かなり長文なので暇な方だけお付き合いください.
中学生時代だったか高校生時代だったか忘れてしまったが,その頃に「総ての三角形は二等辺三角形である」という説明を受けてビックリした思い出がある.
その内容はこんな感じ.
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図のように,
任意の△ABCの∠Aの二等分線と線分BCの垂直二等分線は△ABCの内部で交差し,
その交点を点Oとする.
線分BCの中点を点Lとする.
点Oから線分AC,ABへ垂線を引き,交点をそれぞれ点M,点Nとすると,
△OBLと△OCLは合同
(OB=OC,OL共通から斜辺と他の一片)
△AONと△AOMは合同
(AO共通,∠OAN=∠OAMから斜辺と一鋭角)
△OBNと△OCMは合同
(OB=OC,ON=OMから斜辺と他の一片)
これらから,
BN=CM,AN=AM
なので,AB=AC
よって△ABCは二等辺三角形
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そんなこと無いコトは頭では解かっているのだが,図を片手に証明の文章を読んでみるとどの一文をとっても間違いは無さそうだ.
では,何が間違っているかというと最初の文
「任意の△ABCの∠Aの二等分線と線分BCの垂直二等分線は△ABCの内部で交差し」
の『内部で』の部分.
実際に定規とコンパスを使って作図してみると交差するのは必ず△ABCの外部か線分BC上だ.
だから話の全体がオカシクなってしまったのだ.
なぜこの話を突然思い出したかというと,先日通勤途中でちょっとしたトラブルに遭ったからだ.
状況を少し具体的に書くと,
通勤時間帯はどの駅でも同じような状況だと思うのだが,トラブルに遭遇した駅でも多くの人が足早に改札からホームに向かったりホームからホームへと移ったりとするので,人の動きが複雑に交差してお互いに身をかわしながらすり抜けるようにそれぞれの目的地へ歩いていかなければならない状況だった.
私もタイミングを計りつつ避けながら歩いていたのだが,不幸なことに左前方からスマートフォンを熱心に見つめながら歩いてきた青年と接触してしまったのだ.
更に悪いことに私と接触したはずみでそのスマートフォンは地面に落下してしまい,その事に対して青年は激高した.
彼は色々なことを恫喝気味に捲し立てたのだがその主張は主に以下の通り.
・避けずにぶつかってくるとは何を考えているのだ
・ぶつかって来たのだからスマートフォンの故障を弁償しろ
・故意にぶつかって来たので謝罪しろ
さて,この様な主張をする青年を前にして私は少々困った.話がかみ合いそうにも無いからだ.
出社時間が少し遅れてしまうことは口惜しかったが,丁寧にこの青年に相対することにした.
彼の主張と語彙が尽きるのを待ち,この様なやり取りをしてみた.
私:「私が故意にぶつかったというのは何を根拠に?」
彼:「こちらは歩いていただけなのにぶつかってスマートフォンが落ちた.間違いない.」
私:「私は回避を試みたがあなたは避けていないように見える.どうしてか?」
彼:「こちらはスマートフォンを見ているので避けられる訳が無い.避けるべきはそちらだ.」
私:「注意をしていた車と前方不注意の車が衝突したらどちらに過失があると思う?」
彼:「・・・」
最初は怒髪天を突いていた青年は冷静になって自身の論理の無理に気付いたのか,それとも彼自身の約束の時刻に遅刻しそうになったのか,それとも別の理由があったのかは判らないのだが,彼はその後主張を並べることなく静かに雑踏の中へ消えていった.
この2つの話『総ての三角形は二等辺三角形』『スマホ青年の主張』両方に共通しているのは「間違っているコトを前提条件とすると,その後にどんな論理展開をしても全体として正しい内容になってしまう」という構造.
この構造は,英文法の教科書に出てきた仮定法過去の例文
If I were a bird, I could fly to you.
と同じ構造だ.
人は空を飛べるわけでは無いのに「もし鳥なら」という事実とは違う前提を受け入れてしまうと,文全体では正しい文章となってしまう.
最近,国と国,会社と会社,個人と個人などの間での論争・口争をニュースなどでしばしば目にするが「んっ???」と感じる無理筋な内容のほとんどが,先に書いたような,
「正しくないコトを前提に論理展開して,間違った内容をさも正しいように言う」
という戦術を採って相手をやり込めようとしているように見える.
狙ってやっているのか天然でそうなってしまっているのかは判らないが,コレは明らかに卑怯なやり口で決してまともに相手をしてはならない.
「空を飛べるはず」の部分の議論は放っておいて,「本当に鳥なのか?」の前提の部分の真偽について決着を付ける必要がある.
さて,先日の駅では,スマホ青年の主張を聞いているうちに上記のようなことが不意に頭に浮かんだ.
なので「無理筋な論理をどこまで続けるのだろう」と思わず笑ってしまい,そのコトが口角泡を飛ばす青年の怒りに燃料を与えてしまったらしく論理立った会話をするまで随分時間を要してしまったが,次にこのような事態になった時にもっと効率的に冷静な会話へ導けるだろうか?
もし,スマホ青年がぶつかって来たなら,,,,,