僕の上京する日は

雪が舞う寒い日でした

今はもうないけれど

夜行列車

もちろん東京行き

修学旅行なんかで使った

大きいバックに荷物を入れて

禁止されてたバイト代で

買ったギターも背負って

夕方

18時過ぎくらいの列車だったと思う

親と友達何人かが見送りに来てくれた

特に寂しいって気持ちより

やったるぞ

って気持ちが勝ってた

窓から大きく手を振った

「さよなら」「ばいばい」

を繰り返し

映画のワンシーンみたいにね

山口県から東京まで

12時間以上の旅

もうずっと前の事なのに

覚えてる

夜ごはんも食べてなかったので

売店で買ったおにぎりか何か食べたと思う

窓の外は真っ暗で

今どこを走ってるかは分からなかった

CDプレーヤーで大好きな音楽をいっぱい聴いた

携帯にはメールが何件か入ってて

「がんばれよ」って内容だった

返事を一通りして寝ようと思った

けれど、

横になってごろごろしながら

頭を巡るのは

うるさい列車のがたんごとん

じゃなくて

これまでの故郷の思い出だった

これがこれから毎日続くのかなって思った

一人で東京の街へ

お金もそんなに無いから

とりあえず働かなくちゃ

けれど、ギターも弾かないとだし、

バンドメンバーも見つけたいな

それにはこんな地味な格好じゃだめだな

髪も思い切って染めてみよう

ライブってもんも生で見てみたい

上手い奴はいるかな

東京タワーにだって登ってみたいな

TVでしか見たことない場所ばっかりだし

それに

友達もできるといいな

 

明け方

あれはどこの海だったんだろう

カーテンを少しあけると

朝日が綺麗だった

おお、同じ空してんだなぁって

同じ日本なのに外国に来たみたいに驚いた

ほどなくして

僕と大きな荷物とギターを乗せた夜行列車は

東京に着いた

舞い散る雪はそこにはなくて

綺麗な青空でした

 

 

何度季節は繰り返し

何度見送ったのか

僕は寂しくなる

それでも

この季節が愛おしい

この季節を忘れずにいたい

さくらのひ

今年も想いが行き来する