ゲリコン・オペラ | ムル☆まり同盟

ゲリコン・オペラ

ロシア人の友だちでここの従業員にツテのある人がいて、何度か良い席にご招待いただいたのが、この劇場 に足を運ぶようになったきっかけだ。この劇場の建物は18世紀に建てられた貴族のお屋敷、ホールはダンスホールを改装したものだ。


クロークからロビーに足を踏み入れると、豪華なシャンデリアと赴きのある肖像画の数々が迎え入れてくれ、貴族のお屋敷にお招きいただいたような贅沢な雰囲気を味わえる。ワインやシャンパンも、決して使い捨てプラスチックコップなどではなく、上品なグラスに注がれ、カナッペなどと一緒にいただくことができる。座席数も200席程度とこじんまりとしているので、肩の凝らないくつろいだ雰囲気でオペラが楽しめる。


この劇場は、若い演出家による前衛的な演出が評判で、「カルメン」や「コシ・ファン・トゥッテ」などは完全に現代劇に書き換えられている。出演者の大半は大変若く、モスクワ音楽院に在学中だという話も聞いたことがある。もちろん指揮者もみな若い。ここの特徴は、セットや衣装にあまりお金をかけず、安い経費で様々な新しく奇抜な企画を試み、安い入場料で観客に見せることだ。ボリショイ劇場のように、大掛かりな大道具とすばらしい貴族の衣装でオーソドックスな演出の名作を見せる劇場とは、また、一味違った楽しみ方ができる。


プレイガイドに流しているチケットはほんのわずかで、チケットのほとんどはこの劇場の切符売り場で販売しているため、わざわざ出向いてロシア語で購入しなくてはならない.。短期観光でモスクワを訪れる場合は、残念ながらこの劇場での観劇は難しいだろう。ただ、ロシア語がわかる人と一緒の旅行や、モスクワに長期滞在される場合は、ぜひ、一度は覗いてみて欲しい劇場だ。


☆  ☆  ☆  


私が最後にこの劇場でオペラを観たのは、ちょうど1年前の今日だった。演目はヤナーチェクの「マクロプロス事件」というオペラ。不老不死薬の服用により何百年も若さと美貌を保つ、罪深くしたたかな悪女のヒロインが、「長すぎる人生は不幸だ」と言って自らの命を絶つラストシーンが印象的だった。


   年若くして結婚、出産した同年代の女性に比べると、自分の社会人としての現役人生はいつのまにかとんでもなく長いものになっていた。それまであまりおつきあいをする機会のなかった「早婚&良妻賢母」系の多くの日本人とモスクワで出会い、生き方の違いをしみじみと実感していた私にとっては、大変感慨深く、味わいあるセリフだった。帰国後、これまでと違う人生を過ごしてみたいと考えるきっかけとなり、今のようなスローライフを送る選択に、少なからず影響を及ぼしたオペラでもあった。


macropolis

DM風デザインのしゃれたパンフレット


いつもは英露二ヶ国語で記載されているあらすじが、この演目に限ってパンフレットのデザイン性を重視したためか、ロシア語のみでしか掲載されておらず、真っ青になった記憶が・・・。^^; 休憩時間にそれぞれ予習してきた「オーソドックスなあらすじ」と照らし合わせながら、あらすじと登場人物の「答え合わせ」を友人と必死でしたのも、今では微笑ましい思い出の一コマに・・・。