遊佐、吹浦(2018.8.7)
murabie@象潟です。
宿側の都合で、昨日までとは違う宿に移動させられています。
なんか、松尾芭蕉一行が象潟に来たときもそんな感じのことがあったっぽく……
今日は昨日より鳥海山や、仁賀保高原の風車たちの姿はよく見られましたが、
空自体は昨日よりもどんよりと曇った感じでのスタートとなりました。
東京も今日は涼しかったというニュースでしたが、ここも猛暑日とは無縁の
相変わらずの涼しさです。
今日も少しだけ遅れていた酒田行きの列車に乗り、昨日見た車窓をもう一度、
小砂川から先の県境の海岸の風景を楽しみつつ、今日はさらに南下しました。
県境の海岸の風景は吹浦まで続き、その先は内陸部を進むようになりますが、
これが、鳥海山がとても大きくなって広大に広がる黄緑色の水田を見守っている
ようなスケールの大きい美しい風景となっていたのでした。
吹浦からの長い駅間を通り過ぎ、その次の遊佐駅で下車しました。
遊佐町の観光協会が取り仕切っているような感じの大きな建物の駅です。
遊佐の街を歩いて回るでもよかったのですが、無料のレンタサイクルを
借りた方がいろいろな所を見て回れるような気がしたので、受付開始まで
しばらく待って開始とともに自転車を借り受け、街なかに漕ぎ出しました。
駅のすぐ近くに八ッ面川沿いの遊歩道の入口があり、レンガで舗装され
周りにもいろいろな植物が植えられ、水底にもきれいな藻が育つ、中も外も
きれいな遊歩道を少しだけ進んでから、街なかの北部に多く点在する湧水を
探しながら自転車を進め、滾々と水を湧き出している湧水を見つけるたびに
少しだけごちそうになりながら、市街地の北を流れる月光川のほとりへと
向かいます。
大通りから路地に分け入ったところにある深山神社は、うっそうとした森に
囲まれた小さい神社でしたが、観光客向けの大小の湧水のほかに、地元の
人用なのか、何の工夫もない無骨な塩ビパイプから大量の水を吐き出し続けて
いる所もあり、ちょうど地元の人が大量に水を汲んで持ち帰るところでした。
境内の裏手は月光川に面し、その向こうには鳥海山の姿も、どんよりした
曇り空の下に堂々と控えます。
梅花藻のきれいな所があるらしいときいて、月光川の対岸に足を延ばしたり
ということもしたのですが見つけることができないまま、空からは体が
濡れてしまうくらいの小雨がばらばらと降り始め、大慌てでさっきの深山神社に
避難しました。風を伴って吹き付けてくるような雨だったので、大きな
建物の陰に隠れれば何とかしのげる感じだったのです。しかし境内の裏手に
のぞく鳥海山の姿は白く煙った状態になってしまいました。
雨の勢いが収まったところで自転車を再び漕ぎ出しました。
深山神社のあたりはいろいろな花の咲く畑になっていましたが、自転車を
川沿いの堤防に上げれば、白く煙った鳥海山に見守られながら、川沿いに
のどかな田園風景が広がるのを見渡すことができます。
堤防の上を東へ向かって自転車を進めればそんな風景が続いていき、
河原に公園が現れると、その中にまた湧水があったりしました。
このあたりに次の橋があり、続いて古く朽ちかけた橋もあり、このあたりは
おくりびとのロケ地だったといいますが、山と山の間から流れ来た川があたりに
のどかな風景を作るというだけだったら、ちょっとした地方にはよくある風景
でしかないような気もしましたが……
本当なら地図上で近くにあるように見えた、名前も気になった胴腹の滝という
見どころでも行ってみようかと思って、市街から東へ向かう道を進んでみました
が、だだっ広く開ける田園には強い風、それも向かい風が吹きすさんでいて、
思うように先へ進めない事態に陥ってしまいました。
こんな調子では目的地に着くことさえままならないだろうと考えて、胴腹の滝は
あきらめることにして、その代わり庄内平野から鳥海山の領域へ入って
急な上り坂を少し進んだところにあった宮山坂公園という所を訪れてみました。
公園とは言ってもようは、ちょっとした大きさのため池が、森の木々と頭だけを
出してきた鳥海山に囲まれて美しい風景になっているだけのところでした。
ここからの下りは爽快な道でした。田園地帯に戻ってから来た道とは違う、
市街の南東方向へ向かうような田畑の中の道を、追い風にも押されて爽快に
掛け下っていきました。
東西方向に伸びる通りと合流した所で、左手に控えていた丘陵の方へむかって
進み、レンガ造りの煙突が目立つ酒造所を見ながら、丘陵の足元まで
やってきました。
