4つの「イ」 | ムル☆まり同盟

4つの「イ」

2週間ほど前だっただろうか。モスクワ時代の友人で、私よりも1年後に帰国した方から久々にメールが届いた。彼女もロシア語の勉強を続ける努力をしていると言う。


猫シッターと友だちのアシスタントが主な仕事の私とは違い、彼女は2児の母、しかもふたりともまだ小さい。それでまだロシア語を勉強しようとは、語学オタクぶりは、私とどっこいどっこい、いや、私よりもはるかに勝っている。何が彼女をそこまで駆り立てるのか?彼女のメール中の次の一文は、私の気持ちをも、ぴったりと代弁しているので引用させていただく。


「せっかく縁あってロシアに行ってロシア語を勉強したのだから、検定くらい受けてその証拠みたいなものを残しておきたいなんて思って、・・・」


まったく同感。英語を習得したときのことを思い出すと、ひとつの言語を3年やそこらちょこちょこっと勉強したからと言って、それが、英語や日本語と同じように使いこなせるようになるとは思えない。まあ、記憶力が超優れている人ならともかく、私の記憶力は本当に凡人並み。一生、日本語や英語のように使えるようになるわけもない言語を勉強するというのも、何だかなぁっとは私もよく思うのだが、でも、彼女が言うように「何か形にしてからやめよう」と思ってしまうのだ。


それにしても、ロシア語というのは!


文法の煩雑さはまだかわいげがある。文法が細かく決まっている分、それに当てはめさえすれば理解できる部分が多いので、ある意味、英語や日本語よりもやさしいとも言える。問題はアルファベットの数だ。母音も子音も英語よりも多く、それぞれにわずかな違いしかない音が割り当てられている。英語のように、組み合わせや位置によって母音が何種類もの発音を持つわけではないから、完全に覚えてしまえば英語よりも易しいとも言えるが、おとなになって勉強を始めた私たちにそんな日が来るとは思えない。


たとえば、「イ」に近い母音は4つあり、そのすべてが名詞の語尾変化に絡んでくる。そのひとつひとつを、この子音の後だからこの「イ」、このパターンの変化だからこの「イ」と区別できなければスペルミスとなってしまう。(ちなみに語尾変化には絡まないが、ある位置にある条件で使われるときのみ「イ」に近い発音をする文字は他にも2つある。) 現地に住んで使う分には、たいていの人は外国人が話しているということを考慮してくれるから、どの「イ」を使おうと通じることが多い。「外国人訛りの強い」ロシア語になるだけだ。だが、テストとなるとそうはいかない。


また、これらを覚えたからといって、その4つの「イ」を正確に区別して発音できるようになるとも思えない。何だかとっても不毛な挑戦のように思えることもある。メールの友人の言うところの「証拠」って、そんなに大切なのだろうか。


と、思いつつ、実は小さなあこがれがある。


以前、ボリショイ劇場で、とても優雅な感じのロシア人女性と偶然同じボックス席に座ったのだが、彼女のご両親は日本関連の仕事をしていて、彼女自身も10年ほど前に5年くらいに本人住んだことがあるということだった。日本人3人連れだった私たちの日本語を耳にして、日本語で話しかけてくれた。それが、外国人訛りのまったくない上品な日本語だったのだ。


日本で、いつかどこかで、ばったりとロシア人に出くわしたとき、彼女のように流暢なロシア語で、しかもさりげなく話しかけられたらカッコいいなぁっと思う。・・・といいつつ、友人のロシア人とは、90%以上英語で話すという情けない私なのだが・・・。



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