AERA 2010/5/31 No.23 矢沢永吉 | 矢沢永吉激論ブログ

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全国矢沢永吉激論学會集団。

「おい、みんな筋は通そうぜ」
語り続けた60分/「マスコミ、許せないね」


「こんなに喋っちゃって大丈夫?
矢沢、狙われないようにしてね(笑)」

あらゆる事柄に関心を持ち、
うなずき、時に疑念を抱く。
この男にかかれば、
雄弁こそが「金なり」だ


撮影スタジオから一歩外に出ると、
辺りの空気が一変する。
圧倒的な存在感が、行き交う人の視線を奪う。
悠然と構える姿に声をあげる人がいれば、
すくむように息をのみ、立ち尽くす人もいる。
この反応を不自然と感じないほどに、
YAZAWAは威風堂々としていた。

 スタジオに隣接する消防署では、
建物の壁を使った登はん訓練が行われていた。
15メートルはあろうかという壁を、
ロープだけで登りきる。
その模様をYAZAWAにひと目見てほしい、
と消防職員から突然、呼び止められた。

歩を止め、こう答える。
「ぜひ、見せてください」

消防職員は一気に駆け上った。
「すばらしい」と手をたたいて称賛するが、
その声は、職員たちから降ってきた
「ありがとうございます」の声にかき消された。
時代の移り変わりにとらわれることなく
注目され続ける自分を、俯瞰した。

「いつまでも見てもらえるありがたみ。
その受け止め方が、少し変わってきた」
20、30代のころは、毎日がむしゃらだった。
周囲に気を配れなかった時期もあった。
道を踏み外すことにさえ必死だった、と振り返る。

「近いところだけを見て、
尖った毎日を過ごしていた。
自慢じゃないけど、
明日を考える生き方なんてしてなかった」

スタジオ入り口の脇に偶然居合わせた中学生が驚くと、
すかさず、「どう。元気?」と声をかける。
気さくな姿勢に再び、その場の空気が熱を待つ。

「俺が何者か詳しくはわからないかもしれないのに、
喜んでくれる。嬉しいよね。
ますます、やったろうじゃねえか、って思えてくる。
アルバム『ロックンロール』や『ツイスト』は、
60歳の俺だから作れた。これ最高だよ」
YAZAWA第2章は、いま幕を開けたばかりだ。



汗水垂らして悪いか

 オレってどういう風に映ってるのかな。
「アツい」とかっておもしろがってる人、いるでしょ。
最近だと、コマーシャルもバンバンでてるしね。
それでしか知らない若い子もいるのかな。

〈昨夏、野外音楽イベントに
ゲスト参加したときの印象を聞くと、
穏やかに語り始めた〉

 でもね、それはいいことだと思う。
自分のことを深く突き詰めたことはあまりないけど、
「このオッサンが」とか
「この人、60歳でまだやってんだ」
とおもしろがってくれるのは、
とても嬉しく思うんです。

 ただ、おもしろがってたとしても、
何かの拍子に「俺」を
目の当たりにするときがあるかもしれない。
たとえばライブとかで、
セクシーなパフォーマンスができれば、
はっと気づいてくれるかもしれない。

本当の「熱」にね。
アツくなることは何か悪いの?ってね。
だから、おもしろがってもらっていいんです。

〈急に言葉と言葉の間の沈黙が短くなった。
ゆったりとしていた口調が早口になった〉

 今の世の中、「スター」は存在せず、
そんな言葉は「死語」と思われてるかもしれない。
でも、そう言っても、
本当は何かに夢中になりたいという自分が
どこかにあるんじゃないかな。
あるけれどもそれが見つけられないし、
見つけることも恥ずかしがっちゃうだけだと思う。

 20年くらい前を思い出してください。
メディアがドラマに毒されて
「トレンディー」の言葉を乱発した時代を。
「一生懸命」とか「必死」って言葉は、
世間から突き放されたでしょ。

つば飛ばしまくって
「夢論」をアツく語る奴らは臭い。
匂う。そう訴えてたじゃない。
その世代が育てた若者たちにアツくなれっていうのは、
難しかったのかもしれないですよね。

 でも、本音ではそろそろ誰かに夢中になりたい、
誰かにアツくなりたい、
という気持ちが芽生えてるんだと思う。
ちょっぴり飢えてるのかもしれない。
だけど、一歩踏み出す勇気がない。
照れくさいんだよ。

〈無鉄砲になれとは言わない。
ただ、ひたむきさに欠ける若い世代には厳しい言葉が続いた〉

 夢を論として語ることが失礼だなんて、
言っちゃいけなかったんだ。

「汗水垂らす」を
使い古した言葉のようにしてはいけなかった。
汗を流すことは何一つ間違ってない、
っていうことを19歳の子だって
言える世の中じゃなきゃいけない。

気づいたら、
一生懸命は臭いって言ってた人、
消えてるでしょ。

 俺の世代なら
「月光仮面が現れてほしい」とか
「エイトマンが来てほしい」とか
言いたい人もいるでしょう。

社会人だからみたいな身構え
取っ払ったっていいじゃない。
ときどきアツくなるのって、意外と悪くないよ。
たとえ話か古すぎたかな。
ウルトラマン」にしておこうか。


・・・続く