【結果+観戦記】アルツール・ベテルビエフvsカラム・スミス モロニー兄vsサウル・サンチェス | ボクシング・ダイアローグ

ボクシング・ダイアローグ

観戦記・展望・プレイバックなどなど・・・

 

1月13日(日本時間14日)

ビデオトロン・センター:加ケベック州ケベックシティ

 

◇WBC&IBF&WBO世界ライトヘビー級タイトルマッチ◇

 

王者

アルツール・ベテルビエフ

(38=露/加:19戦全勝全KO)

vs

挑戦者WBC1位/前WBAスーパーミドル級王者

カラム・スミス

(33=英:29勝21KO1敗)

 

昨年1月にアンソニー・ヤード(英)を8ラウンドTKOで退けて以来、1年ぶりのリングとなるベテルビエフはIBF8度目、WBC5度目、WBO2度目のタイトル防衛戦。

 

22年8月のマチュー・ブーデアリーク(仏)戦に4ラウンドKO勝ちしてWBCの指名挑戦権を手に入れたスミスも、それ以来となる1年5ヶ月ぶりの実戦。

 

ベテルビエフが歯科治療後に顎骨に感染症を発症、昨年8月のスケジュールが今日に延期となっていた一戦…

 

結果は べテルビエフが 7ラウンド 2:00 TKO勝ち。

 

[動画サイトで試合映像を見つけて観戦]

 

試合開始からベテルビエフがスミスをロープに詰めて先手を取り、以後も主導権をそのままキープ。

 

スミスは時おり打ち返すものの、勝っている体格差を活かせない&後手に回りがちで、毎回ベテルビエフがポイントを取ったと映る流れで試合進行。

 

4ラウンド、プレスアップしたベテルビエフの攻めにロープを背負ったスミスは防戦一方になり最初のピンチ、ここは脱して持ち直したながら、圧し込まれると効果的に対応できず引いてしまうため、劣勢の状況を変えられず。

 

迎えた7ラウンド、もうじき1分の所でスミスのジャブの打ち終わりにべテルビエフが右フックを合わせると長身の英国人がガクリ、剛腕の王者はここぞの連打で追撃。

 

挑戦者をロープに詰めて乱打し、左フックから右をフォロウすると、スミスが腰を落としてダウン。

 

立ち上がって続行されるもダメージは深く、べテルビエフは間髪置かずに再びロープに追い込んで猛撃、左から右の返しが決まるとスミスが横向きに尻餅を着き、2度目のダウン。

 

しゃがんだ姿勢でスミスがカウントを聞く間に、スミスのセコンドとスーパーパイザー?らしき人物がリングエプロンから手を振ってストップを要請、しかしレフェリーは気づかずにカウントを続行。

 

その直後にセコンドがリングに入って再アピール、ここでTKOとなって試合終了。

 

スミスの出来如何ではベテルビエフ苦戦の可能性も考えられたものの、終わってみれば王者の快勝。

 

体格差など全くないかのようにジャブを当て、いつも通り強引に行くこともなくマイペースで追い詰めて仕留め、全く危な気なく勝利。

 

こうなると、もう相手が強豪ランカー程度では注目戦になり得ず、期待されるのは同級の残る1冠を持つWBAスーパー王者 ディミトリー・ビボル(キルギス/露)との4団体統一戦のみ。

 

実際のところ、両陣営は既に対戦同意&契約書を交わしているらしく、ベテルビエフがピークを維持しているうちに(来週の21日で39歳)頂上対決が実現する運びとなったのはファンにとって最高の流れ。

 

順調にいけば夏ころ?の開催になりそうな感じですが、正式発表が待ち遠しいビッグマッチです。

 

敗れたスミスの方は、久しぶりに観たせいかもしれませんが持ち味のシャープなキレがイマイチ&足運びが何かバタついていたような印象で、とにかく主武器となる筈のスピードがもうひとつだった気が。

 

