ひたちなか、笠間(2018.4.22)
murabie@自宅です。
#この報告は2018.5.6 17:40に公開されました。
#報告が遅くなり申し訳ございませんでした。
異様な速さで通り抜けていった桜前線のあとを追うようにして、ネモフィラや
つつじなどいろいろな花が異様な速さで見ごろになったという知らせが入り、
年度頭初の仕事が慌ただしい中、いつもなら連休中が見ごろとなるはずだった
花たちを休日まで慌ただしく追いかける旅に出ることにしました。
早朝の東京をあとにすることは冬の旅でもよくあることだったけれど、
さすがに真冬とは違い同じ時刻でも明るくなり始めた快晴の空に見送られ、
夏日になるという予報だったので薄着で家を飛び出したけれどやっぱりちょっと
肌寒かったかななどと感じながら、今日は日暮里から常磐線方面へ。
朝日に照らされる下町にスカイツリーがそびえたつ朝の風景を車窓に見ることは
できたけれどあとはずっとうとうとしたまま、取手でいったん下車して、
取手に来ないと買えないときわ路パスを無事入手。
引き続き普通列車に乗り込み、つつじに彩られた住宅地や、まだ田植え前の
広大な田園、そしてまぶしいばかりにみずみずしい新緑をまとう中に紫色の
野生の藤が存在感を示す雑木林の風景にひょっこりと雉が姿を見せたりする
風景が車窓に映し出されていくのを、グリーン車の車内からのんびりと
眺めていきました。
この時期の車窓の美しさは決して花の色だけではなく、新緑の明るい
みずみずしい黄緑色にもあるのだなあと感じながら、明るい空のもとに
明るい緑を探し求めるように雑木林をかすめていく列車に身を任せ、
偕楽園の木々もまた鮮やかな新緑をまとっているのを横目に列車は水戸の
街へ、そして広大な田園の間に流れ来る那珂川を越え、勝田へと進んでいきます。
肌寒さの感じられなくなった勝田からひたちなか海浜鉄道湊線に乗り換え。
ネモフィラを見に行く客で混雑していることを覚悟しつつも、まだ
開園時間よりだいぶ早い便だったので、思っていたより楽な汽車旅を楽しむ
ことができることになりました。
列車は暖かくうららかな春の陽射しを浴びながら、住宅や日立の工場や
自衛隊の敷地の間をこまめに止まりながら進み、金上を過ぎるとしばらく林の
中へ進んで、次の中根が近づいたところで広大な田園のただなかののどかな
風景の中へと出ていきます。周囲に田んぼしかない中根駅で降りる客も案外
いるようで驚いていたら、どうも田んぼのただなかを走る列車を写真に
収めようとする人たちだったようでした。なるほどそういう楽しみ方もあったか
などと思ったのですが、今回は行きたいところが他にもたくさんあり、また
秋にコキアを見に来る時にでもじっくり沿線散歩してやろうと決め、今日は
引き続き列車に身を任せることにしました。
家並みが集まりだす辺りに現れる高田の鉄橋駅から列車は住宅街の中を
進むようになって、以前降りたことのある、味わいのある構内に何両か列車が
休む那珂湊駅へ立ち寄り、しばらく時間調整ののち、列車は新緑のあふれる
雑木林へ進みます。林に囲まれた草原にまたひょっこりと雉が現れたりする
雑木林の所々には薄紫の藤の花もみられ、列車は住宅街の中の高台へと
進んでいきます。平磯を過ぎて磯崎へ向かうと右手の素朴な住宅街の向こうに
海がありそうな明るい広大な空が広がり、そして前方に観覧車が見られるように
なると、列車は何にも囲まれない広大にどこまでも広がるような砂地の畑の
中へと躍り出ていきました。
終点の一つ手前の磯崎という小さな明るい無人駅に降り立ち、ネモフィラを
見に行く前にこのあたりの海岸を散策してみることにしました。
素朴な小さな磯崎駅の周りには、すき間を大きく開けながら民家が集まり、
すき間の畑にはいろいろな品種のネギが育っているようです。空も大きく広がり
うららかな日差しの下、駅前の集落を海へ向かい、地図を頼りに静かな細い道を
進み、最後に林を抜けるような下り坂を下ると、緩やかなカーブの先に穏やかに
波を立てる海の姿が現れ始めました。
