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走るひとの日々雑感

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年末に読了した阿部和重の「シンセミア」。

現代日本小説で面白いと思える作品に出会うのは難しい。ミステリー、法律ものなどそれなりに満足できるものもあるが、ワンイシューものとは違い総合的に現代日本人の悲喜こもごもを描写する文学作品は独特の魅力があるのだ。

阿部和重は「アメリカの夜」「無常の世界」などで好印象を抱いていたのである程度の期待を持って読み始めた。
読書時間をしっかり堪能したという意味では満足。面白い。

思い切って山形弁丸出しの会話を随所に挿入(井上ひさしのいくつかの作品を思い出した)。矮小な登場人物が繰り広げるしょうもない日常。誠実で正義感溢れるステレオタイプのヒーローは皆無。敢えて採用した古風でブンガク的な文体が卑小な不良たちの行動と妙にマッチしている。

作品は明確な起承転結がない。それなりに大団円はあるものの、正義は勝つ的なカタルシスを望む向きには駄作とさえ映るだろう。

理性より刹那的な欲望を優先させてしまう人物たちの群像劇だ。
都市部の人間が抱く「田舎の人間関係はドロドロしてる」という曖昧なイメージを最大限利用した作り。重度のロリコンやコカインに溺れるボンボン後継、恫喝と脅迫で利権を維持する土建屋。その行動はパロディの域にすら達している。

底流に流れるのは、しかし、というかやはり歴史だ。戦後のどさくさで進駐軍とガッチリ手を握った地元ボス達の作った利権構造が未だに力を保持している田舎町。だが大きな状況変化に面して旧態はいずれ崩れ去るだろう。その過渡期を描いたのかもしれない。

3部作らしいのでとりあえず残り2作を読んでみようかとは思う。

※大西巨人の「神聖喜劇」から引用した文が一瞬登場するね^^