「したたかなロシア人」 | ムル☆まり同盟

「したたかなロシア人」


russian

堀江 新二, 堀江 陽子
したたかなロシア人―ペレストロイカの周辺

 本当に久しぶりにロシア関係の本を読む。


 ロシア人の友人が昨秋帰国して以来、今まで「日本ってこうなのよ」と私から日本のことを説明する機会が圧倒的に多かったふたりの関係が少し変わり、ペテルブルクからご当地情報を交えながら彼女の日常が届くようになった。同じタイミングで、ロシア語検定も無事終了し、私の生活に占めるロシア関係のものの割合がぐっと下がったこともあって、このところ、ロシア関連の本を読んでいなかった。


 それにしても、この本、何だか、「答え合わせ」のような「種明かし」のような本だった。


 モスクワで生活をしていると、実に様々な情報がまことしやかに入ってくる。多くは、「また聞き」x10以上の情報のことが多いので、何が本当なのかよくわからない。


 日本人が情報源の場合、発信者ご自身は、ロシア畑で働く経験が長く、ロシア語も堪能な場合がほとんどなのだが、そのような方はしばしば「神様」のようになってしまい、どういう状況で誰を相手にいつなされた発言なのかということ抜きに、「あの、○○さんもこうおっしゃっていたそうよ」的にエピソードだけが独り歩きする場合が往々にしてある。結局のところ、信憑性のほどは自分で判断するしかない。


 また、情報源が習い事の先生やベビーシッターさんなど身近なロシア人の場合。ここには、その人が「外国人に対してロシア人をどのように見せたいか」という思惑が紛れ込むから、その人の性格や社会的に置かれている状況などを考慮する必要がある。


 若い人や新しいもの好きの人たちは、「今ではロシアも欧米や日本と同じよ」というのをやたら強調するし、英語をそのまま発音する、いわゆる「カタカナロシア語」を好む。あまりにも「ロシアも同じです」という説明しか返ってこないので、実のところどうなのか、全然わからない。(ちなみに、私のロシアでの最初の家庭教師がそうだった。)想像するに、高度成長期の日本人というのも同じような感じだったのではないだろうか。「日本も今じゃ、アメリカと少しも違わないよぉ」と言うのがカッコいい、と思っていた人たちはたくさんいたように思う。


 というわけで、色々な情報が錯綜したまま、手元に残った写真を自分の理解している範囲でご紹介しているこのブログだが、今回、この本を読んで、様々な点で答え合わせをしていただいたり、種明かしを受けたりしたような気分だった。


 筆者は、ペレストロイカの時代に、招聘翻訳者としてモスクワで暮らしていた方とその奥様。いわゆるロシア人アパートに住み、ロシア語で、ロシア人と同じ生活をされていたご夫妻が、日常生活や子育て、職場、様々な場面で見聞きしたことが記されている。ロシア人の中でロシア語で暮らしていたご家族なので、情報源に「伝説的また聞き」はない。


 時代は流れ、生活ぶりも貨幣価値も今では大きく様変わりしている。また、ロシア語がほとんど話せない日本人駐在員が、この筆者たちのように、ロシア人アパートに住んでロシア人とまったく同様の生活をする、ということはほとんどないので、駐在準備の参考にする類の本でもない。


 だが、今のロシアはこの時代の延長線上にある。錯綜する情報の中で、何が本当で何が「伝説」なのかがよくわかり、また、モスクワがどのような道を辿ってきたのかを知ることは、今のモスクワやロシア人を理解する大きな助けとなる。ロシアやロシア人に本当に興味のある方にはお勧めの一冊だ。


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