ゴミ山の天辺で、久しぶりに歌を歌って、自分の手を見てた。


ちっちゃくて、無力で、何もつかめないのに、つかもうとしてる

そんな手。


いつになったら、大事にしたいものをきちんと大事に出来るんだろう。

そもそもきちんとって何だってぐるぐると考えてたら、誰かが走って

くる足音が聞こえた。


顔は見えなくても、絶対安寿だって思った。


だから、名前を呼んで走ったら、名前を呼んでくれて。

手を振ってくれた。


安寿がいるのも、名前を呼んでくれたのも嬉しくて。

ぶつかるみたいに抱きしめる。

ほおずりされたら、相変わらずぶしょうひげがちくちくしてて、

くすぐったいようなかゆいような感触だったけど、それすら嬉しくて。


やっと目の前に安寿がいるんだって実感できた。


ずっとさがしてたことと、どこに行ってたのかをきいたら、

安寿はごめんねってあやまってから、これが必要で、お金かせいで

つくってきたのってバッグから出した紙を見せてくれた。


なんだろうって思って見たら、戸籍のコピー。


戸籍って、買えるんだね…。


苗字もあって、慣れてないから、何だか不思議な感じ。

今までなかったから、これでアパートかりられるようになったよって

教えてくれた。


アパート、遊びにいきたいって言ったら、きたないよー?へいきー?

って笑ってたけど、安寿のお家に遊びにいけるなら、全然平気!

街ががれきになったのも経験してるし、回帰の街にたどり着く前に

野宿生活長かったし。


何の問題もないね。うん。


でも、きれいになってから遊びに来て欲しいから、また後でって

ことになった。

いつになるかは分からないけど、遊びに行けたらいいな。


安寿のおうちの住所貰ったし、わたしの連絡先も渡せてよかった。

安寿は携帯持ってないから、連絡を取るとしたら、街の伝言板に

なりそうだけど、それでもいいんだ。

連絡取れるってだけで嬉しい。


ひまわりの種を植えて、芽が出てきたことも伝えたら、すごく

喜んでくれた。嬉しいな。

花を咲いたら、一緒に見るって約束できたから、お世話を今以上に

張り切ってお水上げにいったりしそう。


生でひまわりの種食べると、中から虫さんこんにちは、する時が

あるから、気をつけたほうがいいんだって。

…やっぱり火を通す方が安全かな。

チョコかけたのも美味しいって教えて貰ったから、今度試して

みよう。楽しみだなぁ…。


隣町にまたねって帰っていった安寿を見送って、わたしはがれきの

街のざこねべやで寝たよ。

久しぶりにゆっくり眠れた。えへへ。


安寿は、ちゃんと約束守ってくれる。

どこかに行っても、ちゃんと戻ってくるから、って。約束。


戻ってきてくれてありがとうって言ったら、約束したでしょって

言ってくれた。


だから、わたしも約束守るんだ。



絶対帰ってきてくれるから、帰ってくるのを探しながら待つよ。


いってらっしゃい。