海岸沿いまで坂を下りきると、青空のもとに穏やかに広大に広がる海には
鬼の洗濯岩状態に、水の中から斜めに頭を出す岩礁が沖合へまっすぐ伸びて
列をなし、同様の列が何列も並行に海に浮かんで、その間へ青い海が穏やかに
白波を立てる平磯海岸となっていました。地図上に見られ道標もあった白亜紀
地層という文字が気になって訪れたところではありましたが、そのことを示す
ような具体的なものがあったわけではなく、ただ小さい駐車場が設けられる
くらいには磯遊びの家族連れを集めている、じっくり磯浜と触れ合えそうな
美しい風景の海岸線となっていました。
海に触れあうような丘陵は暖かいところで発達するような常緑樹の林となり、
新芽を吹いて鮮やかな黄緑色を太陽のもとに示すこんもりとした林に
いろいろな色合いの緑色のパッチワークが作られている、明るい南国の海と
いった風景が海沿いに続いていました。
海沿いに少しだけ南下すると、道は廃墟のような何かの施設に海沿いの風景を
譲りながら、再び海沿いに出て引き続き幾筋かの岩礁が平行に海岸に現れる
ごつごつした海岸となります。近くには「清浄石」という文字の入った石碑が
たたずむものの、何か台座のような建造物があるのみで、まさか何かがここに
あって津波で流されたんじゃなかろうかなどと想像してしまいましたが、
後で検索すると確かに撮影した写真の中に、人工建造物のような真四角に
刻まれた岩礁が沖合にたたずんでいるのが確認できたなんていうこともあったり。
このあたりの地形の説明をする大きな看板も建ってはいましたが、その写真に
移る海岸は目の前の穏やかな海原とは別物と思わせるほどごつごつした姿であり、
きっと今は潮が満ちていて、引き潮の時に訪れるとまた変わって見えるの
だろうと理解することにしたのでした。
この場所はこれから訪れる予定の国営ひたち海浜公園よりも南側であり、
本来の目的地よりもさらに南下していった格好になったわけですが、ここからは
次の目的地に向かい来た道を引き返すように海岸線を北上し、青空のもとに
弓なりに遠くへ伸びていく、みずみずしいこんもりした丘陵に寄り添われた
磯浜をなぞるように北上していって、道がその給料の上へ上るように進むと
道に寄り添う丘陵の中に白い灯台が姿を見せ、海岸線は内陸の方へカーブを切り、
前方には阿字ヶ浦のなだらかな砂浜と、その奥の海岸に並ぶいかつい工場たちが、
おそらく目的地の海浜公園となっているなだらかな丘を背景としている風景が
見られ始めるようになってきました。
海岸の道はさらに明るくなり、ホテルのような大きな建物も含まれる集落が
現れ、そして海岸段丘の上にあるらしい神社へいざなう大きな白い鳥居が
道沿いに姿を現しました。
ここから酒列磯前(さかつらいそさき)神社への参道は急な上り坂となって
いましたが、辺りは一般的な神社の森とは明らかに雰囲気の違う、つやつやした
葉の常緑樹が鬱蒼と茂る森となっていました。
そろそろ暑さを感じるようになった晴天の下、ようやく海岸段丘の上へ
上り詰めると、森に囲まれるようにして小さいけれどいくつかの神殿を並べる
きれいな神社が鎮座している所でした。
以前訪れたことがある、波打ち際の岩礁に鳥居が立っていて激しい波に
打たれていたのを思い出す大洗の磯前神社との兄弟社であるといいます。
本殿から正門の大鳥居にかけ、うっそうとしたツバキなどの常緑樹の森は
参道の石畳を囲むようにしてさらに伸びており、神様が宿るという機能こそ
ほかの神社と共通とはいえ、南国のようなこんもりとした雰囲気の森の空気を
しばしゆっくり楽しむことができたのでした。
大鳥居の周辺はちょっとした集落となりましたが、その中に海岸沿いへ
下っていく坂道が開き、歩みを進めれば前方には、広大できれいな青い海が
接する白い砂浜の阿字ヶ浦と、その向こうにいかつい工場に寄り添われて、
常緑樹の自然林とみられるいろいろな緑がパッチワークを成している森が、
おそらく目的地のあたりに控えているのが展望できるようになって、道は
