社会人としての生活にも、 少しずつ慣れてきた。
仕事をして、給料をもらう。
休みの日には友達と遊ぶ。
一見すると、ごく普通の21歳だった。
けれど、のどかには、人にはあまり言っていない事情があった。
18歳の頃から、体調を崩しがちだった母親の面倒を見ていた。
仕事から帰れば、家のことをする。
母親の様子を見る。
友達が遊びに行く中、
「私は何をしているんだろう」
と思うこともあった。
いつからか、将来への不安から、のどかは資格を取ろうと勉強を始めた。
そんなある日、母親の知り合いの霊媒師に会った。
「はじめまして」挨拶をするも、
顔を背けられた。
「あなた、頑固ね」
自覚はなかった。
ただ、人に決められるのが嫌いだった。
母親のことも、仕事も、人生も、自分で決めたかった。
ある日、のどかは神社へ向かった。
「私、このままでいいのかな…」
すると、心の中に声が響いた。
『何のために資格を取る?』
「将来、困らないため」
『何を恐れている?』
のどかは答えた。
「母を支えられなくなることです」
『資格は道具だ。目的にするな』
のどかは気づいた。
欲しいのは資格ではない。
何かあっても困らない自分になることだ。
帰り道、のどかは決めた。
「資格は取る。
でも、本当にやりたいことも探そう」
自分の人生は、自分で決める。
その思いが、少しずつ強くなっていた。