【結果+観戦記】井上尚弥 vs TJ・ドヘニー[4団体統一世界スーパーバンタム級タイトルマッチ] | ボクシング・ダイアローグ

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9月3日

有明アリーナ:東京都江東区

 

◇4団体統一世界スーパーバンタム級タイトルマッチ◇

 

王者 

井上尚弥

(31=大橋:27戦全勝24KO)

vs 

挑戦者 WBO2位/WBA6位/WBC8位/IBF7位/元IBF同級王者 

TJ(テレンス・ジョン)ドヘニー

(37=アイルランド/豪:26勝20KO4敗)

 

結果は 井上選手が 7ラウンド 0:16 TKO勝ちでWBC&WBO3度目、WBAスーパー&IBF2度目のタイトル防衛に成功。

 

[ Lemino の生ライブ配信で観戦]

 

チョコチョコと軽いジャブを突くサウスポーのドヘニーに対し、井上選手は殆ど手を出さずにジワジワとプレッシャーをかける立ち上がり。

 

重心をやや後ろに置くスタンスで左ロングを狙うドヘニー、しかしモンスターの圧力に下がらされて持ち味の思い切った踏み込みが出来ず、割り振りのポイントは少ない手数の中で効果的に当てる井上選手が取っている印象。

 

徐々にペースを上げ始めた井上選手は、出て来ないドヘニーに 5ラウンドからプレスをセーブ、ガードの上から打たせて誘い、相手が前に来れば圧し返してギアを上げ、KOへのステップを少しずつ敷設。

 

6ラウンド、流れの中で井上選手のボディブローが再三ドヘニーを強襲、辛くもカバーするアイリッシュ/オージーの挑戦者ながらそう遠からずモロに決まりそうな兆候がハッキリと見て取れ、終了間際にはモンスターがコーナーに詰めての効果的なまとめ打ち。

 

7ラウンド、開始から猛打で肉薄する井上選手に、ロープを背に必死にディフェンスするドヘニーが右グローブで背中側の腰を押さえると共に、右足を引き摺る仕草で横へ歩き戦闘モードを解除。

 

何やらのアピールを受けたレフェリーが、それが棄権の意思表示だとわかるとそのままストップを宣告、呆気ないというか拍子抜けな形で試合終了。

 

暫くスツールに座っていたドヘニーは回復することなく、セコンドに支えられてリングを降り、両側から肩を借りて退場。

 

率直に… 流石にこういう終わり方は予想外。

 

危なげなく追い詰めつつあった展開=突っ込んで出るドヘニーに井上選手の右ストレートか左フックのカウンターが炸裂→ 撃沈のフィナーレが後半に到来しそうな感じでしたが、試合後モンスターが言ったとおり、長くやっていればこういうこともある訳で…

 

とはいえ、結果的には圧倒的有利の予想(英大手ブックメーカー、ウィリアムヒルのオッズは、井上勝利 1.02倍、ドヘニー勝利 15倍だったとのこと)どおりの結末ではありました。

 

アクシデントについて、ドヘニー陣営は試合後の会見で 7ラウンドに受けた3発の被弾ではなく6ラウンドの時点で神経を痛めたのが次の回に激化した、と説明していましたが、パンチの効果・ダメージによるものなのか、ギックリ腰のようなものだったのか、そのへんはハッキリせず。

 

一晩で大幅に体重を戻すタイプ、ということで、ドヘニーは今回も11キロ増量(前日計量 55.1キロ→ 当日 66.1キロ)してリングイン、ただそうした短時間での常識外れなリバウンドがトラブルの要因となった可能性も指摘され… 何れにせよ、消化不良は否めずな感。

(因みに、井上選手は前日計量 55.3キロ→ 当日 62.7キロで 7.4キロの増量:試みとして意図的に多めに戻してみたが、ちょっと重かったかもしれない、とコメント)

 

なお、ジャッジの判定は 2人が 59-55、1人が 58-56 で井上選手のリード、1、2、5、6ラウンドは3者ともモンスターの10-9、3&4ラウンドは 2人がドヘニーのラウンドと採点。

 

圧力を弱め、ガードの上から打たせて誘い出しをしていたラウンドがドヘニーに割り振られた形ですが、実質的には井上選手のフルマークの圧勝と言って間違いない筈。

 

この勝利で、モンスターはタイトル防衛と共に世界戦通算勝利数が23勝となり、3団体統一スーパーミドル級王者 サウル “カネロ” アルバレス(メキシコ)と元4階級王者 井岡一翔(志成)選手の22勝を抜いて現役トップに。

 

[リングから遠ざかり音沙汰のない元3団体統一ミドル級王者 ゲンナディ “GGG” ゴロフキン(カザフスタン)も23勝で 1位タイ]

 

また、カネロが剥奪で IBF王座を失い、テレンス・クロフォード(米)も剥奪と返上でウェルタータイトルを手放した(今後はスーパーウェルターに転級)ことにより、モンスターは現在、世界で唯一の現役の4団体統一王者。

 

気になる次戦とその先については、試合後のリングに上がったトップランクのボブ・アラム氏が、次は年内に東京でもう 1試合し、来年はラスベガスでのビッグイベントを用意すると明言。

 

対戦相手の名前は出ませんでしたが、流れからすると次(12月)は IBFの指名挑戦者サム・グッドマン(豪)か、WBAの指名挑戦者 ムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)のどちらかが濃厚。

 

5月の井上vsルイス・ネリ(メキシコ)の際、リング上で井上選手から直々に対戦を呼び掛けられたにもかかわらず、それを回避して前哨戦を挟むことを選択したグッドマンは、しかし7月に行ったその試合で勝ちはしたものの拳を負傷(骨折とも)しており…

 

やるにしても回復&調整が間に合うのか、最近の情報がないためまだ不明瞭な状況。

 

アフマダリエフは、グッドマン戦キャンセル→ 代役にドヘニーが発表された際、井上陣営が自分の挑戦を受けないことに不満を発信したところ、アラム氏にそんな選手は知らないと一蹴されていた経緯があり…

 

変な遺恨のようなものが残ってそれが支障を来さないか、ちょっと不安も?

 

個人的には、自分からオファーを蹴ったグッドマンは指名挑戦権を取り消してもいいんじゃ?と思うのと、そもそもモンスターと好勝負できるレベルではないと感じることから、スーパーバンタム級ランカー陣で最強な気がするアフマダリエフとのマッチアップに期待。

 

スター候補として育成中のWBC1位のアラン・ピカソ(メキシコ)はまだ温室から出ず、おそらくモンスターを避けて返上するのを待つと思われるので、井上選手の指名戦の義務を含め、消去法からしても次はグッドマンが間に合わなければアフマダリエフになるのでは?と予想。

 

 

[またしても長文になってしまったため、同興行のWBO世界バンタム級タイトル戦:武居由樹vs比嘉大吾、WBAスーパーライト級挑戦者決定戦:イスマエル・バロッソvs平岡アンディ他のアンダーカードについてはこれと別に投稿します]