各担当部署の皆さん連日の質疑有難うございました。
早速質問に移ります。


Q1:今回の土地信託事業は債務負担行為で73億の損失を計上しているわけですが、私も大阪市議をしていた頃全国の自治体の公有地信託事業で訴訟を行っていた6件中5件が大阪市の案件であり,1370億円を超える損失を議会で議論して参りました。
大阪市の判断は早かった!という意見もありますが,そこで私は大阪市外部監察報告書を基に数点質問をさせて頂きます。
大阪市外部監察報告書を使えば今回の広島県土地信託事業に関して振り返る事が出来ます。
各自の責任について確認します。


・信託事業終了後は、土地建物は広島県に返還される事になり、借入金債務が残る場合は受託者である信託銀行の管理が不当ではない限り信託法の規定により、委託者である広島県に引き継がれた。したがって景気変動等で事業が当初見込みと変わっても債務を引きつぐ制度であったという事で受託行に債務負担はなく、損益・配当に関しても責任は無いという事。


・述べたように旧信託法36条2項によって、受託者の受益者に対する補償請求権が規定されており、受託行はこれを根拠として立替金の支払い請求を行ったが、本件排除合意については大阪市が本件委託契約締結の当時から持ち合わせていた見解と考えるのは困難である以上、これが明記されなかった点につき、大阪市の責任を問う事は困難であると締め括っているので、これに関して広島県も同様と考えてよろしいでしょうか?

A:1
 委員が言われたとおり,排除合意とは旧信託法の適用をしないという合意で,契約時に景気変動リスクへの対応や借入金債務が残った場合の負担方法などを契約書に盛り込んでいなければ,旧信託法が適用され,全債務を県が引き継がざるを得なくなるというものですので,大阪市の事例と同様でございます。


Q2:まず、受託行に責任追及は出来ない、広島県の責任も範囲は限定的であるという事。それでは今回の争いを整理していきたいので、広島県としてなぜ訴訟なり早期終了といった判断を下さなかったのか、お答えください。


A:

本県の信託事業におきましては,多額の借入金負債が残る状況が確実な状況の中で,他の自治体と受託行による借入金の処理を巡る訴訟が行われていたため,その状況を注視し,県の負担を可能な限り軽くする方策を検討していたところであります。

他の自治体で争われていた訴訟6件については,平成26年度に最後の判決が確定し,全て自治体側に厳しい結果となったことを踏まえて,これらの訴訟を担当していた弁護士に相談したところ,訴訟を行っても勝つ見込みが乏しいという御意見をいただいたところであります。

また,仮に訴訟を行い敗訴した場合は,広島クリスタルプラザで試算いたしますと,約69億円の借入金債務に加えて,年6分の法定利息が請求されることとなり,裁判期間1年あたり約4.2億円の遅延損害金が発生することから,訴訟を行うことにより却って県の負担を増大させる恐れがあるため,訴訟を行う判断に至らなかったものでございます。

 

 また,早期終了の判断についてでありますが,信託事業開始後バブル経済の崩壊に伴い,地価が下落し,多額の借入金債務を抱える本県の事業において,借入金を上回る金額での売却は見込まれない状況にあったと考えております。

19年度に売却したと仮定した場合と比較して県の負担を約22億円圧縮できるものと試算されます。

Q2:兵庫県は裁判に踏み切った結果、遅利金利26億円を追加支払い命令に及びました。


平成19年度と30年度では22億円以上圧縮できると現段階では試算されております。大阪市外部監査報告書でもこのように記載があります。【過去を振り返り全ての要因を解明する事は各時点における経済情勢の大きな変化などの事情がある為に困難と言わざるを得ない。】この文章で示されるままのリーマンショック・失われた20年と呼ばれる中で難しい判断であった事と今回のタイミングだと思います。

 

大阪市では,6件の信託事業を行っておりましたが,事業の検証を行った結果,信託財産を売却することにより,負債を超える価格で売却が見込まれる事業と,負債が多額であるため,売却益による借入金債務の完済が不可能と考えられる事業にわけて処理方針が検討されたところです。
要はなんでも売却決定したわけではないという事です。

本県の広島クリスタルプラザについては,大阪のオーク200同様売却しても借入金債務を超える価格での売却が見込めず借入金債務の完済が困難な状況にあったものと思います。
大阪のオーク200は経営改善に取り組んだものの,銀行が借入金債務を立て替えることとなり,裁判に至ったわけですが,広島はそういった形にはなっておりません。

では広島クリスタルプラザにおける債務圧縮に向けて具体的にどのような取組をされてきたのでしょうか。お答えください。

 

A:2 

本県におきましては,大阪市のオーク200同様,借入金債務を上回る売却益が見込まれなかったことから,収支改善により借入金債務を可能な限り縮減するよう取り組みつつ,本県の信託事業の終了の仕方や残債務の処理の仕方を探るため,他の自治体における信託事業の訴訟の動向を注視してときたところであります。
 具体的な経営改善の取組といたしましては,建物の管理運用を担う信託銀行に対し,テナント確保の営業や賃料増額交渉における収入確保の要求を行うとともに,借入金利息の引下げにより17億円程度,修繕方法の見直し及び管理委託業務契約の見直しなどを強く要請し,経費の削減などを図ってきたところでございます。

しかしながら,借入金を信託期間満了までに完済できるような抜本的な経営改善には至らず,多額の債務が残った状況にあることについては,重く受けているところであります。

要望
圧縮効果は17億円とお聞きしました。
その上で【借入金を信託期間満了までに完済できるような抜本的な経営改善には至らず,多額の債務が残った状況にあることについては,重く受けているところ】という答弁がありましたが、監査報告書によれば【大阪市は受託者に過ぎないため、大阪市側から受託行に対して具体的な方策を提出し、その方策が不成功になればその責任が大阪市に転嫁される可能性もあり具体的な方策には消極的だった。】とある様に公的機関として手段が限定的且つ、信託事業は,一義的には都市機能の整備などの「まちづくり」を目的とした事業であり,お金儲けをする目的で開始したものではない以上、私は今回の広島県判断は正解だったと思います。

 

しかし、結果として多額の借入金債務を抱える結果となり,最終的には県民に負担いただくこととなります。

 

このことについては,信託事業の開始に当たって議決した県議会も,県と同様,反省しなければなりません。そして総括はすでに大阪市で同じようにされているわけです。
反省を今後の県政運営に活かしていくべきことは言うまでもありませんが,一方で,今できる責任の取り方についても考える必要があると思います。

 

企業の内部留保金が500兆円を超えているといわれる現在,米中貿易戦争による世界経済の急激な悪化などの不安から,投資が株式ではなく土地や建物などの現物に向かっております。

 

また,消費税増に伴う景気の落ち込みが懸念されており,一般に現在の不動産市況の好調も来年のオリンピック・パラリンピックまでと言われているところです。広島市内の賃貸オフィス需要に目を転じますと,空室率は5%を切る低い水準にあります。

 

こうした状況を踏まえますと,本県の信託事業を早期終了させ,信託財産の売却益を充てて清算する絶好のタイミングではないでしょうか。

県においては,こうしたことを念頭に,県民負担の最小化を図るため,この時機を逃さず,できるだけ高額で売却できるよう総務局長を先頭に一丸となって、最大限の努力をしていただきたいと思います。