「したたかなロシア演劇」 | ムル☆まり同盟

「したたかなロシア演劇」

堀江 新二
したたかなロシア演劇―タガンカ劇場と現代ロシア演劇

 ロシア生活の先輩日本人のひとりにとても演劇にはまっている人がいて、彼女に勧められたのがきっかけで、演劇に興味を持つようになった。また、徐々にロシア語と生活のテクニックが身に付くにつれ、街中でも自由がきくようになると、今度はまだ制覇(?) していない場所というのが気になるようになってくるものだ。それがだんだん減っていって、最後まで残っていたのが劇場だったというのも興味を持つようになった理由のひとつだ。しかもモスクワの街中には小さな劇場がたくさんあり、その広告看板やポスターは街中いたるところにベタベタ貼られているのだから余計気になる。

 そして、以前読んだ「ロシア演劇の魅力―ワンダーランド・ロシアは演劇の国(劇場案内付き) 」(著:堀江 新二, 松川 直子, ナタリヤ スタロセーリスカヤ) というブックレットで大まかな流れは知っていたので、一度は観ておきたいという気持ちもあった。だが、問題なのはやはりロシア語だ。結局、最後の1年間で3つだけ観た。

 どこかの国の国民性を知るのは簡単なことではない。自分で接することのできるのは、英語を話し外国人と結婚した人たちか、外国人相手に働く人たちで、彼らが一般的ロシア人というわけでは決してない。数も限られている。また、街で出会うロシア人たちと何かじっくりとお話しするわけでもない。そういう意味で、演劇界の流れを知り、現在上演されている演劇を鑑賞し、ロシア人たちの反応を観察するのは、本当の意味でロシア人の国民性を知る上で、とても為になると思う。

 この本が出版されたのは90年代の終わりなので、残念ながら、21世紀になってからの流れを知ることはできない。しかし、タガンカ劇場の歴史を通じて、ロシア演劇に携わってきた人たちが何をどのように描こうとしてきたのか、を時代背景と照らし合わせながらわかりやすく解説した本で、ロシア人やロシア演劇に少しだけ興味を持ち始めた人には、なかなかのオススメだ。