【羽生結弦vs.ロシアバレエ】 | 村の黒うさぎのブログ 

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大自然の中で育って、都会の結婚生活へ。日常生活の中のイベント、出来事、雑感を、エッセイにしています。脚色はせず、ありのままに書き続けて来ました。

 

最終滑走に、羽生結弦が登場する。長身で細身の彼が氷上に佇み、ポーズをとる。それだけで、他の選手を寄せ付けない、高い演技力のオーラを感じとれる。

助走をして、四回転トーループ・四回転サルコーの単独ジャンプとコンビネーションジャンプを、次々に決める。
...彼の世界感の中で、紡ぎ出されるストーリーは始まっている。
首に幾重にもかけられた装身具-ネックレスが、よく似合う。衣装・音楽の意匠と共に、技術力、演技力が結集した、彼の世界に魅了される。
-羽生結弦は天才だ-彼に魅せられている私は思った。
夢見る様な羽生結弦の世界の四分間が終わった。四回転半以外は、ほぼノーミスだ。
羽生は全日本選手権大会に優勝して、2022年北京オリンピック出場が決定した。


「4回転プラスバレエ」と称される、今日のフィギュアスケートである。
フィギュアスケートは、技術面・芸術面共に、年々レベルが上がり続けて来た。
「何種類もの4回転にプラスして、バレエである」と言われる程、今日のトップスケーターの演技はハイレベルだ。

これ程目を奪われるフィギュアスケートに対して、本家本元のバレエの方が、かすんで見えはしないだろうか?
私は、そんな危惧を抱いて来た近年だ。

フィギュアスケートとの比較の意味で、今回、ロシアバレエのYouTubeを観ることができた。

バレエ  マリインスキー・バレエ団
公演目録 プロコフィエフ作曲 組曲「ロミオとジュリエット」
指揮   ヴァレリー・ゲルギエフ
楽団   マリインスキー劇場管弦楽団
会場   マリインスキー劇場       
                 2013年上演

舞台は、絢爛豪華な芸術劇場である。YouTubeで観ても、贅沢な気分に浸れる演出がなされている。
上演時間約二時間三十分の間、「ロミオとジュリエット」の演劇世界は展開される。

まず、前奏曲が奏でられる。前奏曲には、続く舞台への高揚感があり、心のボルテージが上がる。
開幕前に、道化達が上手から現れ、おどけた姿で駆け巡る-
幕が上がる。拍手を伴い、舞台そでからプリマ(女性主役)が軽やかに登場する。
プリマは腕、トゥ(つま先)、全身でと、その動きをあますこと無く表現する。
淡いピンクのロングドレスが映えている。

大掛かりな舞台装置と、数々の小道具がセッティングされている。
コール・ド・バレエ(群舞)の演技が展開する。
コール・ド・バレエが、様々にデザインされた衣装をまとう様は、全体として豪奢にして壮麗だ。
やがてプリマは、コール・ド・バレエの前面にぱあっと華やかに踊り出て、観客を魅了させる。

各々のダンサーを見てゆく。
舞台のダンサー達は、その顔立ちは端正で、均整のとれたスレンダーなスタイル、手足が長い。
十数回のピルエット(つま先での回転)を披露する。
決闘で相手を倒す場面では、ダンサーの険しい表情。台詞の無いバレエでは、表情を大きく表現する。またパントマイム(身ぶり手振り)で感情を表す。

パ・ド・ドウ(男女一人ずつの踊り)では、全身に情感が溢れ出ている。

幕が降り、オーケストラは間奏曲を奏でて、舞台は転じる。

ーそうしてストーリーは更に展開してゆくー


次に、フィギュアスケートについて述べる。

ジャンプの回転技=6種類のジャンプがあり、トーループ・サルコウ・ループ・フィリップ・ルッツ・アクセルの順に、難易度が上がる。
更にジャンプを2つあるいは3つを組み合わせた、様々な種類と難易度のコンビネーションジャンプがある。

ジャンプの他に、スピン・ステップなど、数々の満たすべきエレメンツ(要素)がある。
スピン・ステップも、大切な得点源となる。
 
一人の演技中に、こなすべきエレメンツの多い中で、音楽の曲の世界観を表現できる箇所は、唯一ステップの部分であろう。
ステップは、全体の約1/3の時間内におさめる。
選手の個性・その演技の世界観を最大限に引き出せるのが、ステップの部分である。
腕、脚の動きを大きく使って、全身で表現される。

他に曲と個性を表現する手段として、衣装・装身具が挙がる。
動きを妨げないために、衣装の裾はバレエより短い。

「ショートプログラム」2分50秒と、「フリー」4分間の範囲で、氷上で表現されるのがフィギュアスケートの世界である。
ショートプログラムとフリーの得点を合計して、順位が決まる。


結局、甲乙は付けられなかった。
バレエはバレエで素晴らしい舞台芸術である。
フィギュアスケートはフィギュアスケートで、素晴らしいスポーツである。
いずれも素晴らしい舞台芸術であり、スポーツなのだ。

「羽生結弦」も「ロシアバレエ」も、甲乙は付けられず、いずれ共に素晴らしい。

 

マリインスキー劇場のメインホール