【結果+観戦記】スティーブン・フルトン vs 井上尚弥[2冠統一スーパーバンタム級タイトル戦] | ボクシング・ダイアローグ

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7月25日

有明アリーナ:東京・江東区

 

◇WBO&WBC世界スーパーバンタム級タイトルマッチ◇

 

王者 

スティーブン・フルトン

(29=米:21戦全勝8KO)

vs 

挑戦者WBO&WBC1位/前4団体統一バンタム級王者 

井上尚弥

(30=大橋:24戦全勝21KO)

 

昨年6月、ダニエル・ローマン(米)に3ー0判定勝ちして以来のリングとなるフルトンは、WBO3度目、WBC2度目の防衛戦。

 

井上選手は昨年12月、ポール・バトラー(英)を11ラウンドKOしてバンタム級4冠を統一した一戦以来となり、王座返上→ スーパーバンタム転級の初戦でいきなりの世界挑戦=勝てば 井岡一翔(志成=WBAスーパーフライ級王者)選手に続き、国内2人目の世界4階級制覇。

 

<25戦目での4階級制覇は、井岡選手の26戦目を更新する日本人最速記録 & 無敗で4階級制覇達成は日本人初>

 

軽量級随一の注目戦、クールボーイvsモンスターによる全勝対決…

 

結果は 井上選手が 8ラウンド 1:14 TKO勝ちで新王者。

 

[Leminoの生ライブ配信で観戦]

 

 

初回から左ガードを下げた井上選手がプレッシャーをかけ、気圧され気味のフルトンがやや引いた格好の立ち上がり。

 

身長はフルトン169センチ:井上選手165センチながら、フルトンがスタンス(足幅)を広く取っているため、一目で井上選手の方が大きく見える印象。

 

2ラウンド、フルトンがステップを使って本来のような動きを見せると、対して井上選手はウェイトののったジャブやワンツーで攻勢。

 

ジャブの刺し合いでパワー、スピードとも井上選手が上回り、更にそこから右強打、左ボディーと繋げてプレスアップするためフルトンはなかなか反撃できず、予想どおりディフェンシヴな戦いぶりに。

 

3ラウンド、下がったら圧し込まれることを察したフルトンが開始から先手をとってジャブで先制、しかしそれは長続きせず、逆に井上選手のボディショットが2度ほどヒット。

 

この回から鼻血を流し始めたフルトンは、序盤の時点でかなり苦しい状況。

 

4ラウンド、両者がジャブの交換の中に右強打を織り交ぜ緊迫感上昇、フルトンが井上選手のパワーレベルやスタイルを概ね把握し、適応して来たように映る感。

 

5ラウンド、引き続きフルトンがジャブを起点に先に前に出、井上選手は左ボディーから左右を振るって応戦。

 

この回はフルトンの右ストレートが2度ほどクリーンヒット、終盤の井上選手の反撃もブロックして凌ぎ、ジャッジによってはフルトンにつけたかも?のラウンドに。

 

6ラウンド、下がったら詰められることを悟っているフルトンは、なおも自分から先に仕掛けて出て逆プレス。

 

ジャブの突き合いから井上選手が浅いヒットを起点に圧し返し、試合は序盤戦とは変わって一進一退の攻防。

 

7ラウンド、相変わらず引かないフルトンがじわりと出てディフェンシヴを維持しつつ攻めの姿勢をキープ、右をクリーンヒットするシーンも。

 

しかし井上選手もすぐに反撃、被弾は単発に抑えて盛り返し、時おりフルトンは逃げのステップでかわす。

 

ラウンドの終盤に井上選手がフルトンをロープにつめて連打するも、終了間際にはフルトンが左フックを当て、この回は有効打数でフルトンがポイントを取った感じ。

 

8ラウンド、この展開のまま判定決着もあるか?という流れで迎えた30秒過ぎあたり、井上選手が左ボディへのジャブから繋いだ鋭い肩越しの右をモロにクリーンヒット、効いたフルトンは横を向いて前屈みに両手を着きかける死に体の状態に。

 

辛うじて倒れずに踏みとどまったながら、そこに井上選手が間髪置かぬ左フックをフォロウ、これもまともに受けたフルトンはロープ際に仰向けに倒れ、遂にダウン。

 

何とか立ち上がって続行されるも、直後に井上選手が一気の猛攻でフルトンをコーナーに詰めて乱打すると、レフェリーが割って入りTKOを宣告、ストップの直後にフルトンが崩れ落ち、熱闘終了。

 

クラス最強と目されるフルトンを沈め、井上選手がスーパーバンタム級2冠奪取&4階級制覇。

 

試合後の会見で井上選手は

 

「スーパーバンタムの階級の壁は感じず戦えた。このクラスで大柄なフルトンを倒し、スーパーバンタムでやれることを証明できた。

 

