前回までのあらすじ

「キーの名を呼ぶ」状況と必要性をチェックしました。



では、いよいよ「マイナーキーの正体 その1」で挙げた疑問の答えを考えてみましょう。



Question ① 

ジャズスタンダード「Autumn Leaves」はB♭メジャーキーでしょうか、Gマイナーキーでしょうか。

コード「Gm」はGマイナーキーのⅠmでしょうか、B♭メジャーキーのⅥmでしょうか?




演奏時にキーを申し合わせる、という用途でしたら「Gマイナーキー」と呼ぶのが妥当、と思います。メロディーの解決どころのコードもGmですし。


では、このコード進行を


・B♭メジャーキーケーデンス

・Gマイナーキーケーデンス

・セカンダリードミナント、エクステンデッドドミナント等


に分けてみましょう。




32小節内のそれぞれの割合は


B♭メジャーキーケーデンス … 12小節 / 32小節 ≒ 38パーセント

Gマイナーキーケーデンス … 15小節 / 32小節 ≒ 47パーセント

Sec.D、Ext.D等 … 5小節 / 32小節 ≒ 15パーセント


メジャーキーとマイナーキーの割合は、ややマイナー優勢ですが、半々近く。メロディーの解決どころこそGmですが、それ以外の要件では「どうしてもGマイナーキー」というわけでもなさそうです。


◇「この曲のキーは?」の答えとしては


便宜上の呼び名として訊かれれば「Gマイナーキー」。

楽曲の本質的な要素として訊かれれば「GマイナーキーとB♭メジャーキーが半々(ややマイナー優勢)」。


ちなみにさきほどの「You'd Be So Nice To Come Home To」。メロディーの最終的な着地点のコードはB♭、全体のコード進行内のGマイナーケーデンスの割合いは約56パーセント。この曲のキーは、一般的にはGマイナー、と呼ぶでしょう。「Autumn Leaves」より、若干、マイナー要素が多くなっています。着地点が最優先とは限らず、全体のマイナー感が印象に残るためです。


◇「GmはⅠm?Ⅵm?」の答えとしては


「Autumn Leaves」に限っていえば、コード「Gm」はマイナーケーデンスの中にしか出てこないので、その中ではⅠm。

しかし、たいていの場合、B♭メジャーキーの曲にもGmやGm7は頻繁に登場し、それがB♭メジャーケーデンスの中であればⅥmの扱いになる。また、前後関係によっては「B♭メジャーキーのⅥm」「GマイナーキーのⅠm」の二重構造(ピボットコードの役割り)になっていることも多々あり。


…というところでしょう。



Qestion ②

完全なAマイナーキーの曲を作るとすれば、コード「C」の使い方は?


同機能のコード連結は

本来のもの → 代理のもの

の順につなぎます。


例えばCメジャーキーの中でのサブドミナント、FM7(本来のサブドミナント)とDm7(代理のサブドミナント)があれば、

FM7 → Dm7 はオーケー

ですが、

Dm7 → FM7

は肩すかしのようなサウンドになってしまい、NGです。


で、コード「C 」と「Am」、キーがCメジャーキーかAマイナーキーか、で立場が変わります。


Cメジャーキーでは

C … 本来のトニック

Am … 代理のトニック


Aマイナーキーでは

Am … 本来のトニック

C … 代理のトニック


なので、Aマイナーキーの中でコード「C」を使う場合には


Am(本来のトニック)→ C(代理のトニック)

の連結はオーケーですが、


C(代理のトニック)→ Am(本来のトニック)

という連結はNG


ということです。


あまりによく見かけるこの「C→Am」連結、この時点でキーはCメジャーキーになってしまう、ということです。


ちなみにAマイナーキーの中でも

G → C

という連結はあり得ます。

例えば

Am → G/B → C …

Amはトニック、G/Bはサブドミナントの代理、Cはトニックの代理、です。




10回に渡ってマイナーキーについてあれこれ書き連ねました。

結論としては、軽音楽に関していえば


「マイナーキーは濃度」


と考えます。


便宜的に「この曲は何々マイナーキー」という言い方はしますが、その中身は、といえば、濃いマイナーキーもあれば薄いマイナーキーもある、ということです。


であるからして、軽音楽においては完全に正確なキーの呼称を使う必要は、さほどない、ともいえるでしょう。


「コーヒー」をマイナーキー、「牛乳」をメジャーキー(平行長調)とすれば、その混ざり具合で


ブラックコーヒー … 完全なマイナーキー

ミルク入りコーヒー … 平行長調が少し入ったマイナーキー

カフェオレ … 平行長調と半々くらいのマイナーキー、平行短調と半々くらいのメジャーキー

コーヒー牛乳 … 平行短調が少し入ったメジャーキー

ミルク … 完全なメジャーキー


というグラデーションと同じ感覚です。




「マイナーキーの正体」でした。


では、おあとがよろしいようで。