「ワーニャ伯父さん」
チェーホフ, 神西 清
「芝居は小さな芝居小屋で観るもの」「ロシアに住んでいる間にゼッタイ観る価値あり」。ロシアを気に入って住んでいるモスクワ生活の先輩たちからしばしばこのような声を聞き、是非一度はロシア人の芝居を観てみたいと思っていた。役者は演技力抜群なので、ロシア語がわからなくともメッセージは十分伝わってくる、と皆口を揃えて言う。
演劇はモスクワにおいて俄然根強い人気を誇っている。中心となるのは、チェーホフやゴーリキーなどの古典作品の数々で、収容人数100人前後またはそれ以下の小さな劇場がモスクワはもちろんのこと、ちょっとした街であればどこにでも無数にある。街角のいたるところに、人気劇場の看板や宣言広告を目にする環境にあって、日本人のしかも私よりも「ロシア歴」が1,2年しか長くない人たちに勧められれば、その気にならないわけがない。
そこで、まず原書を読んで予習してから観ることにした。最初に選んだのはチェーホフの小品集だ。「ワーニャ叔父さん」「桜の園」「かもめ」などどれも短編戯曲で初心者向けだ。読み物としては、短編なので内容がすっきりしていてメッセージもわかりやすい。国も時代もまったく異なるのに、現代日本人の私たちに語りかけてくる共通の想いを強く感じられるのは、チェーホフの偉大さかもしれない。どの作品もほぼ毎日といってよいほど、街のどこかで上演されている。
「ワーリャ伯父さん」は、ペテルブルグに旅行したとき、「ウラジミール・マリシツカバ劇場」という場末の小さな劇場で観た。観客総勢20人以下、舞台の中に客席があるというユニークな状況で、クライマックスではロシア人観客に混じって主人公たちの迫真の演技に涙を流し、人生について「働くということ」について考える時間を彼らと共有した。
舞台兼客席の全景
セットの一部


