「タチアーナの源氏日記 紫式部と過ごした歳月」 | ムル☆まり同盟

「タチアーナの源氏日記 紫式部と過ごした歳月」

タチアーナ・L. ソコロワ‐デリューシナ, Tatyana Lyvovna Sokolova‐Delyusina, 法木 綾子
タチアーナの源氏日記―紫式部と過ごした歳月

「青い空に木々の緑、そして鳥居のオレンジ。日本の景色を描いた古い絵の中によく見る色の組み合わせだけど、実際に日本に来るまで、そんな色の組み合わせが日常的にある世界は、想像できなかった。」


友人が日本に深い興味を持つようになったのは、高校時代のこと。「世界の文化遺産」という選択科目があり、彼女は日本を選択したそうだ。そのクラスで「枕草子」と「源氏物語絵巻」を学んだのがきっかけで、大の日本ファンとなる。上の「緑とオレンジと空色」の組み合わせは、それらの教材を通して、特に気にかかっていたものの1つなのだそうだ。日本に来る直前の2年間は、領事館の関連施設主催の日本語教室に通っていた。


ロシア語で書かれた「枕草子」。ちょっと想像できなかった。その後、彼女がきものについて書いたエッセイを英語から日本語に訳す機会があった。そのとき「枕草子」から2節を引用し、彼女はこういった。「英訳や英語による解説書はたくさんあるけど、ロシア語訳の方が日本語の元々のニュアンスを伝えているし優れている。だから、英語に直すとあなたに私の言いたいことが十分に伝わらなくて残念だ。」と。


以来、日本の古典をロシア語に翻訳するロシア人翻訳者というのに、強い興味を抱いていたので、図書館で、この本を見つけると、すぐに手に取った。


著者は、「源氏物語」を日本語に訳した翻訳者。翻訳に4年、推敲に2年、その後、出版までさらに紆余曲折があり、都合17年間の歳月を「源氏物語」と深く関わりながら過ごした。その間綴っていた日記を、年に関わらず、四季に分け、月日の順に並べて解説をつけたのがこの本だ。


モスクワ郊外に住み、そこで著作活動をする彼女は、決して「日本かぶれ」ではない。小さな住宅に住み、自然の中でロシア人らしい伝統的な生活を送る。一方で、日本文学の造詣深く、私など、現代語や漫画でしか読んだことのない数々の古典の名作を言語で読み、深く理解している。日本人以上に日本の心を理解する、ホンモノのロシア人だ。


「源氏物語」に関しては、「誰よりも紫式部と仲良くなったという自信が持てるようになるまで」、現代日本語版にもすでにロシア語訳されていたいくつかの章にも、研究書にも目を通さなかったそうだ。そして、数章訳したところで、「紫式部との仲のよさ」に自信が持てるようになってから、それらに目を通し、さらに理解を深め、先に進んだという。


また、彼女の魅力は、彼女の中の日本的感性とロシア的感性の共存のみにとどまらない。日々のできごとを通して綴る彼女のものの見方、考え方、人生観には、共感を覚え、教えられるところが多かった。完成された「オトナの女性」というのは、まさに彼女のような人のことを言うのだろう。


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