赤ずきん5
「…ん…」
寝返りをうった拍子に、肩から毛布がずり落ちる。
露になった白い肌に口付けてから、白狼は毛布を直してやった。
甘い時間を過ごした証の、乱れた髪を優しくすいて整える。
ベッドの下、清潔なリノリウムの床に脱ぎ捨てられた衣服を片付けている途中、ぽつんと床に転がったままの赤い帽子を見つけて、彼はふっと笑みを漏らした。
「赤ずきんですか…」
よく知られているのはグリム童話のほうだろうが、ペロー版のほうが印象に残っている。
ペロー版には、猟師は登場しない。
赤ずきんは狼に食べられたまま物語は終わるのだ。
「物事はそうそう都合よくいかないものですよ」
ひっそりと笑みながら呟き、毛布でくるむようにした少女を抱き上げると、白狼は真っ白な病室を後にした。
「愛していますよ」
窓際で揺れている紅い花だけを残して。
END
寝返りをうった拍子に、肩から毛布がずり落ちる。
露になった白い肌に口付けてから、白狼は毛布を直してやった。
甘い時間を過ごした証の、乱れた髪を優しくすいて整える。
ベッドの下、清潔なリノリウムの床に脱ぎ捨てられた衣服を片付けている途中、ぽつんと床に転がったままの赤い帽子を見つけて、彼はふっと笑みを漏らした。
「赤ずきんですか…」
よく知られているのはグリム童話のほうだろうが、ペロー版のほうが印象に残っている。
ペロー版には、猟師は登場しない。
赤ずきんは狼に食べられたまま物語は終わるのだ。
「物事はそうそう都合よくいかないものですよ」
ひっそりと笑みながら呟き、毛布でくるむようにした少女を抱き上げると、白狼は真っ白な病室を後にした。
「愛していますよ」
窓際で揺れている紅い花だけを残して。
END