すると,窓口の女性が,「何のためにこんなにたくさんドルを両替するんですか?」と(英語で)訊ねてきた。
僕はこの意外な質問に,しばらく返す言葉がなかった。両替するのに,相手の金額を気にする窓口スタッフなど初めてだ!僕は少し間をおいてから,
「ブカレストまでの列車のチケットと,アテネまでのバスのチケットを買うためです。」と(英語で)答えた。すると向こうは,
「ブカレストまでなら5ドルですよ。」
と言った。「えっ!まさか?そんなことが考えられるか!!?」
僕には彼女の言った言葉がにわかには信じ難かった。

 僕の持っている「地球の歩き方-東欧-1987年版」には,ブルガリアの通貨レフ(Lev,複数形はレバ,Leva),の対円あたりの交換レートは,1レフ≒130円とされている。ところが,今のブルガリアでは,外国為替レートがとんでもないような無秩序状態になっているのだ。どういうことかと言うと,
ブルガリアのレフの価値は大幅に下落しているのに,国内では物価が据え置かれているために(まだ社会主義経済が生きている),ドルや円などのハードカレンシーに換算すると,物価が信じられないほど安くなっているのである。

 そういうわけで,ブカレストまで5ドルといわれたとき,僕は驚かざるを得なかったのだ。従って,いまどき50ドルも両替したがる奴は不思議がられるというわけである。
(7月15日<その4>に続く)