浄土ヶ浜(2008.8.20) | 旅の虫速報

浄土ヶ浜(2008.8.20)

murabie@岩手県宮古市です。

去年の夏に訪れた、南三陸海岸の旅の続きとして、今年の夏は
北三陸を訪れたいという希望を叶える旅に出ました。
厳密に昨年の続きとするなら大船渡経由で入るべきなのでしょうが
時間的にも厳しいので、新幹線と、盛岡から今まで乗ったことのなかった
山田線を経由して宮古に入ることにしました。

現地の天気予報があまりよくないことが気がかりではありましたが、
気温も最高で22℃とのことだったので長ズボンを引っ張り出したわけです。
新幹線に乗るまではもう、暑くて暑くて。
天気も北上すればするほど悪くなりそうな感じだったので、どこまでもつのかな
ということも興味の対象となりましたが、意外にも東北南部までは快晴に近い
状態、岩手県に入ってもそこそこいい天気で、盛岡に近づいてようやく黒い
雲が攻めてきたといった感じでした。

天気がもったのはここまでで、盛岡で山田線の列車に乗り換えたらすぐに
雨模様となり、車窓にほぼ常にうっそうとした森が広がり、森の中に紛れる
ように流れる閉伊川の渓流が時折山並みを深く削ってつんつんとした杉木立の
急峻な丘陵を形成するような、この上なく山深い車窓も、雨に煙ってしっとりと
したものになって延々と展開していきました。

昼過ぎに宮古に到着しました。
宮古には高校生の頃に宿泊したことがあったはずなのですが、どうもその時の
思い出というか面影がよみがえってこなくて、あの頃は列車に乗ること
ばっかりであんまり街とか見てなかったのかもなあなどと思ったりもしながら、
改めて街をさまよえば、2段くらいに屈曲するメインストリートはどうってことの
ない程度の街並みでしたが、背後を小高い深緑の丘陵に守られて、時折古い
木造洋館や蔵が紛れ込んでいたりする街並みは、歩いていて楽しさを
感じるものでした。

とりあえず今日のところは残された時間は長くなかったのですが、やはり20年
近く前に訪れたことのある浄土ヶ浜の遊覧船に乗りに行くことにしました。
街なかからバスに乗れば、バスはまず港へ向かって進み、港に対峙する
ちょっとした街並みの中の細い道をこまめに曲がりながら進み、そして角力浜
(すもうはま)というところで丘陵に囲まれて広がる港の全貌を望んだ後は、
その背後の丘陵に上って森の中を走るようになり、遊覧船乗り場の最寄の
バス停も森の中、一瞬切れ込む谷の底に海の姿の垣間見える場所となります。
この路線自体も昔乗ったはずなのですが、なんだかはじめて乗った路線の
ような新鮮さが。

これまた通ったはずなのになぜか新鮮な、森の中の階段道を降りて、深緑の
丘陵に囲まれた湾にある船着場から遊覧船に乗り込んで航海に出れば、
さすがに記憶にも残っていた、うみねこパンを与えることによる餌付けによって、
今日も大量のウミネコたちが船についてくるように、時折曲芸的な飛行を
披露しながら飛び交う中、白くてごつごつと複雑な形に侵食された巨岩が
海岸線に伸びるように配置される浄土ヶ浜や、地質が異なって黒っぽい岩盤が
やはり激しい波によって侵食されてたくさんの洞窟が穿たれ、また犬の頭の
ようなものを含む巨岩なども浮かぶ姉ヶ崎までの海岸線を、飛び交うウミネコ
たちにいいところを邪魔されながらも何とか、楽しむことができました。
しかし当時の記憶にもなかった今日の新しい体験として、雨の降る荒天のもと
とにかく波が荒くて、船が激しく揺さぶられたということがありました。
上下にも左右にも、時には倒れるんじゃないかと思うくらい大きく揺さぶられ、
さすがに軽い船酔いのような感覚に陥ることになりました。

船着場に戻って少し休み、そのまま田老に抜けてしまった20年前には訪れ
なかった、船着場の周囲を散策しました。
海に筋のように伸びる丘陵をトンネルでくりぬきながら、海岸沿いに続く
遊歩道は、沖の岩盤と同じ白茶色の岩盤の上に深緑の森が形成される
崖のふもとにのび、灰色の空のもとにありながら近くでは深い青色を保つ
海が時々波を寄せてきます。
景観のハイライトは奥浄土ヶ浜で、白茶色の砂利が敷き詰められる浜の向こうに
海へ向かって一列に伸びていく、ごつごつと侵食された同じ白茶色の巨岩が
美しく、灰色の海の上に整列していました。
この荒天でもそこそこ美しく、岩盤の色のせいか明るく見えていましたから、
これで晴天だったならものすごい絶景なのだろうな、ということは容易に想像が
つくような気がしました。

遊歩道はさらに、丘陵をもう一つくりぬいて、裏側の蛸の浜というところにも
続いていました。岩盤の色は変わって黒っぽくなり、浄土ヶ浜とは違う落ち着いた
雰囲気を醸し出していましたが、入り江の奥の斜面にちょっとした集落が
敷き詰められてその上を高い橋が跨ぎこすのに見守られつつ、いくつも洞窟の
穿たれた海岸に囲まれた入り江に断続的に波が寄せるのを、しばしの間
楽しむことができました。

荒天のもととはいえ20年前よりははるかに深く浄土ヶ浜の風景を堪能し、
今度は天気のいいときにまた来ようと心に決めつつ、宮古に戻るバスに乗り、
途中の港にある、シートピアなあどという、道の駅を併設した物産館のような
所に立ち寄っていきました。
周囲は港だから、岸壁に立ち尽くして、周囲の海や湾の奥に広がる素朴な
漁港の街並みを眺めたりすることもできるのですが、雨もやまないので結局は、
建物の中ですごす時間が多くなってしまいました。
売店ではもちろんみやげ物や名物の海産品の類も売られるわけですが、
地元産の野菜もかなり安く売られていて、ミニトマトだの梅干だの思わず
手が出てしまいました。

そんなわけで最初の宮古での夜を迎えたのですが、明日の天気予報は
どうやら1日じゅう雨らしく……旅に出て宿にこもりっきりなんて今までなかった
気がしますが、そうせざるを得なくなったらどうしよう……