次の見どころはまた高台にあるのですが、ここから森の中を通っていくW坂
という道が地図上でも異彩を放っていたので、足を踏み入れることにしました。
距離を稼いで斜度を抑えている系統と思われ、立ち漕ぎや時には自転車を
押していく程度でも充分登っていくことができる斜度になっていました。
W字型の坂の最初の辺を上る間は、木々の間から走ってきた田園地帯が広大に
広がる様子を眺め渡すこともできて楽しく走れましたが、2辺目からはただの
森の中の道になってしまいます。桜並木であるという案内板はありましたが
この時期ただの広葉樹でしかなく、でも最初の辺を経験して距離感は理解できて
いたのでなんとか頑張って登っていくことができました。
W坂の出口はさっき通ってきた大通りと再合流する形になっており、そして
さらなる高台に見どころがあるためここからそこへ向かう道が分岐する格好に
なっていました。
もう少しだけ頑張って森の中に自転車を進めると、神社とも民家ともつかない
ような小さい建物が集まった集落が現れ、その中に古めかしい木造の鳥居や
寺院のように立派な山門が佇む、鳥海山大物忌神社という社などの古刹が
姿を現してきました。
大物忌神社の境内はコンパクトな感じで、限られた領域に重厚ないくつかの
古い神殿がうまく配置されているような感じになっていました。
隣には龍頭寺という、これまたコンパクトなお寺があり、拝殿のある土蔵、
本堂は古い木造だけれど本来山門の中にいそうな一対の金剛力士像のような
立ち位置にいる像が、本堂の入口を直接守っているシュールな境内に
たくさんの植物が雑多に植えられているような感じでした。
不思議な集落の中をさらに自転車を進めていくと、集落を抜けたところが
夜景スポットと銘打たれてはいたのですが、真昼のこの時間でも、要は送電線の
ために木々がすべて取り払われていて、下界の広大に広がる黄緑色の水田の
中に、松島のように所々民家や集落が現れているのを広々と見渡すことの
できる、爽快なパノラマが広がっている所で、苦労して坂を上ってきて
本当に良かったと感じさせてくれるような素晴らしいところでした。
すぐ近くには山本坊庭園という見どころがありました。いろいろな植物が
植えられている雑多な園地ではありましたが、大きな椿の木なども植えられて
いたりするところです。庭園自体は池を中心にして、その周辺や背後の丘陵の
斜面に、いろいろな物体や石や植物、選定された盆栽のような松の木などが
植えられ、絵画のように狭い範囲にいろいろな美しさが凝縮しているような
感じで、こんな庭園が無料で見られるならお買い得だなといった感じの、
しばらくじっとたたずんでいたくなるような素敵な庭園でした。
最後に大泉坊長屋門という史跡が、ただ単に大きく古めかしい木造の重厚な
建造物であることを見物したのち、帰り道は大通りの方を行くことにして、
森を切り開いたような明るい道を大きくカーブしながら爽快に下っていきました。
途中木々の間から下界の水田の様子が垣間見られるような爽快な風景が
見られましたが、下界の水田の中へ戻ってさらに西へ向かって進んでいくまで
一切ペダルの操作をしなくて済むような、自転車に乗ってきて本当に良かったと
思わせてくれる爽快な経験をすることができました。
そろそろ時間が気になるころ合いになってしまいましたが、距離的に近いと
思われる南鳥海駅を求めて、広大な水田の間を走り回る旅に出ました。
南鳥海駅へ向かって広大な水田を西へ向かえば、ちょうど追い風であることも
あり、引き続き爽快な自転車旅をすることができました。
南鳥海駅が近づくと民家が集まってきて集落が成長し始め、道の途中には
鬱蒼とした森の中に赤い鳥居の小さい神社が並んで存在するようなところも
あったりしました。
そしてさらに建物が集まってきた中に、鳥海山に見守られながら南鳥海駅が
佇んでいたことを確かめ、再び東側に引き返したわけですが、
今度は向かい風になってしまったのでちょっと大変な感じでした。
南北方向に伸びる通りを北上し、右手に常に鳥海山の大きな姿を見据えながら
だだっ広い黄緑色の水田の中を、時々立ち止まって写真を撮ったりしながら、
悠々と走っていったのでした。
やがて遊佐の街並みへと帰り着き、街なかでは主に八ッ面川沿いの遊歩道を
たどって駅へと戻ることにしました。遊歩道の起点は保全池の所となり、
池の上に赤い欄干のぼろい橋が渡されていたり、水路が複雑に入り組んで
いたりと、きれいな水のほとりの風景を演出してくれているかのような