そのまま阿字ヶ浦の海岸沿いに広がるホテルや飲食店を含むようなリゾート地の
ような雰囲気をにおわせる街へと続いていきました。
震災後にできたかのような真新しい護岸の向こうには、通ってきた段丘が
こんもりしながら海へ突き出すのを右手に見て、大きく広がる青空と青い海に
面して広大な砂浜が広がる、さわやかな海岸の風景が広がるようになりました。
しばらく、強い陽射しを受けながら阿字ヶ浦の爽やかな砂浜の風景を楽しみ
つつ、さらに目的地へ向かって海岸沿いを北上していきます。暑さも感じられる
ようになった海には潮干狩りの観光客がたくさん集まって穏やかな時が流れる
ようになり、遠くから目的地が見えているのに案外長く続いた砂浜に沿って
さほど交通量の多くないだだっ広い大通りを北上し、やがて道にはこんもりした
森として目的地の国営ひたち海浜公園の敷地が接するようになります。
海岸沿いをそのまま北上して海浜口へ行った方が後々便利だったということに
後で気がつくのですが、いい加減な記憶をもとに内陸の方へ舵を切り、
だらだら続く緩やかな上り坂を、進めども進めども風景がほとんど変わらずに
暑い中疲労だけが蓄積するのを感じながら、時々野生の藤のきれいな薄紫色の
花たちに励まされながらひたすら段丘上へ上り、雌花をアンテナのようにつける
松の並木道をようやく、海浜公園の南口へと進んでいきました。
テレビで聞くネモフィラの評判からするとちょっと閑散としすぎているように
感じられた南口から、現場へは広大な園内を横断するように向かう必要があり、
強い日差しのもとさすがにもう歩くのは無理と判断し、園内のサイクリング
ロードを走るためのレンタサイクルを借り受けることにしました。
新緑の森の中に切り開かれた明るいサイクリングロードを、ひたすら現場へ
向かって自転車を進め、時折目印として機能しているサークルと呼ばれる
ロータリー上の交差点を通過していきます。ロードに面して所々に駐輪場が
設けられ、広場やアスレチック、バーベキュー場などを訪れるために自転車を
止めていくようなシステムとなっているようでした。
今回はとにかくネモフィラだけが見てみたくて、とにかく見晴らしの丘へ
向かって、うっそうとした森から楽しそうな広場の雰囲気が垣間見られるのを
感じながら、奥へ奥へと自転車を進めて行くと、やがて小高い丘の表面が
すべてうすい青色で塗りつぶされている目的地にたくさんの人々が集っている
のが遠くからでもわかるようになっていきました。
果たして現場の駐輪所に自転車を止めれば、真っ青になった丘にめぐらされた
遊歩道にたくさんの人が集う様子にはさすがに戸惑いも感じましたが、
かといって人々は滞留することなくそれなりに流れていて窮屈さを感じることも
なく、思いのままに立ち止まりながら、青く澄み渡る色の花をつける
ネモフィラの姿をいろいろな角度からのんびりと楽しむことのできる所でした。
斜面いっぱいに青いじゅうたんが敷き詰められているのを下から眺め上げたり、
小さな花の一つ一つをクローズアップしてみてみたり、坂を上っていけば
広がるようになる、観覧車を背景として丘がふもとまで空と同じ色の真っ青な
じゅうたんで敷き詰められ、その外側に菜の花の黄色やレンゲの紫、そして森林の
新緑のパッチワークが広大に広がる風景や、そのさらに外側にさっき歩いてきた
阿字ヶ浦の段丘まで見渡せる海の様子を見渡したりしながら上り詰めた
丘の頂上から、スイッチバックを繰り返すように斜面を下る遊歩道をたどり
ながら、まるで青いじゅうたんの上を飛んでいるかのような気分に浸ることが
できました。
下界に下れば再び空と同じ色のじゅうたんの敷き詰められた丘が見上げられ、
天上界から見渡された菜の花畑へ寄り道してみれば、青空のもとに青と黄色の
鮮やかな2色のじゅうたんが、さらに隣に広がるレンゲ畑へ寄り道すれば
今度は3色のじゅうたんが広がる風景にも出会うことができました。
人込みだけはどうにもならなかったけれど、それでも思った以上に青色一色の
世界を堪能できたような気がしました。
