「こりる、こりない」という言葉があります。

 「失敗にこりたから、もうしない」とか「痛い目にあったのに、こりない奴だ」などという風に使いますよね。

 私は、人には「こりる事が出来る人」と「こりる事が出来ない人」がいると思っています。

 経験した失敗や悲劇に後悔して、もう二度とその経験をしない様に出来る人が「こりる事が出来る人」。
 何度も何度も失敗や悲劇にあっているのに、また同じ経験をしてしまう、あるいは同じ経験をしようとしてしまう人が「こりる事が出来ない人」です。

 これは恋愛でもあります。
 経験から「二度とああいうタイプとは付きあわない」と心に決めて、それ以降はまったく違うタイプの異性と交際する人もいれば、
 「ああいうタイプは、もうコリゴリ」と後悔したはずなのに、また同じタイプの異性と交際してしまう人がいます。
 
 「失敗や敗北や悲劇の経験をその後に生かせる人」と「失敗や敗北や悲劇の経験を繰り返してしまう人」です。


 「こりる事が出来る人」の方が優秀の様に見えますが、
 人間はそもそも「こりる事が出来ない」ものですよね。
 人類は大昔からいろんな悲劇や失敗や不幸を経験してきましたが同じようなことを繰り返しています。
 
 「ナゼ、こりないで繰り返すのか」という理由はアレコレと考えられると思いますが、
 不幸や失敗や悲劇が起こるかもしれない危うさがあっても、人はその危うさと背中合わせでしか幸せを見つけられないのかもしれませんね。
 「不幸」があるから「幸せ」を感じられる。悲しみや不幸があったから、幸せをありがたいと思える。
 誰かの不幸のおかげで幸せな人がいる。
 幸せと思いたいから不幸も作る。
 だから何度も何度も「不幸」「幸せ」「不幸」「幸せ」を繰り返すのかもしれません。
 
 
 恋愛で、こりる事が出来ない自分をダメな人間だと思ったり、失敗を繰り返すことに悩んだりする女性は多くいます。
 「またろくでもない男と付きあってしまった」とか「いつも都合の良い女だ」とか「またヤられて捨てられた」とか「いつも同じような男を好きになってしまう」とか「また重いと言われてフラれた」「いつも自分の想いが伝わらないでフラれる」「いつも相手に合わせてばかり」「いつも素直になれない」などなど、様々な状態の癖がある「こりないオンナ」がいるものです。
 
 そんな女性の多くは繰り返す自分をダメな人間だと思ったり、恋愛が下手なのだと思ったりするものです。
 人は嫌な思いはしたくないと思うものですから、繰り返す自分を変えたいと思うのも当然です。

 それでも「こりる事が出来ない」。

 それは、自分が繰り返してしまう事の中にしか「幸せ」が無いからかもしれません。
 どんな悲しい思いをすることがあるとしても、その生き方でしか人を愛せない。そのやり方でしか人を愛せない。失敗と決まるまでの時間には「幸せ」があるのだから、「今度こそは正解」と思いたい。
 
 「こりる事が出来る人」は「今度こそ正解」とは思わないのですね。ハズレるかもしれないクジは何度も引こうとはしないのです。
 「こりる事が出来ない人」はいつかは当たると思う人。ハズれるまではハズれることがある事に気づかない人。
 
 「いつかは当たる」「ハズれがある事に気づかない」なんて「愚か者」に見えるものですが、
 「愚か者」と言われようとも、「そのクジの中にしか当たりが無い」「その中にしか幸せが無い」のだとしたら引き続けるしかないのです。
 自分を変えられないのなら、
 その生き方にしか幸せが無いのなら、
 ハズレの繰り返しでも、いつか出てくるかもしれない「当たり」を引くしかないのです。
 「ハズれになる男」はいっぱいいますが、世の中には「当たりになるオトコ」もいるのです。 
 実際に、世の中には当たりを引いている女性もいますしね。

 不幸を繰り返しても、自分が幸福を感じられる形がそこにしかないのなら、その生き方をするしかないのです。
 どんなに不器用でも、そうやって人を好きになるしかないのです。その結果の幸せを信じるしかないのです。
 

 ただ、私は恋愛で「こりようとする事」「変わろうとする事」を否定はしているのではありません。
 良い変化をすること、経験を生かすことはとても大事なことです。
 しかし、変わっても、賢くなっても、生き方がうまくなっても、その人の幸福の基準と合致するとは限らないということです。

 こりない人類も、長い歴史で何度も何度も不幸や失敗を繰り返したことで、ほんの少しは賢くなり、ほんの少しは改善をしてきました。
 こりない人も、こりないなりの成長があるのです。

 恋愛というクジは引いた瞬間には当たりかハズレわからないものです。
 恋愛というクジは、自分で「当たり」か「ハズレ」に変えることも出来るクジです。
 ほんの少しでも自分を改善することが出来れば、「こりない恋愛」の形でも、チョッとは早く「当たりのクジ」に変えられるかもしれません。