「あの・・・森崎・・・大和の母です」

 

女性は入ってくるなり、まるで頭が床に着くのではないかと思うくらいに

 

深々と頭を下げた。

 

「大和を・・・助けていただいて・・・ありがとうございました」

 

・・・どうしたら、いいの?困惑する璃瑠に代わって秋本が話しをしてくれる。

 

「あなたが・・・お嬢さんですか。大和は・・・お父様に助けていただき

 

ました。おかげでこうして今結婚もして子供も・・・」

 

また森崎が深々と頭を下げる。

 

「主人もきっと来たがったと思うのですが・・・あいにく今日は仕事

 

でして。本当に・・・あの時お礼をきちんと言えなくてずっと心残りでした」

 

「森崎さん・・」

 

福山が声をかける。

 

「このお嬢さんは、今光輝君を抱きしめて、お父さんが生きててくれて

 

よかったね・・・と言ってくださったんですよ」

 

それを聞いて森崎の目に涙が浮かぶ。

 

「ありがとうございます。・・・お父様に助けていただいて・・・。

 

大和には常々、助けられた命、大事にしなければ・・と言って育てて来ました。

 

その思いは孫の光輝にも伝わっていると思っています。大和もお礼を言いたいと

 

いつも言ってまして・・・。今日はその願いが叶って・・・本当に・・

 

ありがとうございました」

 

母親と一緒に大和も頭を下げた。

 

「・・・いいんです。息子さんが助かって・・・よかった。おと・・・父は、

 

きっと喜んでいます。だから・・もう気になさらないでください」

 

それからもう一度大和の方を向くと

 

「よかったです。助かって。光輝君を元気で大きく育ててあげてください。

 

それを私の父も望んでいると思います」

 

そう言ってほほ笑んだ。

 

将太、それから森崎親子と光輝が早々に会場を出て行った。

 

秋本も、璃瑠の様子を見て退出することにした。ここには3日間います。

 

帰る前にもう一度作品展を見に来ます、そう言って璃瑠を立たせた。

 

本多と、福山、そして受付に居た上条も深々と頭を下げて二人を見送ってくれた。

 

道を曲がって、会場が見えなくなると秋本はすぐに璃瑠を気遣った。