ネモフィラ畑をよく見れば所々青ではなく真っ白な花や紫の花、白い花びらの
端に紫の斑点を持つ花なども見つかりまた楽しく歩くことができたのですが、
空気を読まずにオレンジ色の花を咲かせる凶悪外来種にはきっとスタッフの
方々も苦労してるのかもしれないなあなんて思ったりもして。
こうして思った以上にたっぷりとネモフィラ畑の風景を楽しむことができた
満足感とともに自転車に戻り、お昼時が近づいてさらに暑さを増す中、ここまで
ほぼ半周してきたサイクリングロードの反対側を回って南口へ戻る方向へ
自転車を再び進め始めました。広大な公園の一角には湧水群のある静かな森が
あったり、うっそうとした森の中にヤマツツジの朱色の花が鮮やかに群生する
所があったり、西口の近くでは終わりかけてはいましたが辛うじてゴージャスな
雰囲気を作る八重桜のトンネルや、枯れかけてはいましたが水仙畑、そして
涼しげに噴水が上がる大きな池や、たくさんのテントが立つ広大な芝生の広場
などが見られましたが、あまりの強い陽射しにやられてさすがにさらに
立ち止まって他のものをゆっくり見ようという気持ちにもなれず、まあ次は
コキアの時期だなと心に決めつつ最初の南口へと帰りつき自転車を返却しました。
しかし、帰りには使ってみようと思っていた、阿字ヶ浦駅への無料シャトルバスは
南口ではなく海浜口に発着であるということに気が付き、今度は徒歩で広大な
ただひたすら新緑の森が広がる、歩けども歩けども風景があまり変化しない
園内を横断することになり、さらに暑くなる中を延々と歩き続け、ようやく
現れた、駐車場の向こうにたくさんの人が列をなして青いじゅうたんで覆われた
丘に登っているのを再び見られるようになった所が、海浜口ということでした。
海を望める展望台が近くにあり、眼下に広大に広がる段丘上にはスカシユリ
とやらが植えられているようで、荒涼とした丘に遊歩道がめぐらされている
ようでしたが、その向こうにはここに来る前に歩いてきた阿字ヶ浦の海の風景が
広がっていたのを少しだけ記憶にとどめ、真昼となった園をあとに、
待ち受けていたシャトルバスへと乗り込んだのでした。
座れはしなかったけど冷房が天国のようだったシャトルバスは、明るい砂丘の
間の広くなだらかな下り坂を、大きく広がる青い海へ向かって下っていき、
最初に歩いた阿字ヶ浦の砂浜に沿う道へと出ていき、穏やかで青い海水浴場の
砂浜をなぞって朝歩いた道を逆に戻るように進んでいって、あるところで
海岸沿いに集まる大きなホテルたちの間へ分け入って、少し鬱蒼とした
森の中の坂道を丘の上へ上って、小さい神社の周りに民家の集まる住宅街の
中へと進み、たくさんの人が小さいホームにたくさん集まっている阿字ヶ浦駅
へとたどり着きました。
昔走っていたらしい車両が展示されている素朴な小さい駅に折り返しの列車が
到着するとたくさんの客が吐き出され、入れ替わりにホームで待っていた人が
列車の中へと詰め込まれていきましたが、大型車の2両編成ならば思ったよりも
ゆとりのある車内となってくれました。ネモフィラが連休を外してくれた
おかげで、楽に楽しむことができたのかもしれません。
湊線の上り列車は住宅街と広大な砂畑の間の道をカーブを切って進み、磯崎を
過ぎると砂丘の畑の中をまっすぐにひた走り、平磯からは高台から住宅街の向こうに
青い海を見渡して走り、客の入れ替えのあった那珂湊の街を通り過ぎて、
高田の鉄橋からはさっきの際限ない砂畑とは趣の違う、丘陵に囲まれたのどかな
山里が広大に広がる風景が広がって、ひょっこりとつがいの雉が姿を現したり
するのどかな風景に大きな建物が加わっていって、列車は勝田駅へと戻って
いったのでした。
勝田駅から直ちに土浦行きの常磐線に乗り込み、次の目的地を目指して南下を
始めました。湊線と別れ、つつじに彩られる日立の工場のそばから広大な田園へ
進み、那珂川を渡ってその支流となるさくら川としばらく並走して、列車は再び
賑やかな水戸の街並みへと進みます。水戸駅で暫く停車するうちに列車には
