
上下水道の共同化に挑む
【主旨】
長野県の市町村が上下水道の運営・維持管理を共同化し、人材不足・施設老朽化に対応する取り組み。
【3つのポイント】
1.広域共同会社の設立:長野県下水道公社が母体となり、2026年4月に「ウォーターサポート信南」を設立。南道管約1万6千カ所の更新・耐震化を担う民間委託(ウォーターPPP)方式を採用。
2.慢性的な人材不足:県内市町村の水道担当職員は全国的に9割が5人未満と極めて少なく、那市や飯綱町など複数市村が組合を設け58施設を一括で民間管理会社と連携する体制を構築。
3.国土交通省の方針:国土交通省は27年度よりウォーターPPPを推進。自治体に交付金を出す要件として上下水道管のPPP更新を求めており、同公社が市町3〜5年の契約で管理を担う見込み。
【総括・意見】
人口減少・施設老朽化が進む地方において、上下水道の広域共同化は不可避の課題である。PPP方式の導入で民間ノウハウを活用しつつ、公共性を保った安定経営が求められる。国の補助制度と連動させることで、他県のモデルケースになり得る。
【自治体業務処理の共同化を】
【主旨】
日本の公務員比率はOECD最低水準だが業務範囲は広く、自治体の人手不足が深刻化。共同化・効率化が急務。
【3つのポイント】
1.公務員比率と業務量の乖離:日本の公務員比率はOECDで最低水準の一方、業務範囲は広い。マイナンバーなど全国共通の事務は国・都道府県が処理する仕組みに移行すべきとの提言。
2.不要業務の廃止と独自施策への注力:自治体は不要な業務を勇気を持って廃止し、地域独自の施策に集中することが重要。新卒採用は早期選考など多様化を図るべき。
3.カスハラ対策と議会風土改善:住民からのカスタマーハラスメント対策に共通マニュアルを整備し、職員の精神的負担を軽減。議会の風土改善も同時に求められる。
【総括・意見】
自治体の業務効率化は喫緊の政策課題である。特に広島県においても、人口減少に伴う税収減と人件費・扶助費の増大が財政を圧迫している。国・県・市町村の役割分担を明確化し、共同化できる業務は積極的に統合する制度設計が急がれる。
【現代コミュニティ事情】
【主旨】
職場・病院などから遠い地域でも、住民が自発的に新型コミュニティを形成し、行政の補助を受けながら地域課題を解決している。
【3つのポイント】
1.自発的な地域活動の広がり:近所のボランティア活動をベースに、子ども食堂・見守りサービスなど多様なコミュニティが形成。コロナ禍を経て「新型コミュニティ」として発展。
2.行政との連携と公共補助:地域の活動は行政から税金を通じた補助を受け、公共組合が小学区単位・自治会を超えた広域でサービスを提供。26年度の委員会報告では地域包括補助金の活用が確認された。
3.持続可能性の課題:高齢化や費用の問題から、コミュニティの維持が困難になっている例も多い。担い手不足・新たな参加者の確保が課題となっている。
【総括・意見】
地域コミュニティは行政サービスの補完機能として不可欠だが、担い手不足と高齢化により持続性が問われている。自治体はコミュニティへの支援を制度化するとともに、若い世代や転入者が参加しやすい仕組みづくりを推進すべきである。
【 都道府県の財政硬直化】
【主旨】
全国の都道府県で人件費・扶助費が地方税収を超過し、財政調整基金を大幅に取り崩す見通し。来年度予算は削れぬ経費が1.1兆円増となり、税収増だけでは補えない状況。
【3つのポイント】
1.広島県の財政状況:広島県の税収増加率は▲1.0%(マイナス)に対し、財政調整基金増減率は▲68.3%と大幅な取り崩しが見込まれる。長崎・奈良などでも90%超の取り崩しが生じる見通し。
2.人件費・扶助費の膨張:26年度の地方予算案において、人件費と扶助費の合計が地方税収を上回る都道府県が増加。25年度比で総額1兆円規模の増加が見込まれる。
3.国債費の増大:財務省が試算した国債費は3年後に10兆円増と予測。金利上昇を反映した結果であり、地方財政への波及も避けられない見通し。
【総括・意見】
