釜石線沿線(3) (2019.8.11) | 旅の虫速報

釜石線沿線(3) (2019.8.11)

murabie@紫波郡紫波町です。

再びいい天気になりましたが、今までと違ってそんなに暑くない中、
7泊堪能した釜石をあとに、今朝は快速はまゆり2号に乗って
内陸を目指しました。
ここまで乗ってきた車窓の復習、内陸に伸びる釜石の市街が次第に小さく、
代わりに周囲を囲んでいた丘陵が相対的に大きくなり、市街は田園となって
そして山道となって陸中大橋のオメガカーブを経て仙人峠越えにかかり、
滝観洞の上有住からは下りにかかって、程なく周囲には丘陵に囲まれて
のどかな田園が広大に広がる遠野の領域へと進んでいきます。
疲れが出てうとうとしてしまったのですが、車窓にはのどかな田園と
ときどきは山道の風景が現れ、宮守が近づき眼鏡橋を渡っているらしい
ときに大きく広がる凛々しい山を正面に据えた谷あいの広大な風景をみて、
列車は宮守へ進んでいきます。

宮守駅に降りて、とりあえずめがね橋を実際に見てみようと、車窓から
見られた谷の方へ向かってみました。
駅前の線路と並行する道沿いには古い素朴な民家や商店が並び、さらに
並行する国道へ下りると、なだらかな丘陵に囲まれて小さい田園が広がる
風景となり、少し丘陵が道に迫ってきて渓流が寄り添うと、眼鏡橋は
国道と丘陵を一緒に跨ぐように、白い堂々とした姿を見せてくれます。

この白いめがね橋を大きく眺められるところに道の駅があり、他に
行くところがあったわけでもなかったので、次に乗る列車までの時間を
ここで過ごすことにしました。
道の駅として物産店で土産物も扱われていますが、キーテナントが
イオンがやっているホームセンターとスーパーを一緒にしたような店で
食料や飲料を安く調達できるのも長居には都合がいいかもしれません。
次の上り列車の時間までに下り列車が2本通過するみたいで、
道の駅の敷地の片隅にある、めがね橋を大きく見ることのできる園地に
設けられた四阿で休憩し、そこからステージ状の川岸の近くに下るのが
めがね橋を橋らしく見ることができる所のような気がして、
そこで待ち構えるとまずは4両編成の快速列車がやって来ました。
青空に白い雲が浮かぶのを背景にしつつ、演出なのか必要があったのか
わかりませんが、快速列車は橋の上を通過しながら、SLのように黒い煙を
青白い空に放ちながら通過していったのです。
もちろん写真におさめればちゃんと、銀河鉄道のように空に向かって
走っていきそうな絵になっていました。
そして安いペットボトルの飲み物を片手に日陰でしばらく待って、2両編成の
普通列車が通過して空へ向かって飛んで行くのを出迎えることもできました。

のどかな山里の道を宮守駅へ戻り、花巻行きの列車に乗り込み
一駅だけ移動して、次の岩根橋駅に降り立ちました。
ここではより山深く、駅前に数件の民家はありましたが集落という
レベルではなく、山道の途中といった風情の、待合小屋一つだけの駅です。
銀河鉄道のモチーフになったのは本当はこっちという話のある岩根橋を
見に行くべく、駅前に伸びる国道にそって歩みを進めると、それは程なく、
山並みに囲まれる形で道がカーブするところに姿を現してくれました。

道を進めばその岩根橋へとたどり着きますが、ここでは国道と線路がそれぞれ
カーブを切りながら接近するところで、SL銀河を大きく見られるところとして
JRからもお墨付きをいただいている撮影スポットであるということの
ようでした。ちょうどその地点にたどり着いたところで、あと少しで快速
列車かここでを通るというタイミングとなったので一応撮影はしたのですが、
確かに列車を大きく撮ることはできるのだけど、この地でなければならない、
めがね橋の風景を含めて撮ることはここででは難しいようでした。
ほんの少し進むだけで、国道側から眼鏡橋を渡っている車両の姿を
捉えることはできそうな感じではありましたが、それでもちょっと近すぎと
いった嫌いはある感じです。
一応橋のしたに下るダート道もあるにはありましたが、安全に立ち入れそうな
所だけでは少し橋が大きすぎて写真には撮りにくいかなといった感じでした。

