キノコ狩りの季節 | ムル☆まり同盟

キノコ狩りの季節

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「モスクワはロシアではない」と言われるほど、モスクワでのロシア人の生活は欧米化し、店はモノであふれている。それでも、ロシア人が変わらず好きなもの、それは、きのことダーチャ(菜園付き別荘)ではないだろうか。

先月帰国した友人は、20代後半、iPodや様々なWebサービスを駆使し、日本のイマドキの若者が使いこなすほとんどのものは自由に操る人だった。(後半は私が教えた検索システムを駆使して、関西の私鉄と地下鉄を上手に利用していた。) そんな彼女でも、来日当初は、「日本の生活は快適で不自由がないけど、それでもふっとロシア人として何か欠けてるなぁっと思うことがある。たとえば、この季節にキノコ狩りに行けないとか・・・」と洩らしていた。ロシア人にとってキノコ狩りとは、秋が訪れれば空気のようにそこにある行事だと言う。

また、モスクワでのチェロの先生は、夏になるとダーチャに2ヶ月以上もこもっていた。(レッスンのため、片道2時間も電車とバスを乗り継いでやってくるのだった。) そんな彼に、9月も半ば、「まぁだ、ダーチャにいるのぉ?」と、よく飽きないわねぇ~という意味も込めて問いかけたところ、「今は忙しいんだよ。キノコも取らなくちゃなんないし、野菜の収穫もある」と、何も知らない外国人の問いかけに対し、ちょっぴりむっとしたようだった。

私も、一度だけ体験したことがある。郊外に住む現地スタッフの方が、職場の日本人とその家族を連れて行ってくださったのだ。そして、彼らがなぜ、あんなにキノコ狩りが好きなのか、わかったような気がした。(もちろん、キノコそのものが好きなのは、言うまでもない。)

キノコ狩りは文句なしに楽しい。

初秋から晩秋にかけて、外気が肌に心地よい時季、草木の匂いに包まれて森の中を散策するのは、たまらなく心地よい。それだけではなく、まるで宝探しのように、様々な種類のキノコを見つけながら歩くのだ。ゲーム感覚で、子どもからおとなまで楽しめる。

こうして採れたキノコは、煮込んだり酢漬けにしたりして、保存食になったりもする。

それから、このキノコ狩り体験で、子どもの頃からの謎も解けた。

ヨーロッパの童話の中では、キノコ狩りやお花摘みのため森に入った主人公が迷子になり、そこから物語が大きく展開する、というストーリーのものが多かった。森の中で迷子になるという感覚は、日本の整備された森林公園しか知らない子どもにとっては少々理解しがたいことだ。単純に「来た通りに戻ればいいのに」と思ってしまうし、また、自然林の広大さも検討がつかないものだ。

が、この日、車を停めたところまで戻る時間も考慮し、そろそろ引き上げ時だな、と感じ、と現地人スタッフにその旨を告げたとき、彼の返答に愕然とした。

「もう、そのすぐ先が、皆さんが車を停めたところですよ。ちゃぁんと考えていますよ。」

確かに私は極度の方向音痴だ。だが、その場で自分たちのいる場所をほぼ正確に把握していたのは、小学生組の一部のみで、おとなたちとその他の子どもたちは「えっ」と声を上げた。それだけ、広い森の中というのは方向感覚を失いやすいものなのだ。ましてや、あちらにひとつ、こちらにひとつ、と、キノコが見つかるたびにウロウロしながら進むのでは尚更のこと。

今年もキノコ狩りのシーズン真っ只中。いや、そろそろ終盤を迎えているのだろうか。モスクワタイムズによれば、今日のモスクワの平均予想気温は12℃とのこと。私にとっては帰国後すでに二度目の秋。今ではモスクワの12℃がどんなものかも思い出せなくなってしまった。日本だと、「十分に初冬」の気温なのだが・・・。


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きれいなキノコに毒があるのも童話の通り。

迷子、毒キノコの問題があるので、日本人どうしではゼッタイに森に入らないように、と、この日もロシア人スタッフに言われた。