「落日礼讃」 | ムル☆まり同盟

「落日礼讃」

落日礼讃
ヴェチェスラフ カザケーヴィチ, 太田 正一
落日礼讃―ロシアの言葉をめぐる十章

 著者は、ベラルーシ生まれの詩人。1985年モスクワで出された最初の詩集でゴーリキイ賞を受賞し、現代ロシア詩人として高い評価を得た。1993年に来日以来、大学にて客員教授として教鞭をとっている。この本の原語執筆は2002年、日本で約10年間の時を過ごしたのちに執筆されたものだ。


 本書は1章で1語のロシア語を取り上げ、短編小説風、コラージュ風など様々なスタイルでロシア人の心を表現している。来日後約10年、大阪、富山、2つの土地での生活を経て書かれたものだけあって、表現の中に日本的解釈を踏まえたような配慮が見られる。一方で、日本人にはとても考えられないような粗野で朴訥なロシア人気質も見え隠れする。これまで読んだ本の中では、「ロシア人とは」という問いかけに最もわかりやすく答えてくれている1冊だ。


 ベラルーシの片田舎で生まれ、軍事学校、モスクワ大学へと進んだ筆者は、旧ソ連、ロシアの様々な側面を経験している。そのためか、日本人の私にとっては、ついさっきまで「現代人(=日本人に似た感性の人)」が書いたものを読んでいたのに、気が付くと「昔ばなしの語り部」の話に摩り替えられているような不思議な感覚にとらわれる。


 モスクワ在住当時は理解できなかった様々な出来事を解説し、色々な人々のそのときの気持ちや感じ方を彼が代弁しているようにも感じられ、ロシアで出会ったロシア人たちの顔をひとつひとつ思い浮かべながら、楽しく読んだ。ロシア人やロシア人の感性に興味のある人にはイチオシだ。