主婦たちのささやかな冒険~キオスクでのお買い物
モスクワに来る駐在員夫人のほとんどは、あまり乗り気ではないのではないだろうか。モスクワという街についての情報が日本では少なすぎる上、耳に入ってくるのはテロや政情の不安定な話などろくなものはない。その上、英語が通じない。通じないどころか、アルファベット文字自体が違う。悪い先入観いっぱいでモスクワ入りする。
来てみて驚くのが、外資による大規模ショッピングセンターの豊富な品揃えや先進国並みの施設、大々的な外資系企業の街頭広告などだ。・・・もしかして、やっていけるかも、という気持ちになれる。
と言っても、大規模ショッピングセンターというのは、だいたい幹線道路沿いにあるので、週末に家族と車で、というパターンが一般的だし、最初からロシア語がバンバン話せるわけではないので、家の近所を歩けるようになるまでには、個人差はあるものの少しの時間が必要だ。24時間警備体制の敷かれたアパートから出るのは勇気のいることだし、また、「地元の人」にロシア語が通じるかどうかも不安だ。
私自身も最初の数ヶ月は、ひとりでアパート敷地内から出たことはなかったし、中心街を歩くようになったのは、中心街に何人か知り合いができ、夫にも休みの日に何度も一緒に歩いてもらい、ある程度地理を把握してからのことだった。春に赴任してすでに秋だったように記憶している。
そんな状況の主婦たちの最初の冒険、それは近所のキオスク(在モ邦人の間では「箱店」と呼ばれていた)で買い物をすることだ。ロシア語を使う度胸試しにもなるし、西側文化に感化されていないロシア人と直に話すよいチャンスでもある。
中には自家製の質のよい野菜を安く売る店があったり、馴染みになると顔を見ただけで「いつもの品」を出してくれるような店があったりもして、「箱店で買い物をするのが好き」という人も結構いた。
私は買い物をしたのは最初の頃のみだったが、箱店で売っている「シャウルマ」というスナックが好きでこれは結構愛用していた。シャウルマは、味のないクレープで、鶏肉(本当は羊らしいが、モスクワ市内ではほとんどの店で鶏肉を使っていた)と野菜を炒めて特製ソースを絡めたものを巻き、マヨネーズをたっぷりかけて食べる。ボリュームがあり、栄養のバランスもそこそこ取れているので、学生もよくお昼に利用するらしい。 (元々はアルメニア料理らしい。)
自分たちが気に入っていたので、後から来る人にも結構勧めていた。店によって味が異なるので、自分の気に入った味を探すのも楽しかった。
ただ、ひとつだけ苦い思い出がある。モスクワに来て早々の方たちを連れて「シャウルマっていうのがあってね」っと箱店に行った。そこのシャウルマは結構「アタリ」で、連れて行った友人たちにもそこそこ喜んでもらえた。・・・けれど、その夜、私はそれまでに経験したことのないようなひどい下痢に襲われたのだ!
箱店の食べ物全部がそう、というわけではないが、食費衛生法による取締りは日本のようにきっちりとしたものではない。以前お話ししたシャシリク
(串焼き)
も然り、個人営業店で食べ物を買って食べる場合は、それなりのリスクを理解した上で店を選び、購入しましょう!っというよい教訓になった。
「シャウルマ-шаурма」の店。地下鉄駅や大学、市場周辺に多い。
「カルトーシュカ-картошка」は、蒸したポテトの中を繰り抜き、ツナやチキン、各種野菜などの中から好きなものをトッピングしたものを売っているファーストフードチェーン。中心部に多い。
近所にあった野菜屋さん。ここは質がよく値段も手頃なため人気の店で、私が帰国する頃にはガラスショーケースのついた上の2店舗のようなちゃんとした店に変身していた。
画質が悪く見づらいけど、飲料水、タバコ、テレカ販売店。
住宅地には、薬局や乳製品店、ソーセージ専門店、パン屋などの箱店が並ぶ。