どんどん客が乗り込んできてさすがに混雑してきましたが、偕楽園付近の新緑に
埋め尽くされるような風景から赤塚あたりの住宅街、そしてその後は所々に
集落の見られる広大な田園の中を進むのどかな車窓が展開していきました。
目的地へ向かう水戸線の列車に乗り換えるために友部で下車しましたが、
水戸線の列車はしばらく待たなければならなくて、水分と食料の補給のために
市街地へと出てみましたが、駅裏に大きな工場が控え、駅舎も真新しかった
けれど、特に見どころもなさそうなどこにでもありそうな、民家と飲食店、
時々銀行やスーパー程度の大きい建物が姿を現す街が広がるのみでした。
駅へ戻り、調達した昼食を食べながら水戸線の列車に身を任せれば、列車は
山並みに囲まれて起伏に富みながら広がる田園の中に時折現れる集落を
縫うようにしてひた走っていきました。
たどり着いた笠間駅は、北へ延びる大通りが駅前に直接乗り入れてくる感じの
機能的なつくりでしたが、街自体は日曜の午後というのに賑わいがあるわけでも
ない、静かな雰囲気の漂うところでした。大通りを避け、つつじの山へ向かう
最短ルートと思われる細い斜め北東方向の道へ進めば、ここもどこにでも
ありそうな素朴な住宅街の庭にところどころいろいろな色のつつじが鮮やかに
花をつけているようなところでした。
部活帰りの中学生がやたらたくさん自転車で通りがかってきましたが、細かった
道が南北方向の大通りに合流すると、道に面して中学校がたたずんでいました。
校地は白い土壁のようなもので覆われ、その上に乗る円筒形の河原はきっと
笠間焼なんだろうなと想像しながら、所々大量の花を密生させて鮮やかな
つつじの木が姿を見せる道を進みます。隣の小学校を含めた広大な敷地を
持つ学校は、思った通り藩校由来のものであるようです。
思ったより長く感じた大通りが、笠間稲荷へ続く賑やかそうな通りと交差した
辺りで、つつじまつり会場という道案内が、街並みの背後に控えていた山の
間へと上り坂を伸ばしていました。道を少し進むと、大石邸跡という小公園状の
敷地に大石内蔵助の立像が逆光を浴びている史跡と、何やら美術館のある
辺りで、正福寺という山寺の入口が口を開きます。
参道へ歩みを進めると、うっそうとした森林に囲まれた薄暗い雰囲気の中に
ありながら、急な階段道に寄り添うようにしてすでにたくさんの色とりどりの
つつじの花が咲き誇り始めていました。いろいろな品種が入り混じっている
ようで参道はいろいろな華やかな赤色で彩られ、中にはつつじの花と相似形
なのだけれど大型の花をつけるシャクナゲも入り混じり、さらにゴージャスな
雰囲気となっていきます。
森の中に静かにたたずんていた小さな正福寺のお堂を過ぎても、山頂を目指して
急な階段道はさらに続いていき、見上げる山の斜面には桃色、紅色、朱色、
白色など様々な赤系統の色のつつじの花で埋め尽くされる燃えるような領域が
広がるようになりました。
この時期だけ設けられる料金徴収所を過ぎて、さらにあでやかなつつじの花が
大量に咲き誇る階段道を登っていけば、低くはなったけれどまだ暑さを
感じさせる強い陽射しの中に、大好きな朱色のヤマツツジを含むいろいろな
色のつつじの花弁がさらに明るい色を呈して、下界を振り返れば鮮やかな花々に
彩られるように少しずつ街並みの展望も広がる兆しを見せてきます。
そして相変わらず続く急な階段道の周辺には鮮やかな花だけでできた森のように、
朱色や赤色、深紅や桃色、赤みを帯びた白や真っ白など、さまざまな色の
花弁が埋め尽くす華やかな領域が広がり続けます。
やがて鮮やかな森を抜け、さらに山頂まで盛り上がる尾根の上に出れば、
見上げる斜面がたくさんの真っ赤な花をつけるつつじに覆われ、そして山頂を
目指して最後の上り階段を上ると、斜面をいろいろな色、いろいろな大きさ、
いろいろな密度の赤い花で埋め尽くされた山並が、
下界の街並みの展望を囲むように広がるようになっていきました。
だいぶ疲れの溜まった足を引きずるようにしてようやくたどり着いた山頂は
