ローリングストーン誌 2009年9月号に掲載されたレビュー集です。
レビューをいろいろ読んでいるとライターの趣味が分かります。矢沢永吉は歴史が長いのでキャロル時代から全部の作品がOKっていう人はそんなに多くはありません
この記事は初期の頃から80年代前半に偏ってます。
もちろんライターや評論家は偏見があってはいけないわけではないし渋谷陽一なんかは偏見で雑誌を売ってるようなもの。
参考までにどうぞ。
「I LOVE YOU,OK」
1975/9/21(ソニー)
基礎を一気に築いた記念すべき1作目
記念すべきファースト・アルバム。この年の春にキャロルを解散し、僅か半年たらずでソロ・デビューを飾った。
クロージングを飾るタイトル・トラックは、それまでの矢沢からは考えられない甘いロッカ・バラードだが、紛れもない彼の代表曲として今でも輝きを失っていない。
ほかにも軽快な「ウイスキー・コーク」、胸が躍るアップテンポの「恋の列車はリバプール発」、青春の香りがするスローバラード「安物の時計」など、バラエティに富んだ内容で聴きどころは多い。
後の基礎を一気に築いたと同時に、ソングライターとしての才能を見せつけた。それと並び重要なのは、レコード会社を移り、アメリカに渡ってレコーディングするなど、“ソロ・アーティスト矢沢永吉”の決意がにじみ出てる点。20代半ばの才気がほとばしる。
「A DAY」
1976/6/21(ソニー)
旅の哀愁を歌ったライヴ定番曲
タオルを放り投げるシーンで有名な、ライヴの定番中の定番曲「トラベリン・バス」を収録したセカンド・アルバム。ツアー・バンドの日常を歌ったものだが、まさに当時の彼の心情を表したものと言えるだろう。
ファーストの『I LOVE YOU,0K』同様、初期ならではの雑多な内容が今聴くと逆に新鮮だ。バラード・メイカーとしての実力は相当のもので、終曲「A DAY」の荘厳な広がりは矢沢ワールドとしか言いようがない。
「THE STAR IN HIBIYA」1976/11/21(ソニー)
珍しい組み合わせの初ライヴ盤
通算3作目にして早くもライヴ・アルバムを出すところも彼らしいが、見逃せないのはサディスティック・ミカ・バンドから派生したサディスティックスが演奏を務めた点。
自分にとって有益なミュージシャンはどんどん取り込んでいく、それが矢沢の精神なのだ。高中正義、高橋幸宏(後にYMO)、後藤次利らが矢沢を盛り立てる毛色の違うライヴ盤として、しかし何より、若さ溢れるスナップショットとして貴重な作品である。
「ドアを開けろ」
1977/4/21(ソニー)
反骨の精神を感じる若き矢沢のドキュメント
矢沢の鋭気が充満し、演奏も含めて上り調子な様子がびんびん伝わってくるオリジナル・スタジオ・アルバム3作目。硬軟取り合わせた名曲が揃った。まさにスーパースターへの階段を駆け上がっていた頃のドキュメントでもある。
当時の矢沢は「不良の神様」とも呼ばれ、反骨のヒーローそのものだった。
反骨精神を反映した超名曲が「黒く塗りつぶせ」。“シャクなこの世界だぜ/みんな黒く塗りつぶせ”と欲求不満を吐き出したこの曲は、彼の音楽史上でも一、二を争う生々しさを持つ。
迫力あるシャウトとファンキーなリズムとが相まって、聴くたびにアドレナリンが噴き出す。日本語ロックの祖と言われる理由が、この曲を聴けばわかるだろう。
若かりし日を過ごした横浜へのオマージュ「チャイナタウン」、エモーショナルな「苦い涙」なども心にずっしりと響く。
「ゴールドラッシュ」
1978/6/1(ソニー)
“矢沢入門”に最適なバランスの取れたアルバム
前作『ドアを開けろ』と並ぶ傑作で、本作をいちばんのお気に入りに挙げるファンは多い。一度見たら忘れられないジャケット写真、そして一度聴いたら忘れられない曲の数々。
冒頭のタイトル・トラックは予想を裏切るマイナー調。しかし、もの悲しいオープニングが逆にアルバムのスパイスとして効いている。
ハイライトは、ポジティヴなロックンロール「鎖を引きちぎれ」。歌詞をゴールドラッシュの開拓精神に引っかけ、「立ち上がれ」と聴く者を鼓舞する歌で、こういう曲こそ本物の“人生応援歌”と呼びたい。
大ヒット曲「時間よ止まれ」は都会派のバラードで、これ以降、矢沢の得意分野のひとつとなる。切々と恋人に語りかけるシンプルな「長い旅」、隠れた名曲「さめた肌」など、バランスの取れた作品。入門盤として薦めたい。
Rolling Stone ( ローリング・ストーン ) 日本版 2009年 09月号 [雑誌]/著者不明
楽曲と参加ミュージシャン
1979 KISS ME PLEASE
1978 ゴールドラッシュ
矢沢永吉ヒストリー PC、スマホ向け
1949-1980
全公演会場
1975~1990 001~901回
1991~2012 902~1729回
全公演会場と公演回数