そんな状態のまま




ほぼひと月経とうとしていた頃




夫が出勤したあとダイニングへ行くと




椅子の上に置き去りにされた




夫の仕事用カバンがあった。




なぜか、妙にそのカバンが気になる。






このカバンを開けろ!と




言わんばっかりに置いてあるような・・・






どうしても気になって




カバンを開けた。




ポケットに折りたたんだ一枚の白い紙が入っていた。




カバンには他に何も入ってなかったような。






それは




「離婚届」だった。




それも、夫の欄に全部記入されてあり




印鑑までついてあった。






「これが答えだ」




私も腹が決まった。






夫に対しての気持ちは完全に冷めていたけど




やはり、子供にとっては父親で




夫婦の問題で子供たちの人生を変えてしまっていいのか




父親をなくさせてしまっていいのか




それが故、悶々としていた。






次第に夫の給料で生活していることにも




嫌悪感を覚えてきていた。




夫は、こんな状態になっても




どうしたのか、何が原因なのか、話し合おうともしなかった。




私は夫のそんな態度を




もうそういう努力をしようという気すらないのだなと




解釈した。




それが、なおさら大きく気持ちが離れていく一因となった。




そしてこの一ヶ月、私も夫に対して




私から夫にわかってもらおうとかいう努力もしなかった。




今までずっと私ばかりが我慢して




夫に合わしてきたのだから




もうたいがいにして、




そんな気持ちでいっぱいだったように思う。




そんな夫に




いまさら何を言ってもムダだし




わからないだろうとも思っていた。








その「離婚届」をながめながら




私にはこの用紙を取りにいく勇気がなかったのに




この人はそれができたんだなあ




と、人ごとのようにおもっていた。






その用紙をみて




やっとこの悩む苦しみから解放されるんだとも




思った。






あとは私が記入して印鑑を押せば終わり。






私は書いた。




もう終わりにしたかった。




印鑑をついて




元通りに折りたたみ




カバンのポケットに戻しておいた。