小さい芝生の広場となっていて、常設の売店だけでなくつつじ祭りの会場として
いくつかの露店も出る中、周囲はやはり鮮やかなたくさんのつつじの花に
囲まれ、たくさんの人々が集う楽しげな空間となっていました。
辺りのつつじの木の中には一つの株に2種類の色の花がついているものも
あったりして、どのような仕組みなのだろうと不思議に思ったりも。
登ってきた道の方向の高台の縁は展望台のようになり、眼下の斜面にたくさんの
色とりどりのつつじの花を咲かせながら、それを額縁の一部とするかのように
山並みに囲まれて広がる笠間の街並みを展望することのできる素晴らしい
所になっていました。売店の屋上に設けられた作り付けの展望台に登れば
そんな華やかな展望がさらに大きく広々と広がりました。
かなり疲れてしまっていて、しばし笠間梨のソフトクリームなど食べながら、
すっかり熱くなってしまった体を冷やしながらしばらく四阿でじっとする
ことになったのですが、広がる展望の中には笠間の街だけでなく、田園や、
新緑のパッチワークがみずみずしい山並みたちにも囲まれていて、華やかな
展望をしばし存分に楽しむことができました。
山頂の園地を囲むようにして二重に伸びる遊歩道沿いにもたくさんのつつじの
花が咲き誇り、のんびり周回するように歩いたり、またさっきとは違う出口を
目指して山を反対側に下るような階段道を歩んだりしながら、いろいろな色を
呈して咲き誇るつつじたちが道沿いや斜面を埋め尽くす華やかな風景の中に
しばしどっぷりと浸りつつ、山影のようなところにひっそりと設けられていた
第2ゲートへと下っていったのでした。
園地をあとにすると始まる帰り道は、さっきの道とは違ってうっそうとした
薄暗い森林の中の下り坂となりました。道の途中でつつじ公園の一部が
飛び出してきたかのように、小さいお堂を囲んで華やかにつつじの花が咲く
一角があり、そこには坂本九の上を向いて歩こうの歌碑がたたずみます。
さらに少し薄暗い森の中を下ると戦時中に坂本九が疎開して住んでいたという
小さな建物が、かなり痛みの激しい状態の姿を森の中に示していました。
残すんだったらもっと手入れをしてあげないとかわいそうだな、などと
思いながら、気が付けばだいぶ夕暮れの雰囲気が強く感じられるようになった
ふもとの街へと帰っていきました。
人通りもだいぶ少なくなったのを感じながら、最後に笠間稲荷へお参りして
行くことにして、東西方向へ延びる賑やかな門前町へ歩みを進めました。
小さな商店や飲食店たちが集まる道の路面はタイルが張られ、道標となる
標柱の上にはいろいろなタイプの笠間焼の器が乗せられ、それらの足元には
つつじやネモフィラが息づく小さな花壇が作られていたりして、人通りは
多くないのに、賑やかな雰囲気を感じさせてくれます。
そんな通りに面して大きな赤い鳥居が立ち、境内に入ればコンパクトな仲見世
通りを経て、コンパクトな敷地にそれなりの大きさの神殿を持つ笠間稲荷神社
がたたずんでいました。大きな神社ではないけれどきっと大事にされて
いるんだなと感じさせてくれる境内の中には、まさに花盛りとなっている
藤棚に薄紫の小さな花がたくさんぶら下がっていたのでした。
そんなわけで稲荷神社の近辺は賑やかそうな雰囲気をもつ街となっていたの
ですが、駅へまっすぐ伸びる南北方向の大通りへと入っていくと、広い道幅が
却って寂しさを強く感じさせてしまうような、車さえほとんど通らないような
静かな街となり、歩き進んでも風景が変わっていかずに時間だけが過ぎていく
かのような、午前中にも味わった感覚に再び陥りながら、夕暮れの笠間駅へと
帰り着き、しばらく待ってやってきた水戸線の列車に乗り込んで、起伏に富んだ
山里に夕暮れが色濃く訪れた車窓をしばし眺めて友部駅へ。
そして少し待てば特急が来るようだったけれど、指定席はすべて売り切れという
アナウンスが流れて、最後くらいゆっくり帰ろうと、帰りも普通列車の
グリーン席を確保し、すいている車内でのんびりと、夕日が沈もうとする山里の
風景を楽しみながら過ごしたのでした。