私は、生まれて以来80年以上、この瀬戸内海地方で過ごしていて、鼻音が出来ません。

 老妻は、生まれは宮城県。結婚するまで、鼻音を使って生活していました。

 

 結婚後60年あまり、時に鼻音の話に花が咲きますが、もうお互い意識することなく生活しています。

 

 ところが今日、昼過ぎ、いつも見るテレビ番組『徹子の部屋』を見ようと私はテレビの前で、老妻は少し離れた所で、昼食の準備をしていました。

 そして、テレビが始まりました。徹子の相手は「麻木久仁子」さん。

 

 老妻が、大きな声で「今日のお客は誰ですか?」と大声で尋ねます。

 私が「麻木久仁子だよ」

 

 老妻は大きな声で、「ああ、麻木久仁子さんね」

 

 びっくりしました。「あさぎ」の「ぎ」が完全な鼻濁音だったのです。

 

 思わず感心しました。いいねって。

 

 私の鼻濁音の知識は、ほとんど、高島俊男さんの「お言葉ですが…第八巻 春のうららの隅田川」から得ていました。

 早速、また、その文庫本を開いて読んだところです。美空ひばりの鼻音は天性のもの、石川さゆりのは習ったものなどとあるのを読み飛ばして、楽しいひとときでした。