お気に入りの場所~楽譜屋さん
モスクワ音楽院の大ホールと、小ホール、ラフマニノフホールは大学の構内にあったので、当然、近くにはいくつもの楽譜屋さんがあった。コンサートに行くとき、中途半端に早く到着しすぎた場合、楽譜屋も時間つぶしに格好の場所だった。
モスクワは何しろ冬が長い。そして、中古のピアノが安価で(100、200ドル程度~)外国人の間をまわっていたり、借りたアパートに前の人が置いていったピアノが置いてあることもしばしば、ということもあり、子どもの頃習っていて10年以上もピアノに触っていない人や子どものときに習ったことはないけれども1から始めてみようという人がたくさんいた。私もその一人だった。
モスクワには、芸術家早期発掘の素晴らしいシステムがある。楽器やバレエ、体操などを習いたい子どもは、誰でも国営の専門学校で週に2日、放課後に、完成されたシステムの下、無料で教育を受けることができるのだ。気軽に習うことのできるこのシステムのおかげで、才能ある子どもを取りこぼすことなく訓練、発掘できるというのは、ロシアの誇る層の厚い芸術風土に大きく貢献しているらしい。
また、子どもの頃に興味を持ったが才能がないことがすぐにわかってやめた、という人にもたくさん出会った。それでも、納得ずくのことなので、とても自然な形で音楽を愛好し良き聴衆となっている「音楽愛好家」が本当にたくさんいる。
そういうモスクワなので、当然、楽譜環境(?) もよい。
まず、なんと言っても、安い!
日本だと、本当に弾くかどうか、というよりも、弾けるかどうか、を考えてから購入したものだが、モスクワでは、気に入った曲があれば、とりあえず購入していた。見つけたら購入していた。この手軽さがうれしい。
それから、買いやすい。
私がよく足を運んだ店では、子どもの音楽学校のグレード別に楽譜を置いているコーナーと、作曲家のアルファベット順に置いているコーナーがあった。この難易度別というのが、結構便利だった。私のレベルだと、ぱっと初見で弾けるのは「5年生」と「6年生」レベルだった。それ以上だと、一生懸命練習しなくてはならないし、以下だと退屈な曲が多かった。ピアノを先生について学習している友人には、アルファベット順が便利だったようだ。
日々、西欧化の進むモスクワ。激動の時代の中、何もかもが「世界的大都市レベル」に近づきつつある一方で、街の個性も日々薄れていくのは否めない。このようなよい制度、よい環境は国の財産だ。個性として是非残していって欲しいと思う。
ワルツ等の小品が7-10曲収録されて50ルーブル(約200円)、
ピアノピースだと12ルーブル(約50円)なんていうのも手元にある。
