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そのうち、藤田が、木原(敏雄)を連れてきたんだ。
学生時代で、友だちだったの。
「矢沢、実はギターの天才がいる。矢沢のことを話したら、一回本牧に遊びに行きたいって。
明日ぐらいに来るけど、話してやってみてくれ」
藤田は、オレの計画を知ってるから協力してくれてるんだ。探してるわけ、次のパンドのメンバーを。
木原のアホが来たよ。来ました。
オレ、「炭」だと思ったもんね。キハラ、炭! 顔、まっ黒でさ。
挨拶、よかった。「ドーモ」
オレ、『スローダウン』すぐやった。
木原、ぶっ飛んじゃったわけよ。その前から藤田にきいて知ってるしね
「矢沢って、すごいボルテージ高いやつがいる。曲も書いててスゴイ」と。
彼にしてみれば、オレに会うって目的もあったけど、てめえの友だちの藤田がいるから遊びに来たんだろう。それが、『スローダウン』ぶつけられて、ぶっ飛んだ。
すぐに話をしにきた。
「あんたが矢沢っての?」「あんたが木原?」
「そう。タメ齢(同年齢)?」
「タメ齢」ってわけで、藤田が聞に入っててさ。
「矢沢、曲聞かせてやれよ」「オッケー」
オリジナルの曲をやった。
「たまんないね。こんな曲書くやっもいるんだねえ」
大成功。オレ、木原に切りだした。
「オレとやる気ねえか?」
「いやあ、矢沢がオッケーだったら、オレ、ぜひやりたいよ。オレでよければ、やらしてくれよ」
木原を入れてやってみたら、また、すごい。木原のやつチョーキングやるわけよ。
バヒュウウウン。
「何、それ??」
「チョーキングっていうんだよ。知らないの」
木原は、藤田よりも、まだずっと格上なの。
アドリブも、いままでオレの知ってた山田なんかと段違い。木原、ギュイーン。
山田、トコ、トコ。
いま考えたら、最悪に近かったけどね。
天才じゃ。天才がオレのそばにきて、オレの夢を全部理解してくれてる。
「やれる」。
木原のパカがきて、大パカが三人そろったわけよ。
広島からのオレの夢が、かたちになってきた。