4ヶ月ぶりに家族のすむホノルルにきている。息子の留学も6年目に入った。後、半年もすればアメリカ本土の大学に進む事になるだろう。妻が「この6年間を総括してみて」というから、「よくやった。いい子だ。」とレインボーの生徒に言うのと同じフレーズで始めたが、お酒がはいっていたせいもあってか途中から涙がでてきた。レストランで泣いている中年のおっさんなど見たこともないだろう。涙がにじんだ理由は、この5年半におよぶ息子の生活を振り返ったときここまで厳しい競争に身を置かせてよかったのだろうかと考えたからだ。
 息子はこれで2回目の留学だ。アメリカ人でもあるのだから英語圏の教育を受けなくてはならない事情が我が家にはある。1回目は9歳のとき、テキサスにやった。今回は13歳のときここハワイにきた。今いる高校は知る人ぞ知る凄まじいレベルの高校で、5年前になるが中1の初日から図書館で3時間も勉強をして帰ってきたような状況だった。もちろん日本からの留学生などいない。
 浦佐の雪国病院でうまれ浦佐幼稚園、浦佐小学校しかしらない南魚沼ネイテイブの息子は「辛くない。感謝している。絶対負けない。雪を思い出してがんばる。今日も楽しかった。」と言い続けてきたが、実際の辛さ、そして孤独に耐えに耐え抜いた日々は計り知れない。「浦佐のお水を飲みたい。あの空気を吸いたい。」といいながら日本への里帰りもできない年さえ続いた。当然、肉体的にも精神的にも時としてダメージを受けた。それを考えたら涙がこぼれたわけだ。
 どういう環境にいても問題はある。プラスもあればマイナスもある。今見える双方の現実を将来のみが最終的に判定を下す事ができる。息子には将来という名の時間がある。ただ父親として、この5年半、苦しいときにそばにいないでただスカイプで「元気か。そうか がんばれよ」で済ませてきた事は辛い事実である。
 親の期待とそれに必死で応えようとする子供、親はすべてを見越して子供を導かなければいけない。とても難しい事だけれど。レインボーの生徒がぽつりと「私は監督からいわれるほどそんなに良くないのです」と言った。期待しない親はいないが期待が重荷になるようではいけないね。ごめんよ。
                                     監督