「だって・・・・」

 

「一つヒントを言いましょうか」祥太郎はちょっと咳払いをすると

 

「多分・・・・美星子と彰彦君は・・・・お互いの考えてること分かってると


思いますよ、口には出してないけど・・・」

 

「え?」

 

「まあ、彼は・・・・一族に生まれた人間ではないからお互いに読み合うことが


できるのは美星子だけでしょうけれどね」

 

読めてるの?彰彦君、読めてるの??なんで?なんで彰彦君は読めるの??

 

「・・・もう。分かってて分からないふりをしてるんですか?いや・・・そんな


小細工はできない人ですよね、優希子さんは。現に、頭の中、今


クエスチョンマークだらけですもんね」

 

読んでるな・・・・悔しいけど・・・・悔しいけど・・・・

 

「・・・・分かりません」

 

祥太郎はちょっと笑うと私を引き寄せてそっと囁いた。

 

え・・・・・??!

 

「えっ・・・夫婦になると分かるんですか?結婚すれば分かるってこと??」

 

意外に大きな声を出し、祥太郎さんが慌てる。


だけど・・・誰も聞いてやしないのに。・・・ん?夫婦になる・・・・?

 

・・・・・もしかして。

 

「・・・そう、そのもしかして・・です」

 

そっかあ・・・・・・・婚姻届だけでなく実質上夫婦になる・・・・きゃあ・・・・と


・・・・あれ?

 

「・・じゃあ、祥太郎さんと美星子は・・・・?」

 

ま・・さかだよね、きょうだいだよね・・・・。



途端に祥太郎が真っ赤になって慌てた。

 

「な!何を言ってるんです!さっき言ったでしょう?僕たちは同じ


一族で生まれたから!!」

 

・・・・・・・・・あ。なるほど、そういうことか。

 

「・・・なるほど、そういうことか、じゃありませんよ、全く」

 

そりゃ・・・そうよね、考えたくもないわ、兄弟で・・・・。

 

「だから、考えないでくださいって!」

 

祥太郎は手を振り回し

 

「まったく・・・優希子さんはとんでもないこと言いますね」

 

暑くもないのに、汗をかいてる。

 

そっか、祥太郎さんと美星子は・・・・。

 

「夫婦なんだから当然でしょう」

 

そうですね。・・・そ、か。だからあのホテルへ美星子が来る時、説明して


祥太郎さん赤くなってたんだ。

 

「私・・・・祥太郎さんのお部屋に越そうかな」

 

ぼそっと言う。

 

「来ますか?」

 

「・・・ん・・・でもどうしようかな」

 

「どっちでもかまいませんよ、僕は」

 

あら・・・強気じゃん。思わずそう思うと

 

「だって・・・・もう優希子さんの気持ちは変わらないと思って信じてます


からね、違う場所に住んでいても他の人のところに気持ちはいかないでしょう?」

 

・・・そうね。そうですね・・・・。

 

「それが分かっていればどちらでもいいんです。優希子さんが来てくれると


言えば喜んで歓迎しますし・・・まだ・・というなら待ちますよ、3LDKの


マンションで、一人寂しく・・・・・」

 

「えっ?3LDK?」

 

「そうですよ、いずれのことを考えたら一部屋ってわけにはいかない


でしょう・・・そしたらその方が効率いいと思いません?それに・・・・


僕は子供も欲しいですしね。そしたらやはり3部屋くらいなくちゃ・・・・・」

 

祥太郎は何を今さら?と言わんばかりに肩をすくめた。

 

あはは。完敗だ、やっぱり祥太郎さんの方が一枚上手ね。

 

「今さら何ですか?」

 

ああ、やっぱり悔しい。こうなったら早く祥太郎さんの気持ちが読めるように


なりたいわ。・・・そう思ってそれから赤くなる。

 

「・・・・ええ。待ってますよ、まあ後10年は待てませんけどね・・・


もう少しなら・・・・」

 

「分かりました!」

 

「はい?」

 

「私、近いうち祥太郎さんのマンションに越します」

 

「え?」

 

うん、越そう、今さらだ、祥太郎さんのそばへ行こう。一緒に居たい。


ちょっと驚いたように私を見る祥太郎さんの腕に自分の腕を絡めてよりそう。

 

「愛してますよ」

 

祥太郎さんの唇がそっと私の唇に触れ、そして二つの流れ星がすうっと


夜空を走った。

 

 

 

                                                    FIN