「美桜、見つかるといいなあ」

 

3杯目のお茶を飲みながら、することもなく携帯を持て遊び菜桜は呟いた。

 

あれから既に1週間。一人で心細いだろうし、何よりおなかだって空いてるはず。

 

ああ、見つかった時の為に何か持たせてあげればよかったかも・・・・・。

 

そう思ってるとキッチンの方からぴっぴっと音がした。

 

「炊けたみたいね」

 

孝宏のお母さんが席を立って行く。

 

「私も手伝うわ、誠子さん」

 

ママも立ち上がった。何をするんだろう。

 

「菜桜も手伝う?」

 

ママがそう言うと

 

「そうね」

 

といって、孝宏のお母さんが両手にキッチンミットをはめて、大きな炊飯ジャーの

 

内がまを持ってダイニングにやってきた。

 

「ファミレスで食べたとはいえ、探し回ればおなかも空くでしょう。もしかしたら

 

美桜ちゃんも見つかるかもしれないし。

 

おにぎり作って置こうと思って・・・・・これなら余っても冷凍できるしね」

 

成程。私も早速おにぎり作成に加わる。

 

料理はイマイチでもおにぎりくらいなら・・・三角に握ればいいんでしょ。

 

ラップに熱々のご飯を載せて

 

「あっつ・・・・」

 

そう言いながら、握って・・・・・握って

 

「あ・・・れ・・?」

 

ママたちはびっくりするほどのスピードでどんどんおにぎりを作って行くのに、

 

私のはどう言うわけか三角にならない。

 

「・・・仕方ないわね、じゃあ、菜桜は海苔でも巻いてなさい」

 

というわけで私は海苔巻き専門になった。

 

「ママの手伝いしなさいって言ったでしょ、これじゃ浅井家に貰って貰えない

 

わよ」

 

・・・・ってなんでそこへ行く?

 

でも、握る方、2人、海苔巻き私の分担は意外に功を奏して、あっという間に

 

1升炊きのジャーのご飯は20個近いおにぎりの山になった。

 

孝宏のお母さんがプラスチックの容器を用意してくれてそこに詰めて行く。

 

「何せ、尚人の方は最近落ち着いてきたけれど、ちょっと前まで食べ盛りの

 

男二人でしょう?も、ホント1升炊いても足りないときもあったのよ。でも

 

おかげで役に立ったわね」

 

見事に空になった内がまを持ってキッチンに消えたお母さんは、代わりに麦茶の

 

ペットボトルを持って現れた。

 

「うちに沸かしてある麦茶じゃ到底足りないと思うので、ストックしてあったのを

 

出したわ。これを水筒に入れればいいわね」

 

お母さんはまたもキッチンに行くとあちこちの棚を開けて、水筒をかき集めて

 

きた。大きなのから小さいのまである。

 

小さいのは足りなくなったら分けて貰えばいいだろう。