  当日計量は60. 1キロだったが、バンタムの時とそんなに変わらなかった。

  だがスピード、ウェイトの乗り、ステップワークの安定感は全く違い、プラス1.8キロは良い方向に作用した」
 

とコメント、戦術や勝負のポイントについては

 

「1~4ラウンドを取らせない気持ちでやっていた。( 3、4ラウンドでフルトンが井上選手のパワー、戦いぶりに慣れたように見えたのも)自分がペースを落としたと言うか、フルトンが出て来ねばならない展開をつくり、それに合わせて戦おうと思ってのものだった。

 

  試合前からどちらの距離で戦うか考え、身長・リーチで有利なフルトンに自分の距離・ペースを掴むトレーニングをして来た。

 

(左手を下げる)L字ガードも、フルトンのスタイルを研究する中で凄く使えると思い、これを採り入れる場合に気をつけるべきフルトンの右パンチを想定しながらトレーニングしていた。

 

  向かい合った時にペースを取らせず、L字を固めて圧をかける狙いがあった。

 

  フルトンのフットワークも、全て自分の出方次第と想定していた。

  自分がリング中央で足を止めればフルトンも止めて戦わざるをえなくなると思い、 そこでプレスをかけすぎずにジャブの刺し合いで勝つつもりだった」

と説明、試合が後半戦にもつれ判定決着ムードも漂い始めたことについては

「常に判定でもいいから勝つ。今日は勝つことが大事だったので判定でも、という思いは頭にあったものの、どこかで倒したい気持ちがあった。

 

  少しフルトンのペースが落ちてきたところにちょっとプレスをかけようとした矢先、練習を重ねてこれは必ず当たるだろうと思っていたパンチが決まった。

 

  突破口としての左のジャブを散らしながら前半は単発で持って行き、フルトンが落ちてきて距離感に慣れたところで右ストレートを繋ぐ、というパターンを考えながら組み立て、一瞬の隙を突いて(ダウンを奪ったパンチを)当てた」

 

と、練り上げた会心の一撃だったことを明らかに。

 

次戦については、インタビュー中にリングに上がって来たWBA&IBF同級王者 マーロン・タパレス(比)の対戦要請に、年内にやろうと応じて握手。

 

[既にWBAは、この日の勝者とタパレスが統一戦を戦うことを承認済み、交渉が進行すれば残るIBFも認可する筈:大橋会長も試合後の会見で、次は年内に日本でタパレス戦の開催に向けて動くことを明言]


一方、初黒星で王座陥落となったフルトンは

 

「井上は偉大なファイター。素晴らしい、強い選手。今日は彼が勝つべき日だったのかもしれない。だからこそ勝利を挙げたのだろう。

 

   井上がここまで過ごしてきた時間が、より良かったのかもしれない。

 

  残念ながら負けたが、悪い気分にはなっていない。自分が相手のテリトリーに来て試合をし、そこで勝っても負けても心の中でチャンピオンで居続けると思っているから。

 

  井上を征服して勝利することができなかったことはガッカリしている。

  だが、たくさんの人がいる所で頭を抱える姿を見せることはない」

 

と語り、ダウンの伏線となった井上選手のボディへの左ジャブ、そして井上選手に対して驚いた点を聞かれると

 

「あのボディブローは見えなかった。パワーというより、タイミングだったと思う。

 

  井上がどういう動きをするか、前もって考えて来なかった訳ではない。

  もちろん彼は強かったが、でもサプライズというほどではなかった」

 

と、想定の範疇内だったとのニュアンスで返答。

 

下がらせずに出て来るように仕向けた、という井上選手の戦術効果が全てだったかどうかはわからないにしろ、軽くても当てて相手が来たら動いてホールドして誤魔化す、というスタイルの筈のフルトンが、この試合では逃げ前提のステップやクリンチは僅かだった筈で…

 

敗れはしたものの、井上選手を相手に倒される直前まで巧みなブロックやボディワークでまともには当てさせず、実力の高さは証明したと思います。

 

で、井上選手の次戦はもうタパロスが既定路線ですが… 

 

これは正直言って両者の差が大き過ぎ、井上選手の前半KO勝ちでほぼ間違いなしなイメージだけに、個人的にはタパロスに際どい判定で王座を追われたムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)などとのマッチアップを期待したい気持ち。

 

大橋会長は、年内にタパロスを下して4団体を統一したあと、来年は因縁のジョンリェル・カシメロ(比)やルイス・ネリ(メキシコ)らとの防衛戦を想定しているそうですが、カード的にはタパロスよりそっちの方がハッキリ面白い、と多くのファンや関係者が思っているんじゃないでしょうか?

 

<最後に、ダラダラ長文の投稿になってしまったことをお詫びします…>