「7年目のナントカ」って言うけど




結婚して7年目、やはり倦怠期になる頃なのか。




そうじゃなくても




なんとなく夫に対して冷めた気持ちがどこかにあったし




自分の言いたいことが、言いたいときに言えないような関係で




だからといってそれを修復できるとも思ってなかった。




自分が我慢できるとおもってた。






そんなときは、やはり夫以外の男性に心が惹かれてしまうのか。




そこに集まる人達のなかに彼はいた。




彼は大学生で、もちろん私より年下。




私の子供が、顔見知りだった彼のところへ近づくと




彼は子供のずり下がったズボンを優しく引き上げてはかせなおした。




そのしぐさを後ろから見ていた私は




それだけで彼に好感を持ってしまった。






私の家族は彼を知っていたし




彼も家に来たことがあったし




彼は子供好きのようで、子供をよく抱っこしてくれた。




彼のような人が子供の父親だったらいいのに、




なんて思ったりもして。




でも、それはまだ妄想の世界だった。






現実は、今までの日常が続いていた。




何かにつけて、いろいろと細かい嫌な出来事は




たくさんあって、積み重なっていった。






そんなある日、




家族で出かける用事があり、出先では私は別の用事があるので




子供は夫が面倒をみる段取りだった。




急いで支度をしているのに




夫はいつまでも起きてこない。




しびれを切らして起しにいって




やっと起きてもグズグズしている。




約束の時間は迫ってくるし




たまらずに夫に文句を言ってしまった。




なんて言っただろうか?




「行くのだったら早くしてよ。」




とか言ったとおもうけど。




案の定、




まず、食べかけのトーストの耳が投げつけられた。




そして、テレビのリモコンが飛んできた。




その次に、私の大切にしていた母との思い出がある




そろばんが投げつけられた。




そのそろばんは小学3年のときに買ってもらって大事にしていた。




普段から仕事や家計簿をつけるときに愛用していて




電卓もあったけど、私はこのそろばんを使いたかった。




そのそろばんが真っ二つに折れた。




そのとき、私の心の中の何かが




プチン!と、確かに切れた音がした。






大切なそろばん。




裏には私の名前が彫ってある。




このそろばんを買ってもらったときの母とのやりとりを




なぜかよく覚えていて




母が亡くなって間もなかった私にとって




あのそろばんは母の形見のようだった。




とても悲しくて、




夫にますます嫌悪感を覚えた。






その事があって




私は夫と話すことを止めた。




話す気がなくなったというか。