孝宏の家に着くと、孝宏の母と菜桜の母が同時に飛び出してきた。

 

「で、緑久保にはなんて言ったの?」

 

菜桜が母をせかすと

 

「とっさでなんて言っていいのかわからなかったから、菜桜は家に居ますって

 

言っちゃったのよねえ。まあ、本来なら怪我してまともに歩けなかったんだし、

 

外でうろうろしてる方がオカシイでしょう?」

 

・・・まあ、そりゃそうだ。

 

それに菜桜が緑久保に会って逃げ出すと言うのも、時間的に補導されるような

 

時間ではないのでおかしな話だし・・・・・

 

「ともかく、緑久保が会ったって言う、駅まで行ってみない?」

 

「そうだな、時間的にまだ・・・居るかもしれない」

 

「じゃあ、その子がもしかしたら・・・・向こうの世界の菜桜ちゃん?」

 

孝宏の母が言う。

 

「菜桜が一卵性の双子じゃなければね」

 

孝宏はそう言うと、

 

「すぐ出よう、兄さん、真宏!」

 

と玄関を飛び出した。

 

「・・・真宏?」

 

孝宏の母が変な顔をしたが、無視して飛び出す。

 

「ああ」

 

「私は、ここに居るわ」

 

菜桜は言った。

 

「杏子は路駐した時の為に居て。私は動けないし役に立たないと思うし・・・・」

 

確かに路駐要員が居て、あとは走って探せる人間が居ればいい。

 

「わかった・・・・」

 

尚人は菜桜の肩に手を置くと、

 

「菜桜ちゃんは緑久保先生に電話して、どのあたりで向こうの菜桜を見たのか、

 

聞いて孝宏にでも伝えてくれる?一分でも惜しいから、僕たちは行こう」

 

とちょっと力を込めた。

 

「うん、頼むぞ、菜桜」

 

「行って来るね、菜桜」

 

「・・・・よろしく・・・・菜桜」

 

真宏までが菜桜と呼んで3人は、走って降りて行った。

 

「菜桜・・・・」

 

孝宏の母が靴を脱がせてくれ支えてくれる。菜桜は壁伝いに歩くとダイニング

 

テーブルの椅子に座った。

 

「今、お茶を入れるわね」

 

そう言ってキッチンに立つ。

 

「そうだ・・・・」

 

菜桜はすぐにポシェットから携帯を出すと緑久保に掛けた。

 

今はまだ知られちゃいけない。菜桜は深呼吸をすると、

 

「もしもし!」とことのほか明るい声で話し始めた。