「検察官」 | ムル☆まり同盟

「検察官」

ニコライ・ワシーリエヴィチ ゴーゴリ, 船木 裕
検察官―五幕の喜劇

タイトルの日本語訳が「検察官」なので、てっきり犯罪モノかと思い込み、気にはなりながらも、今までなかなか読む気にならなかった戯曲だ。最近読んだ「訳注なしで読める『結婚』」 の面白さに味をしめ、同じシリーズのものを入手して読んでみた。


ふたを開けてみると、クセのない、文句なしに笑えるコメディだった。実際には、ここでいう「検察官」とは、地方都市の行政をお忍びで査察に来た「監察官」のことで、凶悪犯罪やドロドロした愛憎劇にはまったく関係のないストーリーだ。現代、日本に住む私が読めば、「クセのないコメディ」だが、作者としては、「当時自分の知っていたロシアの悪しきものをすべて、一挙にまとめて笑い飛ばしてやろう」という意図で書いたものだそうで、当時の観客にとってはさらに痛快な戯曲だったことだろう。


ロシア演劇には、最初にチェーホフ、それからゴーリキーの「どん底」、そしてブルガーコフの「巨匠とマルガリータ」の順で原作、または舞台に触れてきたので、どれも根底に重いテーマが流れている、という印象が強く、演劇好きなロシア人=真面目な人種、という印象が強かった。


けれども、今回、ゴーゴリを2冊読んで、少し印象が変わった。軽快なタッチでさりげなく描かれたこのドラマに、重たさやクソ真面目さは感じられない。ロシア人に対して、笑わない、暗いというイメージ以外持てない方にとっては、ロシア人の笑いや明るさを垣間見ることができる作品なのではないだろうか。