園地をあとに、きれいに整備されながらきれいな水をとうとうと流す小川に
沿って自転車を進めていきました。
そして最後は普通に駅前に広がる市街地の中を走り進み、実は駅のすぐ近くに
佇んでいた大きな農業倉庫の姿もしっかりと記憶にとどめて、次の
列車に乗るためにちょうどいい時間に、駅へと戻ることができたのでした。
午後は鳥海山に見守られながら広大な水田の中を走る長い一駅間を列車に任せ
一駅だけ象潟方面に戻ったところにある吹浦駅に降り立ちました。無人駅で
ありながら大きな構内を持っている不思議な駅でしたが、駅前に広がる街は
複雑に屈曲する道沿いに重厚で古めかしい瓦屋根の民家が集まるような
感じの小さな町になっていました。
まずは語感に惹かれた丸池様という所へ向かうべく、市街地を抜ける方向に
歩みを進めました。
国道のガードをくぐると街並みは終わって鳥海山に見守られる広大な水田の
領域へ進むのですが、すぐにわたる牛渡川にはいかつい橋が架かり、近くに
鮭の監視所という小屋のような施設が佇んでいました。
道はそのまま、雄大な鳥海山に見守られる広大な黄緑色の田んぼの中に
進み、道案内に従って鳥海山の足元の丘陵へと向かうように歩いていきます。
丘陵の足元には鮭の孵化場であるらしい、小さい工場のような施設が設けられて
いました。施設の敷地であるかのような駐車場の中を歩いて孵化場に近づくと、
牛渡川は施設の入口を横断するように流れ、そしてその流れの中には、
きれいな水にしか生えない梅花藻という植物がたくさん茂り、水面の上に
出る部分には、たくさんの小さく白い花が咲いていたりしました。
水路はすぐ近くの小さい水門があるところで滝のように激しく人工の段差を
流れ下り、その先は山の木々の足元を通るような遊歩道を従えて、あまりにも
透明度の高すぎる大量の水をたくさん流してたくさんの梅花藻の花が見られる
きれいな流れを、遊歩道が途切れる杉の森の入口の所まで追いかけていく
ことができました。
水門の所からは森の中に進んでいく流れもでき、こちらは滞留している感じ
なので梅花藻もおらず、雑多な藻が繁茂している状態でした。
孵化場の裏手に回り込むような道は、ほどなく鬱蒼とした森の中へと分け入り、
すぐに丸池様は姿を現してきました。
鬱蒼とした木々に囲まれて静かに佇む小さな池でしたが、水の色は神秘的な
までに透き通った青緑色を示し、水温が低すぎるために分解が進まないという
枯れ木が湖の底にたまった状態になっているのが、何か水の中に神様的な
存在のものがあるということをたくさんの人に想像させたのだろうということが
なんとなく感じられる、神秘的な雰囲気の森と小さな池でした。
まったく同じ道、のどかな田園から素朴な住宅街へ進む道を引き返して、駅前の
複雑な街並みへと無事に帰りつき、今度は重厚な瓦屋根の民家の並ぶ通りを
進んでいくと、その道のどんづまりに、さっきも同じ名前の神社を訪れたような
気がすごくしてきたのですが、鳥海山大物忌神社へと歩みを進めていきました。
鳥海山の山体となる丘陵の足元に設けられた、割と広い境内に、大きくて重厚な
神殿が配置されている、ゆったりとした印象の神社でしたが、実は鬱蒼とした
森の中へ伸びている急な階段道を上った上部にまた別の神殿があるというのです。
急な階段道の参道をゆっくりゆっくりと上り詰めても、特に展望が開けたりは
しないのですが、上り詰めたところで鳥居に歓迎され、さほど広く無い
ステージに、拝殿とさらにその上に塀に囲まれながら丹の色の2つの神殿が
佇んでいるのを見つけることができたときには、とりあえず達成感を感じる
ことができました。
下界に下ってからは、住宅街のなかの細く入り組んだ路地を進んで国道へと
進み、そのまま前方へ進んでいきました。国道は大河となった月光川の河口に
港が建設されたような構造となっていて、対岸は鬱蒼とした松原が固めて
いましたが、国道を先に進んでいくと対岸の松原の裏手が見えてくるようになり、
長く連なる砂丘の上には風力発電の風車がいくつか並んでいる海岸線の
姿を眺めることができるようになっていきました。そして足元には、出羽二見と
呼ばれている名所らしい、円錐型の岩礁の上部に小さい赤い鳥居が設けられ、
川沿いに立つ別の岩礁との間に細い注連縄が渡されているようなものも
たたずんでいたりしました。
道が川沿いではなく海沿いになるとほどなく、歩行者向けの案内が乏しくて
不安になったのですが、十六羅漢という見どころへの入口が、海側にせり出す
