そして

 

「はい!」

 

緑久保が驚いたように声のした方を見て

 

「おう、結城か、どうした?」

 

とほっとしたように言った。

 

何せお通夜のようなクラスになっていたのだ。

 

「私、やります、クラス委員」

 

途端にお通夜会場から、乗降客の多い駅のホームのような騒がしさになる。

 

「はい、はい!静かに!」

 

緑久保が大きな声を張り上げる。

 

「・・・やってくれるのか?結城」

 

「はい」

 

菜桜はもう一度頷いた。

 

だってここで決まらないと、いつまで経ってもこのままじゃん・・・・

 

どんどん違う次元の菜桜を探す時間が遅くなる。

 

来週からは授業も始まるのだ。一日だって無駄に過ごせやしない。

 

どうせ、この後の第一回実行委員会は顔合わせだけだ。顔合わせして、次の

 

実行委員会までにクラスから体育祭委員を選んでくれ・・・・って昨年は

 

それだけだった。

 

だったら30分くらいで終わる。まあ、顔合わせで1年生から挨拶があっても

 

1時間もあれば十分だ。

 

ここでお通夜のままダンマリ決めて、11時間際に慌てて仕方なく誰か選出

 

されるか・・・・あるいは遅刻して実行委員会に出る羽目になれば、もっと

 

終わりは遅くなる。

 

だったら。 そう言う意味で『じゃあ一緒にやろう』って孝宏には言ったつもり

 

だったんだけど、通じたかな。

 

杏子はほとんど対角線上でアイコンタクトすらできないから、孝宏に合図した

 

のだ。

 

だけどその心配は無駄だった。

 

「じゃあ、結城がやるなら・・・男子は浅井だな」

 

1年から同じクラスだった響君が叫ぶ。そうすれば、自然と拍手が起こり

 

「おお、いいか?浅井」

 

緑久保も乗っかり、孝宏も「あ、はい」ってんで

 

「じゃあ、この一年のクラス委員は浅井と結城に決まりだ。いいか、おまえら

 

二人に感謝しろよ、決まらないと大変だったんだからな。

 

あと、今学期末には文化祭の実行委員も決めるんだが、今みたいにすんなり

 

決まってくれること、俺は信じてるぜ」

 

緑久保はニヤッと笑うと

 

「じゃ、悪いが、この後二人は実行委員会の顔合わせに出てくれ。では、

 

他の委員決めだ。潔く名乗りをあげて欲しい」

 

緑久保はちょっと冗談めかして言うと、黒板に『クラス委員 浅井、結城』

 

と書き、そのあとに『美化、保健、教科、清掃』と書いた。

 

「あと、決めるのはこの4つだ。立候補制でもいい、他薦でもいい、誰かいたら

 

名乗りをあげてくれ。いいか、クラス委員は決まった。

 

つまり、浅井たちは11時になれば実行委員会に出る。実行委員さえ決まってれば

 

あとは無限に時間がある者たちが残ってるわけだから、明日まででも考えて

 

居られるぞ」

 

途端にまたクラス中が蜂の巣をつついたような大騒ぎになった。