ネットで検索してみてお手軽俯瞰なんて紹介されているスポットを尋ねて
みようと、国道にそってダラダラ坂道を上っていくも、道路を囲む森は深くて
線路のトンネルの上なんていうところを見つけられないくらいで、気が
ついたら峠を越して下り坂にかかってしまおうかといった所まで来てしまって
いたし、気を取り直して注意深く森の中の様子を見ながら戻っていくと、
確かに線路が足元に吸い込まれて行くところは見つけたのだけど、そこへ
至りそうな道は深い草むらになっていてちょっと無理そうな感じで、
ネット上の地図ではその道は少し先のところで再び国道に合流することに
なっているのだけれど、そのみちはやっぱり草むらに覆い尽くされていて
よく見れば動物の市街が横たわっていたりもして、さすがにこれは無理だって
いう結論に達したのでした。

結局、めがね橋の下に降りていくダート道の行き止まりだと思っていた
草むらの少し先に砂利の河原が少しだけ広がっているところがあって、
次の列車をそこで待ち構える決意をしました。
このめがね橋は森の中を流れ下ってくる爽やかな渓流の上に架かっており、
その渓流と本流が合流する地点の、草むらを掻き分けた先にあった河原で
快速はまゆりを待ち受け、めがね橋の上を昇って宇宙へ飛び出していくような
構図をなんとか手に入れることができました。

岩根橋駅に戻り、やって来た花巻行きの列車に乗って、山道を抜けてのどかな
田園が広大に広がるようになった中を進み、土沢駅に降り立ちました。
さすがにここまでくるとちょっと蒸し暑さを感じてしまいます。

土沢駅の駅前は広い道の周りになんでもない民家や商店が集まっている
感じでしたが、並行する裏通りに回り込むと、昭和から時が止まったかの
ように古めかしい建物ばかりが道沿いを固めていました。
そんな道は街並の中心へ進むとさらに高密度に、祭のような飾り付けさえ
されるようになり、古い街並の賑やかな雰囲気を存分に感じることの
できる街並となっていました。

街並を外れて高台へ出てみると、ササチョウという醸造工場があり、
醤油の臭いが強く漂ってきたりもしましたが、八丁土蔵というナマコ壁で
白壁の土蔵と、この地で生まれた画家であるらしい萬鉄五郎(よろず
てつごろう)という人物の記念館が並んで建つ領域がありました。
ここまでくると市街に集まる小さい建物が密集している様子を眺め渡す
ことができるような感じになってきました。
これらのさらに裏手には小高い丘陵が控え、舘山公園ということになる
ようでしたが実態は土沢城址ということで、建造物は残らず基本的には
芝生が広がる所でしたが、立体的にいくつかのステージが展開し、土沢の
丘陵と田園に囲まれつつ小さい建物が密集して賑わいを感じさせるような
街並を一望することができるところで、しばし足を止めてのんびりと過ごす
ことができました。

そんなすてきな風景をあとにしてから、SL銀河がこの街に近づいていると
いうことを思い出すという失態の結果、八丁土蔵の所まで戻ってきてから
街に響くSLの汽笛を聞くこととなってしまいました。
花巻行きのSLと交換する釜石行きの列車がやってきて街の中での線路の
軌跡を確認し、黒い煙を吐きながらその道を汽笛を鳴らして駆け抜けていく
姿をなんとか目に焼き付けることができました。

そしてなんだかんだ見所が多かったので結構時間ぎりぎりになってしまった
のを感じながら、市街の中心部からまっすぐ南下した所にある、
日帰り温泉施設もあるような所にある道の駅に一応立ち寄って、
そこで見つけた、ササチョウの味噌を使っているという味噌ソフトクリーム
なるものに飛びついて、食べ歩きしながら駅へと戻っていったたのでした。
甘い中にちゃんと味噌の風味が感じられる、なかなか見事な食べ物でした。

次に乗った上りの列車は快速であったせいもあってか、結構な混雑でやって
きました。
緩やかな斜面に農地が展開して緑いっぱいの風景となる中を疾走して、
溜池が寄り添う小山田駅を通過し、次の新花巻まで進んでいきました。
新花巻駅では無人駅扱いなので車掌が集札に当たるのだけど、あまりに
大量の下車客を裁かなければならないので予定通り遅延が発生しているような
感じだったし、ホームには釜石行きの列車を待つ大量の客が、それぞれ
大きなキャリーを引きずりながら行列を成しているという状態、さすがに
この時期だけの臨時でも改札をするようにしないとまずいんじゃないの
かしらとか感じてしまうわけです。

