ロシアが最近,貿易に関して矢継ぎ早に輸出禁止政策を打ち出しています。
ロシア農業省は先月,ロシア領海内で捕られたカニを生きたまま輸出することを禁止すると発表しました。資源保護や密輸対策が目的とのことです。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070531-00000202-jij-int
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070601-00000067-jij-in
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070601-00000067-jij-in
ロシア側のこの措置が日本の水産物輸入業者に与える影響が懸念され,今後日本国内でカニの価格の上昇は避けられないでしょう。
今から27年前,かつてアメリカが,J.カーター大統領の時代,当時のソ連がアフガニスタンに軍事介入し傀儡政権を作ったことに抗議し,制裁措置としてソ連向けの穀物輸出を禁止するという政策を実施しましたが,これにはソ連だけでなく,アメリカ自身も苦しめる結果になりました。
対ソ禁輸措置によって,アメリカ国内の農家や農産物の輸出業者が,最大の市場を閉鎖されただけでなく,売り込み先を失った大量の農産物が国内にだぼつき,農産物価格の暴落を起こすという事態を招いたことにより,多大なる損害を被りました。このため彼等は,アメリカ議会や政府にロビイング活動を盛んに行うようになり,アメリカ政府もついに,R・レーガン大統領政権になって間もなく,この対ソ禁輸措置を解除しました。
このような例を見てくると,“対外禁輸措置”というのは,発動する側にもリスキーなために,慎重に決定される場合が多いのですが,ロシアの場合は,先にも書きましたように,禁輸措置をして自国の利益が損なわれることがないのか考えているのかと思わされるぐらい,このところ立て続けに禁輸を打ち出しています。
“立て続け”といいますのは,このカに禁輸措置の他に,ロシアは北朝鮮向けの武器や贅沢品の輸出も禁止する旨の発表も先月行っているからです。これについては,昨年の北朝鮮の核実験を非難する国連の安保理決議に署名したロシアの具体的措置と見る向きが強いようです。
しかし,これだけ禁輸を同時に行っても,本当に自国の利益に何か影響はないのでしょうか?これは私の推測の域を出るものではありませんが,答えはおそらく「影響はほとんど無い」というものでしょう。
なぜかと言いますと,ロシアの場合は輸出企業の大半は,半ば“国営”といってもいいぐらい,政府がそれらの株を大量に保有するなど,事実上政府の支配下におかれている状態ですので,企業だけが単独で採算上のリスクを負うことがないからです(最近の典型的な例が,外資系の企業までロシア政府の影響の強い企業<ガスプロム>の支配下に収めてしまう「サハリン2」です)。
また,ロシアは現在価格が高止まりしている石油の輸出が好調ですので,相次いで対外禁輸措置を採ってもたいして影響はないと踏んでいるのでしょう。
このように見てくると,ロシアでは「社会主義」は主観的には否定され,体制が崩壊して資本主義になったのですが,基幹産業の経営にに国家・政府が深く関与しているという事実と,それによって企業のリスクを対外政策など高度な政治的影響から保護しているということを考えてみる時,ロシアには今尚,客観的には「社会主義」的な制度が残り,それがある意味功を奏していると言えるかもしれません。