スーパーミドル級王者時代、カネロ・アルバレス(メキシコ)に大差判定負けした時は、試合中の左肩の故障発生で実力を発揮できなかったことが最大の敗因と伝えられていましたが、今回は見せ場もない完敗。

 

一線に留まる力はまだ充分ある筈だけに、ここからもう一度浮上して行けるのか否か、少なくとも見切りをつけるのはまだ早いと思います。

 

 

◇WBO世界バンタム級タイトルマッチ◇

 

王者 

ジェイソン・モロニー

(32=豪:26勝19KO2敗)

vs

挑戦者7位 

サウル・サンチェス

(26=米:20勝12KO2敗)

 

昨年5月、ビンセント・アストロラビオ(比)との王座決定戦に判定勝ちし、井上尚弥(大橋)選手が返上のWBOタイトルを獲得したモロニーはこれが初防衛戦。

 

サンチェスは昨年10月、TREASURE BOXING PROMOTIONの国内初興行(メインはジョンリェル・カシメロvs小國以載)のアンダーでRV・デニエガ(比)に判定勝ち、それ以来のリングとなる今回が初の世界挑戦。

 

1期目王者時代のエマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)&井上選手に阻まれたものの、3度目の正直で王座に就いたモロニーと、知名度はまだイマイチながらロサンゼルスで中谷潤人(M.T)選手のスパーリング・パートナーを務める上り坂のサンチェスの一戦…

 

結果は モロニーが 2-0(116-112×2、114-114)の判定勝ちでタイトル初防衛。

 

ジリッとにじり寄るサンチェスに対し、モロニーが足を使いながら様子を窺う立ち上がりとなった試合は、牽制し合う展開で序盤を終えた後、4ラウンドからモロニーが前に出始めるとサンチェスも応戦し、徐々にヒートアップ。

 

4ラウンドの打ち合いで右の眉尻をカットしたモロニーは続く5、6ラウンド、自分から体を押し付けて接近戦を挑み、引かないサンチェスも右狙いを主体に打ち合って、一進一退のパンチの応酬。

 

主導権争いプラス傷を意識してか、モロニーは7ラウンドは足を使う戦術に戻したと思えば9ラウンドにはまた自分から距離を詰めてインファイトを挑むなどしてメリハリ、対するサンチェスはやや単調ながらも負けずに対抗し、試合は持久戦&消耗戦の様相に。

 

共に軽いヒットをかなり被弾する中、中盤から後半にかけてやや優位に映ったサンチェスながら、しかしこの9ラウンドから手数が減り、少しずつモロニーが盛り返し。

 

終盤は打ちつ打たれつが連続し、ラストラウンドも両者引かずにパンチを交換してそのまま試合終了ゴング。

 

3ジャッジのうち、2人はコンパクトなパンチとペース配分で巧く戦ったモロニーを支持、1人はサンチェスをもう少し評価してドロー、という判定になりましたが、概ねどちらも妥当の範疇内に感じられる採点。

 

率直に経験値が結果となって出た、と自分は思いましたけど、とにかくモロニーが際どく競り勝ってタイトルを防衛。

 

堅実にまとまったスタイルは、守る側には強みになる一面があるにしても、モンスターの後釜としては正直もの足りなさは否めず、その意味ではサンチェスにかなり期待していた部分もあったんですが…

 

上体の動きが乏しく、余計なパンチをもらい過ぎてポイントロスしたのと、勝負どころの終盤にペースが落ちてしまったのが勿体なかったな、という感想です。

 

ついでながら、個人的な採点は 115-113 でモロニーでした。

 

 

セミで行われたWBAインターナショナル&WBCコンチネンタルアメリカ(米大陸)スーパーミドル級タイトルマッチ、王者 WBA&WBC1位/IBF3位/WBO5位 クリスチャン・ムビリ(28=仏:25戦全勝21KO)vs 挑戦者IBF9位 ロハン・マードック(31=豪:27勝19KO2敗)は、ムビリが6ラウンド終了TKO勝ち。

 

ムビリが終始圧倒する流れの末、マードック陣営が7ラウンド開始前のインターバル中に棄権を申し出て終了。