ここからさっき通過した小山田駅に一駅だけ戻るために、たくさんの客と
一緒に釜石行きの普通列車に乗り込みました。通常は1両と駅の時刻表に
記してあったけれど今日は2両でワンマンではない体制でやってきたという、
JRにわずかながら存在する良心を見た気がしました。

小山田駅は緩やかな丘陵が一応寄り添うけれど基本的には広大な田園に
佇む駅で、駅前には一応商店はあるようなけれど集落といった感じでは
なさそうな、小さい静かなたたずまいの駅でした。
駅裏にはすぐに、三郎堤という溜池の姿が見られるのですが、そこを
訪れようと思っても、水路で仕切られているせいもあって、訪れるためには
少し大回りをする必要がありました。
線路と並走する道路を少し新花巻方面に戻り、現れた遮断機のない踏切を
渡り、たんぼの畦道を進んで、たんぼの片隅にある神楽場というらしい、
昔この値が開拓されたときに住家を終われた主が暴れるのを、神楽を舞ったら
おとなしくなったという故事に因む、いくつかの石碑が片隅に並べられている
所を見つけることができました。

ようやくの思いで堤防の上に階段で昇ってみると、所々桜並木のある
舗装された遊歩道に囲まれて、大きな水面が大きく穏やかに横たわって
いました。
夕暮れが近くなった時間なので、角度によってはど順光のところとど逆光の
ところが現れるという写真に残すのがちょっとめんどくさい感じには
なってしまったのだけど、穏やかな水面を広く広げる風景をのんびりと
楽しむことはできた気がします。
さっき列車から降りた小山田駅の、丸窓を備えた駅舎の姿は、池の周囲を
半周したところで、草むらの向こうに確認することができます。水面も
どうやらこちらの方はちょっと推量が少なくなって後退してしまっている
感じがします。
でも小山田駅の裏手に当たるところには、割としっかりした三郎堤の
説明の案内板があったり、駐車場までも整備されていたりするから、
もっともっと多くの人に親しまれる存在になれる下地があるような
気がします。
遊歩道は一部一般の道路と重複するような感じになり、駅の反対側にも
いくつかの石碑が立つところと遊歩道の入口となるところがあって、
再び穏やかな水面にそってのんびりと散策することができ、最初堤防に
上った地点まで無事に戻ることができました。
どうやらここでは白鳥が飛来するところらしく、今日は全く姿を
見ることはなかったのだけど、そういう季節にまた来てみたいなと
強く思うことができたのでした。

あとは宿へ向かうだけといった感じなのですが、やって来た釜石行きの
ワンマンカーは、やはり大きなキャリーバックを転がして新花巻から
新幹線に乗ろうとする客を大量に載せており、車内放送でも下車する人は
一番前のドアへという案内がされるほどで、裁ききれるのかどうか、
門外漢ながら心配してしまったのですが、結局わずかに存在していた、
新花巻駅から乗車する客が開けた乗車用のドアに、後部車両に乗車して
いてここでで乗り換える客が殺到するのを抑える人は誰もいないという
状態になってしまっていたのでした。
やっぱりこの時期だけでも臨改は必要だなあなんて。

ここから先は地味にまだ乗ったことのない区間だったわけですが、
引き続きのどかな田園の中を走る区間となり、なんか森の中に突入したぞと
思ったら大きな川を渡るところだったりしましたが、最後は細い川を
渡ると周囲は一気に大きな住宅街へと変わっていき、若干高台にある感じの
駅から小さい建物の密集する花巻の市街を見渡せるような格好になっていって、
列車は花巻駅へ、新花巻駅でもたついた分だけしっかり遅延して
到着したのでした。

この余波で花巻駅での乗り換え時間も削られてしまいましたが、予定通り
東北本線の普通列車で夕暮れの田園風景の中を少しだけ北上し、本当は
花巻市内に泊まりたかったのだけどことごとく満室だったので追い出された
感じで、紫波中央駅までやって来たのでした。
当たらし胃液だということは承知していたのですが公共施設が充実している
ようで、駅の周辺には新興住宅地が広がり、予約したときの宿までの
所要時間が、断りがなければ徒歩の時間だと思うこちらと、車での時間だと
思う向こうのギャップのおかげで、最後の最後でまめだらけの足をさらに
痛め付ける結果となったのでした。
宿はいまどき冷房のない木造の日本旅館です。まあたまにはいいんでしょう。