岩礁の方へ遊歩道となって現れました。
鬱蒼とした松原の中の道を下っていくと、磯浜の海岸ならよくあるような、
ごつごつした岩礁がたくさん浮かぶ海岸線が現れ、特にその中へ足を踏み入れる
ことに対する障壁のない雰囲気の所へと誘われていったわけです。
十六羅漢という名前の由来になった、このあたりの熔岩に刻まれた仏像たちの
姿はとりあえず中心部付近の赤い岩盤にたくさん刻まれていたのですぐに
気づくことができました。それでも自分に見つけられた姿は聞いていた数よりも
少なめになってしまい。これで終わりになるんだったらこれほどつまらない
物はないなと感じながら、出口を求めて国道の面に近いステージへ登っていくと
そこには案内看板があり、どうやら羅漢が刻まれている溶岩はこのあたりの
ごつごつした岩礁に広く広がているらしいということがわかり、ならばと
今度は国道沿いの歩道へと足を進め、その下に広がるごつごつした海岸線を
上から見下ろす作戦に出ることにしました。なるほど、何も考えずに眺めると
見逃してしまいそうな、よく見ると確かに人物が刻まれているということに
気づくことができる、そんな岩礁を確かにいくつも見つけることができました。
寧ろここは、そういう仏像を自分から見つけに行くところだと考えておいた方が
充実した見どころになるものだなあと、強く感じることができたのでした。
歩行者向けの案内は不十分でしたが、車向けにはブルーライン経由で接続する
駐車場が丘陵の方に設けられて、十六羅漢と歩道橋でつなげられていて、
駐車場に面して飲食店つきの売店も設けられているという優遇ぶりでした。
十六羅漢をあとに国道を逆走し、今度は西日を受けて美しい表面の姿が
よりくっきりはっきりとした鳥海山の姿を見ながら、駅付近へと戻って
行きました。
道なりに駅裏にたどり着き、続けて西浜の方へ向かう道へ歩みを進めました。
道はまず、月光川をまたぐ大きな橋に差し掛かります。別の川も河口付近で
合流するようで、橋は2つの川を大きく跨ぎ越すような格好になり、その
水面の背景には、西日を受けてよりかっこよくなった鳥海山の姿を見ることが
できました。
ここから少しだけ進めば、西浜海水浴場を利用する客の拠点となるような、
ホテルや日帰り温泉などの大きな建物の集まるリゾート地のようなところが
歩いていた道の対岸に現れました。
行きたかった道の駅まではもう少し広い道なりに歩き進んでいく必要が
ありましたが、ここの道の駅は他とそう変わることなく、土産物屋や
産直農産品を売る店、そして簡単な飲食店の集まる程度の所で、昨日訪れた
象潟の道の駅と同じレベルをほかに求めてはいかんなと感じさせられました。
この遊佐町が日本で一番大きい郵便番号を与えられている町であったという
ことを掲示物が教えてくれました。
あとは特に飲食店に入ることも温泉に入ることもせず、来た道をそのまま
戻って吹浦駅へと帰り着き、昨日乗ったのと同じ便となる列車に乗り、
またも女鹿から小砂川までに点在する美しい海岸線の姿や、西日を受けて輝く
鳥海山の姿を楽しみながら列車に身を任せ、象潟駅まで帰り着きました。
移動させられた宿で少し休憩したのち、今日はもしかしたら夕陽がいい感じ
かもしれないと思い立ち、ついでに夕食と温泉もいただいてしまおうと、
昨日訪れた道の駅を目指して宿を飛び出していきました。
家並みの頭には夕日の色になってきた太陽の光球がのぞいていたので
これはいいものが見られそうだと心をはやらせながら速足で道の駅を
目指したのですが、それにもかかわらず到着してみると、地平線の上に厚くて
横に長い黒い雲が現れていて、ちょうど太陽が地平線ではなくその雲に対して
日の入りを終わらせたところでした。
太陽の光球を拝むことはできなくなり、辺りの厚い雲の端の部分だけが
オレンジ色に染め上げられ、そんな雲が広い空にわりと広範囲に
ちりばめられている、これはこれで幻想的と言えなくもない夕暮れの風景が、
道の駅の空を大きく彩っていたのでした。
展望風呂に入浴してみれば、沈んだ太陽が最後にその地点の雲だけを何かの
信号のように赤く染めている空を一瞬だけ見ることができましたが、
あとはただ、ほかの所と同じように夜になっていくだけになってしまいました。
夕食は今日もカキフライ、今日はついでに生ガキもつけるというぜいたくに出て、
ゆっくり夕食をとっていたら、象潟駅へ戻るバスに間一髪行かれてしまい、
結局帰りも予定通りと言えばそうですが、のんびりと歩いて宿に戻ることに
なったのでした。