ持って、菜桜ちゃんも尚人のところに

 

行きなさい。今タクシー呼ぶから・・・・」

 

「おばさん・・・」

 

ホントは一緒に行きたかった・・・・そんな気持ち、わかってくれてたんだ。

 

足を怪我してるし足手まといにはなるだろうけども・・・・。

 

お母さんがボストンバッグにおにぎりと水筒を詰めてると、ピンポン、玄関で

 

チャイムが鳴った。

 

「誰かしら・・・・」

 

「あ、私が行くわ」

 

ママが玄関に出て行く。

 

「まあ、杏子ちゃん」

 

ママの声がした。え・・・杏子?

 

そう思う間もなく、杏子がダイニングに入ってきた。

 

「尚人さんが、やっぱり菜桜も連れて行こうって・・・・路駐待機組が二人だって

 

いいし、もし菜桜が来れば私も捜索に加わるし・・・って。下にタクシー待たせて

 

ある。行こう、菜桜」

 

・・・・・杏子。尚人兄さん・・・・。

 

「そうと決まれば早く。杏子ちゃん、ちょうどこっちも菜桜を行かせようと

 

してたの、連れてってちょうだい、ここにおにぎりと麦茶入ってるから」

 

杏子がずっしりと重い、ボストンバッグを受け取る。

 

「わかりました、行こう、菜桜」

 

私は立ち上がった。充電は、半分近くある。うん、行こう。

 

壁伝いに玄関まで歩く。エレベーターで下まで降りると親切な運転手さんで、

 

降りて手を貸してくれた。

 

「行ってきます!」

 

私は見送りに来たママと孝宏のお母さんに、手を振った。

 

「菜桜、美桜を連れてきていいからね」

 

ママはそう言った。

 

「ありがとう、ママ」

 

タクシーは、尚人さん待つ際橋駅へ向かった。

 

杏子が携帯で孝宏に連絡を入れる。その連絡で、尚人兄さんはどこかで車を止めて

 

私たちを待つことになっていた。

 

「手掛かりは・・・・」

 

杏子は頭を振った。

 

「今のところは何も。だから余計、菜桜の写真を持って行くか、実際に菜桜を

 

連れてって『この子に似た子、見かけなかったか』って聞いた方がわかりやすい

 

んじゃないかって・・・・それは孝宏の考えだけども」

 

そっか、確かに、こういう雰囲気の子、って言うより、私を見せた方がわかり

 

やすいだろう。

 

杏子の電話を受けて、尚人兄さんの車は駅前で待つことになっていた。