わくわくと賢者の石
この物語は、
まったく着地点が見えていないため
かなり適当な感じで終わるか
飽きて途中で全部無かったかのように
振舞う可能性の高い
仕事中に上司の目をかいくぐって
主にいやらしいコトを考えながらも
世界平和や子供達が安心して暮らしていける
街づくりをしていこうと心に誓い
We Are The Worldを口ずさみながら
暇つぶしに描いていく
パラレルストーリー。
第一章
「長い間、おつかれさまでした。」
拍手と歓声の中で手渡された花束は
ダリアだった。花言葉は『感謝』だ。
楽屋へと続く廊下にも全国から送られてきた
たくさんの花束が並んでいる。
「愛されていた証拠ですね。」
そばにいたスタッフが
笑顔でつぶやいた。
20XX年 春。
NHKで放送されてきた
児童向けTV番組『つくってあそぼ』の
メインキャストを務めたわくわくさんは
惜しまれながらもその活動に
幕を下ろした。
そのキャッチーなキャラクターで
世界中から愛されたわくわくさん。
しかし、彼の笑顔の裏に隠された
悲しみと苦難の日々を知る者は少ない。
この物語は知られざる
わくわくさんの半生を描いた
真実の記録である。
時は数十年前に遡る。
「わくわくさん。お電話です。」
若いADの男の子が駆け寄ってきた。
「誰からだい?」
「それが・・・またあの人から・・・。」
わくわくさんはADの反応を見て
電話口の相手が誰なのかを察した。
大きなため息をついてから
ADから電話を受け取る。
「お電話代わりました。わくわくです。」
「やあ。わくわくさん。
撮影は順調ですかな?」
電話口から聞こえてきた声は
やはり予想していた相手の声だった。
「ええ。おかげさまで。」
わくわくさんはワザと
事務的な口調で答えた。
「先日の放送も拝見しましたが
あいかわらず素晴らしい
パフォーマンスでした。」
「どうもありがとう。」
わくわくさんはソファーに腰掛けて
トレードマークのメガネをはずした。
「あなたはこの先、
日本の教育番組に名を刻む
偉大な存在になるだろう。
きっとあなたを見て育った子供たちは
あなたを一生忘れることはないでしょうな。」
「そう願いたいものです。」
素っ気無く答えたが、その思いに
偽りは無かった。
「しかし、あなたの活躍をもっと
見たいと思っているファンも多いのでは
ないでしょうか?」
わくわくさんはテーブルの上に置いた
トレードマークの丸めがねを眺めながら
サインをねだってくる子供達の
笑顔を思い出した。
あの無垢な笑顔こそがこの仕事を
するうえで最大のモチベーションだということは
いうまでもない。
「少なくとも私はそうだ。
わたしはあなたに無限の可能性を感じている。
あなたにはもっと活躍の場を広げてもらいたい。
そうすればきっと初代も安心して・・・」
「ザック」
わくわくさんは相手を制するように
言葉をさえぎった。
「用件を早く言ってくれ。」
わくわくさんは目を閉じて
相手の言葉を待った。
「日本代表の招集に応じてくれ。」
ザッケローニ監督は電話を持つ手に
力を込めて言った。
近年、日本サッカーのレベルアップは
目覚しいものがある。
フィジカルでは劣るものの、
スピードとパスワークで構築される
組織的なサッカーで
アジアチャンピオンとして君臨している。
しかし、世界の壁は高く、そして厚い。
世界で戦い抜くチームを作るために
ザックはあらゆる可能性を模索し、
ひとつの結論に至った。
わくわくさんのワントップ。
それがザックが出した答えだった。
日本が世界と対等に渡り合うためには
わくわくさんの力が必要だということを
ザックは見抜いていた。
長友のクロスに合わせるわくわくさん。
遠藤のスルーパスに抜け出すわくわくさん。
香川とのワンツーで切り込むわくわくさん。
本田とPKのキッカーでもめるわくわくさん。
日本代表のユニホームを纏い
ピッチを走るわくわくさんを思い描き
ザックは静かに勃起した。
「わたしの答えは変わらないよ。」
