かくして30分後、ファミレスにはいった4人は思い思いの食事を食べ始めていた。

 

「あ、菜桜、そのグラタンおいしそう、一口ちょうだい」

 

「じゃ、そのパスタも一口」

 

賑やかな菜桜と杏子を見て真宏は

 

「いいな、こう言うのって。悪いな、俺の為に・・・」

 

と呟いた。

 

真宏も、菜桜と杏子が自分の為にわざといつもよりはしゃいでくれることを

 

知っているのだ。

 

「だからそれは言いっこなしだって・・・・あ!真宏のポテトも~らいっ」

 

菜桜はフォークを真宏の皿の付け合わせのポテトに突きさした。

 

「あっ、てめ・・・じゃ・・・・・」

 

真宏は迷って・・・・・孝宏の切り分けたハンバーグの肉をフォークで刺した。

 

「おいっ、ポテト取ったのは菜桜だろうが!仕返しだっ」

 

孝宏がエビフライにフォークを突きさすと

 

「あっ、それは俺が一番好きで取ってたやつ!」

 

俄然にぎやかになったテーブルを、尚人はニコニコと見つめ、

 

「ほら、静かにしろよ、おまえたち。子供じゃないんだから」

 

といさめた。

 

孝宏がお互いに顔を合わせて噴きだす。

 

「いいぞ、悲惨になったらおしまいだ。おなかが膨れたら幸せだし、いい

 

アイディアも浮かぶだろう。真宏、きっともう一人は見つかるから」

 

尚人がそう言って

 

「もし、全員揃ったら・・・・・向こうの菜桜はどう呼ぼうか」

 

と真剣に悩みだした。

 

「こんなに似てる双子が二組って・・・・凄いよねえ」

 

杏子はオレンジジュースを飲みながら

 

「向こうの世界の尚人さんと私まで、こっちに来てなくてよかったかも」

 

と笑った。

 

確かにここまで良く似た双子が4組は、さすがにギネス認定とか言われそうだ。

 

「うちじゃあさ・・・・」

 

菜桜が少し冷めてきたグラタンを口に入れながら言った。

 

「・・・ん?」

 

「食事の時はお茶。ジュースは食事の時に飲んじゃいけません、って言われてさ、

 

すっごく飲みたかったんだけども、こうしてご飯と一緒にジュース飲んでみると

 

実際あんまし美味しくない・・・」

 

菜桜はコップを置くと、

 

「やっぱり親の言うことは、年の功と思って聞いておくべきだよねえ」

 

と、菜桜の母が聞いたら目を剥きそうなことを言った。

 

「確かにな、孝宏も・・・・おっと真宏も小さい頃はご飯の時にお茶は味が

 

しないって良く言ってたっけ」

 

尚人はコップに注いだウーロン茶を飲みながら

 

「でもって、ご飯にコーヒーも合わないんだよなあ。コーヒーはやっぱり

 

パンだな。日本人はお茶だよ」

 

そう言ったが

 

「兄さんの、ウーロン茶じゃん」

 

と真宏に突っ込まれた。

 

「あはは、確かに」

 

杏子が大笑いする。

 

菜桜はちょっとだけ、このままもう一人の孝宏もこの世界にずっと居られたら

 

いいのに・・・と思ってしまった。