チュウゴクチャバネハゴロモ | アリ塚

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未だ正体の掴めぬ謎ナス Solanum sp.。葉や茎の色はナス S. melongena にそっくりですが、来る虫はどうでしょう。

 

この写真は以前のもので、現在では落ちずに残っている花は1輪のみ。結実ならずか。

 

ニジュウヤホシテントウ Henosepilachna vigintioctopunctata。ナス科を食害する代表的な植食性テントウムシ

 

花にも来る。他のテントウムシ同様、斑紋には多様性がある。

 

ヤブカの一種。吸汁ではなく、休憩しているだけのようだ。

 

ハゴロモの一種(左)とホオズキカメムシ Acanthocoris sordidus(右)。

 

ホオズキカメムシはその名の通りナス科を吸汁するカメムシなので、謎ナスの害虫であると言えるでしょう。

 

ホオズキカメムシ全体像。写真は以前載せたもの。

 

腹部背面が鮮やかな朱色。ニオイは「リンゴ酢臭リンゴビール」。

 

 

一方、このハゴロモは昨年から我が家で見られるようになったものです。一見アミガサハゴロモに似ていますが、色や模様が異なります。

 

また、本種はアミガサハゴロモが好むカシ類ではなく、ブラッドオレンジによく止まっています。幼虫らしきものはブドウ、ウメ、ハナズオウなどでも見られました。

 

本種の幼虫らしきもの(後ろから)。腹部先端から分泌した蝋状物質を身に纏っている。

 

どうもおかしいと調べてみると、近年日本に定着しつつある外来ハゴロモPochazia shantungensis によく似ています。原産地は中国のようですが、その食草は広範に亘り、様々な農作物の害虫として韓国やトルコに移入しています。

 

謎ナスも食草なのか、ただ止まっているだけなのかは判りませんが、EPPO(ヨーロッパ地中海地域植物防疫機関)によると同科のトウガラシが食草とされています。謎ナスが吸汁対象になってもおかしくはないでしょう。

 

ステルス機のような形が格好良い成虫。ステルス性はあまり無い。

 

 

ハゴロモヨコバイの類は私の好きな昆虫(大体何でも好きだけど)ですが、本種の蔓延は将来、甚大な農業被害をもたらすかも知れません。新たな外来種に対して我々ができること、それは和名の提案ですね。

 

 

種小名shantungensisは「山東省(産)の」という意味です。そこから考えられるのは『シャントンハゴロモ』。広東住血線虫みたいな。

 

或いは、主要な棲息地は浙江省らしいので、山東省とまとめて『チュウゴクハゴロモ』というのもアリでしょう。チュウゴクモクズガニみたいな。

 

既に外来農業害虫として猛威を振るっている韓国の論文では「갈색날개매미충(カルセクナルグェ・メミチュン?)」、即ち「brown winged cicada(茶色い翅のハゴロモ)」として知られているようです。それに倣った『チャバネハゴロモ』というのも悪い語感ではありませんし、チャバネゴキブリチャバネアオカメムシの例もあります。

 

 

数年後に『シャントンハゴロモ』『チュウゴクハゴロモ』『チャバネハゴロモ』が流行語になったら、私が発案者です。キャラグッズも出来ちゃうかもな。意見や提案、既存の呼称など、随時募集しております。

 

 

とはいえ、そもそもP. shantungensis だと確定したわけではないので、論文等を頼りにしっかりとした同定を試みたいです。というのも、とある資料には「幼虫は木本より草本を好む(意訳)」とあるのですが、うちでは樹木に付いたものを多く見かけるのです。