受話器から聞こえてくるわくわくさんの声を
聞きながら、ザックは硬くなった
自身のちんこを握り締めた。
かつて、ACミランを率いて
セリエAを制したちんこだ。
「今はわくわくさんとして
全力でこの仕事に打ち込みたい。
わかってくれ。ザック。」
突然、スタジアムから歓声が上がった。
ザックは顔を上げて目線を
メキシコチームのゴール方向に向けた。
どうやら岡崎がゴールを決めたようだ。
今、ザックの目の前では
コンフェデレーションズカップ三回戦、
対メキシコ戦の真っ最中だった。
ザックは立ち上がり
ベンチを飛び出した。
「大切な電話中なんだから静かにしてよ!」
ザックは握り締めたちんこに向かって叫んだ。
ザックのその声はちんこを通して
解説席に座る松木安太郎の
ヘッドフォンに送られたが
松木はマリオカートに夢中で
その声に気づくことはなかった。
代表の招集には応じない。
わくわくさんから返ってきた答えは
結局いつもと同じだった。
だがもちろん、ザックは諦める気など
微塵も無い。
笑点の歌丸師匠から受け継いだ
不屈のスピリッツはこんなことで
折れることは無い。
ザックはすでに切れている受話器を
おもむろにちんこにあてがい
つぶやいた。
「カテナチオ」
直後、日本代表のコンフェデ
終了を告げるホイッスルが
静かに鳴った。
「しつこいですね。ザック。」
ADの男の子はわくわくさんから
電話を受け取ると、軽く会釈をして
足早に楽屋から出て行った。
ここ数ヶ月、ザックからの電話が
毎日のように架かってくる。
毎回取り次ぎを求めてくるザックに
あのADの男の子もいささか
滅入っていたのだろう。
わくわくさんはバックから
携帯電話を取り出した。
着信件数37件
念のため、誰が架けてきたのかを
確認したが、表示されたのは
見慣れた名前ばかりだった。
ザッケローニ
ザッケローニ
グアルディオラ
ザッケローニ
ザッケローニ
ザッケローニ
ベンゲル
ザッケローニ
モウリーニョ
ザッケローニ
ザッケローニ
さだまさし
ザッケローニ
・
・
・
わくわくさんを必要としているのは
なにも日本だけではない。
海を越えた欧州サッカー界でも
彼の力は求められていた。
バルセロナは代替案だったネイマールを
獲得したことでしぶしぶ諦めたようだが
バイエルン・チェルシー・レアル。
新監督を迎えるこの三チームは
特にしつこく交渉してくる。
「番号変えるか・・・。」
ストレスの原因にしかならないのなら
むしろ解約してもいいとすら思った。
わくわくさんは携帯を閉じようとしたが
視界の端で捕らえたある名前に反応して
その手を止めた。
・
・
ザッケローニ
マンチーニ
ザッケローニ
さだまさし
ザッケローニ
アンチェロッティ
北川景子
ザッケローニ
ザッケローニ
さだまさし
ザッケローニ
さだまさし
さだまさし
さだまさし
さだまさし
・
・
・
・
どくん。
わくわくさんの心臓は
ひときわ大きな音を立てた。
体温が上昇し、じんわりと
手のひらににじむ汗。
わくわくさんは携帯の液晶画面に
映し出されたその美しい名前から
目を離せなかった。
『北川景子』
わくわくさんはすぐさま
リダイヤルした。
呼び出し音が聞こえてくる。
その音に呼応するかのように
心臓の鼓動が早まっていく。
わくわくさんは鏡の前に移動し
手グシで髪型を整えた。
鏡に映る自分の顔は
高揚で赤くなっている。
若者に最近人気だという
西野カナというアーティストの曲で
「会いたくて会いたくて震える」
という歌詞の曲をがある。
わくわくさんは初めて
その曲を聴いたとき
理解ができなかった。
だが、今なら少しだけその気持ちがわかる。
今まさに
押さえきれない想いが募り
わくわくさんの身体は震えていた。
初めての感情に戸惑いながらも
わくわくさんは嬉しそうに
電話のコールに耳を傾けた。
この先、
地獄の日々が待ち受けているとも
知らずに。。。
つづく。かもしれない。
