広島県を含む多くの都道府県で財政硬直化が急速に進んでいる。社会保障費の増大と税収の伸び悩みが構造的問題として顕在化しており、歳出改革・業務共同化・デジタル化による効率化を一体的に進める政策立案が急務である。
【給食の厨房 省人化急ぐ】
【主旨】
学校給食の現場で深刻な人手不足が続く中、調理員を3割削減できる食器・野菜洗浄機などの省人化機器の開発・導入が急速に進んでいる。
【3つのポイント】
1.給食調理員の不足と離職:全国の公立学校で給食業務の外部委託が増加。2010年〜23年にかけて外部委託比率が上昇し、調理・運搬・食器洗浄の各工程で人手不足が深刻化。高齢化・重労働による離職が後を絶たない。
2.省人化機器の開発加速:中西製作所の「食器洗浄システム」(10人の作業を1人でこなせる)や、アイホーの「野菜洗浄機」(上下からの噴射口で浮き食材も洗浄可能)など、学校給食特有の課題に対応した新製品が相次いで市場投入されている。
3.センター化とロボット化の推進:大阪府豊中市の「豊中市立池井学校給食センター」では1日1万3000人分の給食を生産する大規模センター化を実現。完全自動化・ロボット化に向けた実証実験も進んでいる。
【総括・意見】
給食現場の省人化は、子どもの食育と職員の働き方改革を両立させる政策課題である。県として、センター化・機器導入への補助制度や、栄養教諭・調理師の確保策を一体的に推進することが求められる。
【まちの未来図:埼玉県三郷市「読書日本一」進め求心力】
【主旨】
埼玉県三郷市が「読書日本一」を掲げ、図書館の整備・読書推進を通じた人口流出防止と消滅危機脱却に取り組む。
【3つのポイント】
1.「読書日本一」宣言と独自施策:市議会の議決を経て「読書のまち」宣言。図書館機能を核に、保育園・子ども高齢者支援施設等への図書コーナー設置を進め、2013年から図書館ネットワーク整備に取り組んできた。
2.交流育み消滅危機脱却:人口に割り当てる全国トップクラスの図書館密度を目指し、25年7月に姉妹都市「本の世界の舞台のまち」との協定を締結。アニメの聖地となる本のまちとして交流人口の拡大を図る。
3.増える図書館・都市の中核担う:全国の図書館数は04年の3,222館から24年度は約3,300館超に増加。一方、出版科学研究所によると書店は1万4,000店余にまで半減しており、図書館が地域コミュニティの核としての役割を強めている。
【総括・意見】
「読書日本一」という明確なブランド戦略は、小規模自治体が差別化を図り移住・定住を促す有効な手法である。広島県内の市町においても、地域固有の資源を活かした「まちのコンセプト化」施策の参考となる事例だ。
【まちの未来図:青森県五所川原市 タクシー空白地の足守る】
【主旨】
青森県津軽半島の五所川原市・金木地域でタクシーが空白となる中、ライドシェア「はいきたかなぎ」が官民連携で運行を開始し、地域の移動手段を確保している。
【3つのポイント】
1.タクシー空白の実態:金木地域ではタクシー事業者が23年3月に廃業し、タクシー0台となった。地域住民(約40カ所の施設利用者)が移動手段を失い、バス・鉄道でもカバーできない生活困難が顕在化した。
2.ライドシェア「はいきたかなぎ」の運行:五所川原市が国土交通省の支援を受け、24年10月から青森県初の自治体主導ライドシェアを開始。運転者は地元住民ボランティアが担い、本体運行は車両1台・地元の金木商工会が管理。2月は過去最高の約70件を記録した。
3.官民連携の課題と展望:送迎需要は高いが事業者の直接的支援は限られ、11%負担の採算改善が急務。五所川原市の取り組みは全国の交通空白地の官民連携モデルとして注目されており、国交省もライドシェアの新たなモデルとして位置づけている。
【総括・意見】
地方の交通空白地問題は、高齢化社会における生活インフラの喫緊課題である。広島県内の中山間地域・島嶼部においても同様の課題が深刻化しており、ライドシェアの官民連携モデルを参考に、県として制度整備・財政支援を検討すべきである。